36 王立学校祭 その3_02
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「殿下、そろそろ開始時刻のため、お席に着いて頂けますか?」
「おぉっ、もうそんな時間か。では、ハルコン、ミラ。後でまたヨロシクな!」
「「はいっ!」」
キャスパー第一王子殿下は、サークルのメンバーに連れられて、席に向かわれた。
すると、傍にいたマルコム兄が、ハルコンにそっと耳打ちした。
「ボクとケイザンは、新たにサークルの後援者となったキャスパー第一王子の派閥に入った。オマエとミラ嬢はシルファー殿下だったな!」
「……」
王立学校において、王族は民事不介入とのことだが、一度外に出ると、こうした派閥の問題が自ずと生じてくる。
「仕える派閥は異なるが、まぁ、……お互い上手く立ち回ろうな!」
「……、ワカりました」
こくりと頷き合うと、マルコム兄はキャスパー殿下の後に付いていった。
その後ろ姿を見送っていると、今度はシルファー先輩が「ハ~ルコンッ!」といって耳元にそっと声をかけてきた。
「!?」
不意打ちされ、思わずギョッとしたところ、シルファー先輩はニシシと白い歯を見せて、悪戯っぽく笑っていらっしゃる。
「それじゃぁ、ハルコン。宿題ヨロシクねっ!」
「えぇ、……了解です」
そうだった。ホンと、この方は人使いがとても荒いのだった。
とりあえず、先輩との約束どおり、部屋(ハルコンの居室のこと)に戻ったらジグソーパズルを急いで仕上げよう。
もう既に何点か清書した図柄を台紙に張り付けてあるから、仕上がりまで、後は切込みを入れてピースを作りさえすれば完成だな。
ふと、会場である第一グラウンドに目を向けた。
すると、先ほどまで多くの参加希望者達で、臨時の更衣ルーム前はごった返していたのだが、……。
でも、もう皆さん軽装服に着替え終えていて、サークルメンバー達に誘導され、整然と会場の隅々まで適切に並んで待機していた。
「ハルコン、私達も早く着替えないと!」
「だね、ミラ。シルファー先輩とステラ殿下のこと、お願いね!」
「うん、了解!」
ミラはそう言って、両殿下を女子用の臨時の更衣ルームまで走ってお連れした。
さて、……と。私達も急がないとね。
ハルコンはケイザン兄と共に、男子用の更衣ルームに走って移動した。
そこで着替えながら聞いた話では、昨晩のウチに、ステラ殿下とキャスパー殿下は、王宮で急遽開かれた晩餐の席にてお会いしていたらしい。
その席には、ケイザン兄達やイメルダらも、東方3領出身ということで呼ばれていたそうだ。
すると、ケイザン兄が耳打ちしてくるのだが、……。
「ハルコン、あのな、言いにくいんだけどさ、……キャスパー殿下は、どうやらステラ殿下のことを狙ってお出でだぞ!」
「なるほど、……そういうことでしたか!」
キャスパー殿下の帰国を知らされていなかったのは、どうやら私とミラだけのようだと、ハルコンは思った。




