36 王立学校祭 その3_01
ハルコンとミラが駆け出すと、続けてステラ殿下まで一緒に駆け出そうとされた。
「「殿下は、後で合流なさって下さい!」」
「はいっ」
まさか、ステラ殿下を走らせるワケにはいかない。
殿下は隣国のVIP、しかも皇女殿下だ。
外交上、両国は対等な関係にあるワケだし、殿下の行いひとつでコリンドが軽んじられるのは避けたい、とハルコンは思っていた。
だから、ハルコンとミラは口を揃えて殿下に「待った!」をかけると、殿下をサリナ姉に預け、自分達2人だけで笑顔で手を振っておられる第一王子の許に駆け寄った。
なにしろ、我々は彼の父君である国王陛下から、直接爵位を賜った身分だからね。
これくらい、貴族として当然だよ!
「殿下っ、お初にお目にかかります。私はハルコン・セイントーク。カイルズ・セイントークの3男になります。こちらは、……」
「私はミラ・シルウィット。ローレル・シルウィットの長女となります。お初にお目にかかり、光栄に存じ上げます」
ミラも、今では子供ながらも立派な騎士だ。
爵位を賜ったものの、大人達の騎士の行う合同訓練には、まだ若年ゆえに参加させて貰ってはいないのだけどね。
まぁ、それも時間の問題だろう。
「ふむ。キミ達がハルコンとミラか。昨晩私も久しぶりに帰国してね。周辺各国でも、キミ達の噂を聞くことが出来たよ!」
そう仰って、穏やかな笑顔を見せるキャスパー第一王子。
「そうでございましたか」
「あぁっ。私も、一度キミ達とは会って話がしたかった。今回は、こうして演武と体術の大会に、飛び入りで参加させて貰うつもりだ。ヨロシクな、ハルコン、ミラ!」
キャスパー第一王子殿下は、そう仰って右手を差し出してきた。
ハルコンとミラはサッと近寄ると、お手を取った。
すると長身の殿下は、しなやかな身のこなしで、小柄なハルコンに合わせ身を屈めると、耳元でこう仰った。
「ハルコン、キミも隅に置けないな! 久しぶりに帰国したら、父上だけでなく、母上もシルファーも、皆ハルコン、ハルコンの一色だ。あの用心深い3人の心を掴んだキミに、私はとても興味が湧いたよ!」
「は、……はぁ」
「それに、私も今や王族としてだけではなく、ファイルド国一の外交商人だからね。『ハルコンB』のおかげで、他国ととても上手く渡り合えるようになった。キミは、素晴らしいな!」
「い、いえ。恐縮です」
「ふふっ、今後ともヨロシクな! ハルコン、ミラ!」
長身のキャスパー殿下はそう仰って、ハルコンとミラの肩をポンポンと気さくにお叩きになった。




