35 王立学校祭 その2_11
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「なら、私も参加します。ハルコンばっかし負担の多いこと、やらせてらんないですから!」
ミラは、シルファー先輩に向けて、しっかりとした口調でこう答えた。
「ですわね。今回は私も王族は民事不介入などと言ってないで、参加させて頂きますわ!」
すると、先輩もまたミラに挑まれたことに対し、不敵に微笑み返した。
さて、……。私はこの場合どうしたらいいのだろう?
私のせいで、普段仲のいい2人が争うのは、とても見ていられないのだが、……。
そう思ったら、ハルコンの胸が少しだけキリリと痛むのを感じた。
「あぁ、ハルコン。そこんとこ心配しなくて構わないぞ!」
「えっ!?」
「今回、我々の大会は、武術を競うのではなく、むしろ体術、身体の鍛錬を扱うんだ!」
「えっ!? そうなのですか?」
「ふふっ、まぁな。今回は暴れ足りなくて、いささかがっかりしたか?」
「い、いぇ、……とんでもないです!」
ケイザン兄の言葉に、こちらは勢い込んでいた分、なおさら拍子抜けしてしまった。
「もしかして、イメルダのサークルと合同で、体操大会でも開くおつもりですか?」
ミラが、すかさず話の間に入ってきた。
「そうだ。ミラ嬢には、ぜひともハルコンズ・ブートキャンプの指導教官を行って貰いたいものだな!」
「えっ、えぇ、……それでしたら」
少しだけホッとしたのか、ミラの目つきから鋭さが次第に消えてゆく。
「一般客の希望者にも参加して貰って、2時間ほど表の第一グラウンドを貸し切っているからさ、……なるべくなら大勢で、賑やかに楽しくやりたいなぁと思っているんだ!」
とても快活な調子で語るケイザン兄に、ミラもホッとしたのか、漸く穏やかないつもの笑みを浮かべ始めた。
「いいですねっ! やりましょう兄様っ!」
「おっ、おうっハルコン! なるべく大勢の人を参加させて、大いに盛り上げるからなっ!」
「はいっ!」
ハルコンは、将来的にこのファイルド国を健康立国させたいと常々考えていた。
その考えに沿った兄達のイベントには、大いに協力させて頂こうと思った。
横で食事を摂りながら、口を挟むことなく様子見のサリナ姉とステラ殿下。
彼女達は、どちらかというと文系タイプだ。
「ふぅ~ん。体操くらいなら、私もやってみたいかも!」
サリナ姉の言葉に、ステラ殿下も目を輝かせて頷かれていた。
「それにしても、ケイザン兄様。どうして体術、身体の鍛錬なのでしょうか?」
ハルコンは白パンを手に取りながら、率直に訊ねてみた。
「それは、我が国が『善隣外交』を遂行したことで、周辺諸国との緊張関係が次第に緩和されてきているからなぁ」
ケイザン兄の言葉に、シルファー先輩とステラ殿下が、誇らしそうな顔を一瞬された。
「なぁ、ハルコン。これからの時代、武装国家はナリを潜めるだろうな。国民の健康と福祉を第一に掲げる国家は、今後武術ではなく、体術を重用していくだろう。これは、ハルコンの受け売りかな?」
ニッコリと笑うケイザンに、両殿下もサリナ姉もミラもつられてニッコリ。
ハルコンは、「えぇ、……まぁ、そうですよね」といって、ひとつだけ頷いた。
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