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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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230/446

30 火薬_02

   *         *


「父上、……この『火薬』の原料は塩硝、すなわち硝石が鍵を握っています。そして、この硝石も土から採取することが可能です!」


「な、何と!? エリクサーだけでなく、この『火薬』だったか、……もまた土が関係しているというのか?」


「はい、そうです父上!」


 父カイルズの言葉に、ハルコンはきっぱりと言い切った。


 ハルコンの薬学は、どれも「土」が大いに関係している。

 エリクサーは、夾竹桃もしくは「回生の木」の根元の土の中に存在する、放線菌の出す酵素、アイウィルビンが由来。


 そして、今回の「火薬」の原料である硝石は、大きな建物の床下の砂土から採取することができると、ハルコンはこの席の者に伝えた。


「床下の砂土には、窒素とアンモニアを分解して硝酸カルシウムを生み出す、バクテリアという微生物がいるんです。そして、その砂土を採取して水に一晩漬けると、硝酸カルシウムの水溶液を作ることができます。更にそれを煮詰めて濃度を上げ、灰を加えてよくかき混ぜると、化学反応を起こして塩硝が出来上がるんです!」


 ハルコンがニッコリと笑うと、この席の者全てもつられてニコリと笑った。


 ちなみに、その製法を古土法と呼び、16世紀末の日本で盛んに行われていたとされている。もちろん、ハルコンがそのことを皆に伝えるつもりは全くない。


「ねぇハルコン。その塩硝というのが、『火薬』なのかしら?」


 シルファー先輩が率直に訊ねてきた。


「いいえ、塩硝だけでは『火薬』にはなりません。他に炭と硫黄も用いますね」


「なるほど。なら、それらを粉末にしてブレンドすれば、『火薬』になるのかしら? もしかして、比率とか、分量とか、……もう把握しているの、ハルコン?」


 シルファー先輩が、妙に具体的に質問してくるなぁとハルコンは思った。


 この場の席で、ハルコンを除いて一番頭の回転が速いのは、シルファー先輩だ。


 先程、「火薬」の用途は、「娯楽から戦争まで」とお伝えした。


 すると、シルファー先輩は直ぐにその有用性に気付き、王国に取り入れようとお考えになられたのだろう。

 さすがはシルファー先輩だと、ハルコンは素直に感心した。


「はい。比率については、後ほどお伝えしたいと思います」


「嬉しいっ! ありがとうねっ、ハルコン。私、『火薬』を使った娯楽にとても興味があるんですっ!」


 そう仰って、シルファー先輩は満面の笑みを浮かべられた。


「陛下、この『火薬』が用いられるようになれば、これまでの戦争が覆ることになりかねませんぞ!」


 宰相が王ラスキンにそう告げると、父カイルズとローレル卿も渋い顔をした。


「ハルコンには、先ずは男爵の位を授けるつもりでおったが、……どうやら、それではとても足りぬようだな!」


 王ラスキンは肩を落とされて、そう呟きなされた。

 残りの大人達も皆、顎に手をやって、深いため息を吐くばかりだった。

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