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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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30 火薬_01

「ハルコンよ、『火薬』とは娯楽から戦争まで、用途は様々と申したが、……詳しく説明して貰えるか?」


 陛下はしばし沈黙した後、いくぶん重い調子で訊ねられた。


 どうやら、陛下は「火薬」の重要性について、その地位と重責から齎されるある種の感性で、直感的にお気づきになられたようだとハルコンは察した。


「はい、陛下。私は確かに『火薬』とは娯楽から戦争まで、用途は様々と申しました。それはすなわち『火薬』の特性が火を操ることに特化したものだからです」


 その言葉に、室内の者達の背筋に冷たい緊張が走った。

 ハルコンの言葉には、これまでの多大な実績故の説得力がある。


 ハルコンがこの席においてわざわざ自分達に「火薬」を示すのには、必ず「理由」がある。

 だから、「火薬」の特質について、しかとこの目で確認しておく必要があると思ったのだろう。


 この席の者達から、先程までの楽観的なムードは消えた。皆緊張した面持ちで、こちらをじっと見つめてきた。


「では、先ずその特性をお見せいたしましょう!」


 ハルコンはそう言って、鞄から小さな平たい鉄製のトレーを数個取り出すと、おもむろに試験管の蓋を開けた。


 この席の者達が注視する中、ハルコンは淡々とベテランの科学者、錬金学者のような手つきで、始めのトレーにその薬剤を少量のみ配置した。


「『火薬』とは、その名のとおり、『火』の薬です。その配分量によって、火力が様々に変化します」


 そう話しながら、ハルコンは手を止めることなく、様々な分量でそれぞれのトレーに用意すると、懐からマッチを取り出した。


「ハルコン、これからこの『火薬』に火を着けるのかしら?」


「はい、シルファー先輩。一瞬で燃焼してしまいますから、よぉ~くご覧になって下さいね!」


「はい」


 シルファー先輩は、こくりと頷くと、緊張半分、笑顔半分の表情を浮かべられた。


 ここでハルコンは、この席の者全ての表情をちらりと窺った。

 皆、これから始まる実験に、真剣な表情だ。


「それでは!」


 そう言って、ハルコンは先ず一番少量の「火薬」の載ったトレーに、マッチの火を翳した。

 すると、音もなく一瞬ポッと発火すると、たちどころにその火は消えた。


「次は、2倍の分量、……3倍の分量、……4倍の分量、……」


 そう言って、ハルコンは次々と6倍の分量まで着火をすると、その火力が乗数的に増してゆく。

 それらの様子を目撃した席の者は皆、驚愕の表情だ。


 シルファー先輩とミラをちらりと見ると、その表情が固まり、わなわなと肩を震わせている。

 意外と肝の太い2人だと思ったけど、「火」には抗しえなかったか、とハルコンは少々刺激が強かったかなぁと思った。


「ハルコン、これは何だっ!? 一体、どうなるとこんな現象が起こるのだ!?」


 父カイルズが、珍しく慌てた様子でこちらの両肩を掴んできた。

 これは、もう少し詳しい説明が必要かなぁと、ハルコンは思った。

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