28 思えば、遠くにまできたもんだね_01
ハルコンは、朝食を摂りに食堂へ向かった。
今回、シルファー先輩の早朝からの訪問など、イレギュラーなことがいくつも重なっていた。
そのため、いつもよりも遅い時間に、食堂のある中央ホールの建物に入っていかざるを得なかったのだ。
すると、場内はうんざりするくらい多くの学生達で賑わっていた。
特に人気の定食の配膳コーナーの前には、より多くの学生達が列を作って並んでいた。
「いやぁ、参ったなぁ」
思わず、ハルコンは独り言を呟いた。
いつものハルコンなら、学生達の多い時間を避けて、ピーク時間から一時間程早く、食堂に入るのだけど。
でも、今日は仕方がない。
まぁ、……こんな日もあるかと思いつつ、比較的すいている列の後に並ぶことにした。
「うげっ!? ハッ、ハルコン!?」
「うぅん? 一体誰だろ、こんな言い方するヤツって?」と思いながら振り返ると、何とそこにはノーマン・ロスシルドがいた。
ハルコンは、「いやぁ、よりにもよって会いたくないヤツに会っちゃったものだなぁ!」と思ったものの、……とりあえず、笑顔の一歩手前のスマイルを作って相手を見つめた。
「ノーマンも、今から食事ですか?」
ハルコンは、善良で優秀な人間と周りから思われている。
だから、周囲の目を一応意識しつつ、そのイメージを壊さないよう細心の注意を払いながら、にこやかに訊ねたのだ。
「あぁ、……まぁな」
やたら、無作法な態度と物腰。
何だよコイツ?
恩人の私に対するその態度は、それでホンとにありなのかい?
ハルコンは、鉄壁のスマイルを崩さなかったものの、内心では少しだけイラっとした。
先日、ノーマン・ロスシルドは、あらんことか我が研究室に無断で侵入し、家探しをしつつ、私が戻るのを内部でじっと待っていたのだ。
幸い、研究室内部を破壊されるようなことはなく、被害はマッチ一箱だけだったから、軽く鉄拳制裁で済ました。
ついでに、ノーマンのたび重なるミラ・シルウィットへの立場を悪用した乱暴狼藉についても、処断を行ったつもりだ。
その後、ヤツの要望を聞き、隣国コリンドまで仙薬エリクサー「タイプB」を送ることになった。
まぁ、……そのおかげで、隣国のロイヤルファミリーからの信頼を勝ち得ることができたので、ヨシとすべきところなのだろうけど。




