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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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25 帝都に赴く女エルフ_10

   *         *


「ふぃ~っ、……やっと着いたよぉ」


 何だかんだ言って、ハルコンが貴族寮に戻ってこれたのは、夜9時を過ぎた頃だった。

 寮の館内はひっそりとして薄暗く、ところどころに小さな照明が灯されていた。


『ちゃんと、お風呂にも入りなさいよ!』


 先程、サリナ姉はそう言って、ハルコンのことを気遣ってくれたのだが、……。

 もう館内は消灯時間で、共同浴場はとっくに閉まっている。


「ふぅ~っ。今日も入りそびれちゃったなぁ」


 トホホって具合にこぼすと、ハルコンは薄暗い廊下を一人で歩いていく。


 中庭の渡り廊下に出ると、月明かりが差し込んできて、思いのほか明るい。

 そして、男子寮の離れにあるハルコンの居室まで戻ってから、ドアの鍵を開けた。


 直ぐに光魔石を点けると、室内だけがまるで昼のように明るくなる。


 ハルコンは軽装服を脱ぎながら室内を隅々まで見回りすると、今回も侵入者がいないことを確認した。


 下着姿になって、洗面で手と顔を洗った後、ハルコンは冷蔵庫からキンキンに冷えた果汁入りのミルクの瓶を取り出して、テーブルのコップに注ぐ。


 ひと口ふた口飲んだ後、ハルコンはそのままベッドまで歩いていく。ナイトテーブルにコップを置くと、コロンと横になった。


「ふふっ、今日はとても実りある一日だったなぁ、……」


 思わず、考えていたことが口に出てきた。

 さて、……今頃皆さん、一体どうしているのかなぁ、……。


 さっそくハルコンは、ファイルド国内の各地にいる、思念を紐付けした複数のNPC達の様子を追っ駆けてみた。


 例えば、王宮でシルファー先輩の侍女を務めるセロンの視野を借りてみると、寝間着姿のシルファー先輩の長く美しいプラチナブロンドの髪に、ブラッシングをしているところだった。


 ハルコンの目には、2人がとても仲が良さそうに見受けられた。


 その後、あまり気乗りしないのだが、……ロスシルド領内に匿われている殺し屋のNPCの様子も見てみた。すると食事中で、細身のナイフで獣肉のブロックをぐりぐりと抉っているところだった。


 コイツ、……碌に仕事もしないのに、飯だけはちゃんと食わせて貰ってるんだなぁとハルコンは思った。


 それから、他にもピックアップしたNPC達の様子をしばらく眺め、最後に女エルフに思念を同調させてみた。


 女エルフが野営している現地は月明かりに照らされ、思ったよりも暗くないようだ。


 女エルフは、川に入って水浴びをしているところだった。一糸まとわぬ姿で、昼の移動の汗を洗い流していた。


 明朝、帝都の宮殿に赴くのだから、清潔感ってとても大事だよね。


 ハルコンは、ふと自分の手首を鼻でスンスンとしてみた。

 そう言えば、……この暑さなのに、もう3日も風呂に入ってなかったんだっけ。


 ハルコンはくるりと起き上がると、洗面でタオルを水によく浸した。

 軽く絞った後、上半身から順に、念入りに身体を拭いていった。

 ここんとこ、ずっと働き詰めだったハルコン。

 でも、もうしばらくの間、こんな生活が続いていくことになります。

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