表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

168/442

24 ハルコンの名声_07

   *         *


 ハルコンがフゥーッとため息を吐くと、ドアをノックする音がする。

 鍵をかけていなかったので、そのままドアがスゥ―ッと開いた。


「良かったのかい? ハルコン?」


「えぇ、……まぁ」


 長身の寮長が、心配そうにハルコンに訊ねてきた。


「あいにくだが、このことを黙っているワケにはいかない。王宮に報告させて貰うが、それで構わないね?」


「えぇ、もちろんです。お手数をおかけします」


 寮長は部屋を後にした。おそらく、夜分にも拘らず、これから報告にいくのだろう。

 ハルコンは何だかどっと疲れが出てきて、思わずコロンとベッドに横になる。


 でも、本番はこれからだ。


「ヨシッ!」


 気合を入れて呟くと、ハルコンはとあるNPCの女性にアクセスを開始する。

 思念を同調させ、視野を共有すると、そこはノーマンの向かっている王都のロスシルド邸の一室だった。


 今、ハルコンがアクセスしている女性は、前世の最後、転生のための「7枚のチケット」を行使する際、女神様が用意して下さった6人のNPCの最後の一人だ。


 彼女は、弓使いの女エルフ。早馬を駆り、潜伏しながら敵を暗殺する特殊工作員。

 何だか、美容院の待合室に数十冊も置いてある、稀代のスナイパーみたいな人物だね。


 実を言うと、前世の自分が暗殺されたこともあり、なるべくなら関わりたくないNPCだ。


 でも、ロスシルド領には、相変わらず殺し屋のNPCが待機している(13 異世界チートの及ぶ範囲で_04を参照のこと)し、いつ牙を剥くかワカらない。


 ならば、こちら側からも対処できる人を送って、情報を共有しようとハルコンは思った。


 当時、弓使いの女エルフは、隣国コリンドとの国境付近にて、野盗を狩る生活をしていた。


 密貿易が盛んだったこともあり、多くの商人達が襲われていた。

 女エルフは、その野盗の大物を弓で遠距離射撃して倒してみせたことで、ジョルナム・ロスシルドから直接スカウトされるに至った。


 現在、女エルフは王都のロスシルド邸にて、要人警護の主任をしている。


 すると、夜中にも拘らず、大汗をかき、肩で息をしながら当主の長男ノーマンが屋敷の詰め所に駆け込んできた。


 ビンゴ! やっぱりここにきたねっ!

 ハルコンは、女エルフに思念を同調させながら、ノーマンとのやり取りを監視する。


「どうされましたか、ノーマン様? こんな夜更けに?」


「女エルフッ! 至急頼みがあるっ! この箱の中に仙薬エリクサーが入っているっ! 早馬を乗り継いで、隣国コリンドの宮殿まで、これを届けてくれっ!」


「仙薬エリクサー、……ですか?」


 女エルフは、何も知らないふりをして訊ねた。

 だが、先程こちらから女エルフ宛に「天啓」を送っている。


『ノーマンに仙薬エリクサーを渡したから、隣国まで運んで貰えますか?』と。


「そうだ、女エルフッ! オマエの超人的な能力なら、3日の徹夜など余裕だろ!? いいかっ、急を要するんだっ! 我がロスシルド領存亡のためにも、頼むっ!!」


 そう言って、必死になって頭を下げるノーマン。


「ワカりました。至急馬を手配し、私がこれからお届けに上がります」


「すまないっ! 恩に着るっ!」


 再び深々と頭を下げるノーマン。


 その後直ぐに女エルフは部下達に手配させ、自分は皮鎧を身に纏った。

 そんな彼女に、ハルコンはすかさず念話を送った。


『すみません。急に忙しくさせてしまいましたね?』


「いえ。ハルコン様のためを思えば、私の行いなど些末なものに過ぎません」


『ありがとうございます。中年の商人(6人のNPCの一人)さんにも連絡しておきますので、継馬は彼の事業所で行って下さい!』


「何から何まで、お心遣い大変感謝いたします」


 女エルフはそう告げると、早々に用意された馬に跨り、夜闇を猛スピードで駆けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ