22 仙薬エリクサーにまつわる話_09
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「おや、……。こちらのイラストは、見覚えあるかも」
「どれどれぇ、……」
ミルコ女史の言葉に、ギルマスは直ぐにその次のイラストを受け取った。
しばらくの間、不思議そうに顎に手をやって見ていたが、「おぅ、そうだな」と言って、何かに気付いたようだ。
「ハルコン、こちらの葉の描かれたイラストは、ワシも見覚えあるぞ!」
「ホンとですかっ!?」
ハルコンは、思わず身を前に乗り出した。
「あぁ。王都の森の禁猟区内で、この植物は自生しているな」
「えぇ、そうですわ。ですが、この葉の植物はピンク色の花といった、こんな形状はしていなかったですね」
ギルマスの言葉に、ミルコ女史も相槌を打つ。
「ちなみに、その植物の名は何と言うんですか?」
ハルコンは、食い付くように質問した。
だって、もしかすると、夾竹桃の代わりになる植物かもしれないじゃない!!
それって、この世界でも地球同様に、エリクサーを開発できるってことだよねっ!!
「ハルコン君、もしかすると、キミの探している植物とは違うかもしれませんが、……私達は、この植物を『回生の木』と呼んでいます」
「あぁっ、昔はこの葉を煎じて、お茶にして飲んだりしたらしいな?」
「えぇ、確かに。ですが、しばらくの間は元気が回復するのですが、長く使うと腸が腫れてくるのでしたよね」
「そうだ。今の我々は、この木を『毒』物に指定している位だしな」
「えぇ、そうですね」
ギルマスとミルコ女史の話を聞き、ハルコンは一瞬眉根を寄せた。
おそらく、……先ず間違いない。
まさに「回生の木」こそ、この世界の夾竹桃だ。
すると、こちらの表情を汲み取ったのか、ギルマスとミルコ女史も笑顔になった。
「おぅ、ハルコン。どうやら、オマエさんのお眼鏡に適いそうか?」
「ハイッ!」
ハルコンは白い歯を見せてニコッと笑った。
ちなみに、この「お眼鏡に適う」という言葉だが、……これはハルコンがドワーフの親方と共に光学式顕微鏡を開発した際、その過程でレンズを生み出していた。
元々、近視、遠視共に多かった世界に、セイントーク領から続々と装着型のレンズ、「眼鏡」を投入したことで、視力で不自由を感じていた人々の多くが救われることになる。
まだセミオーダーのため多少値が張るのだが、ミルコ女史のように専門機関の研究員なら、少しだけ奮発すれば購入も可能なのだろう。
「よかったね、ハルコン!」
「うん、ありがとう!」
ミラが、嬉しそうにこちらの両手を握ってくる。
漸く光明が見い出せた。ミラがず~っとサポートしてくれたから、何とかここまで辿り着くことができたと、ハルコンは思った。




