地下研究所⑤ 「輝くようなライトブルー」
12歳の冬の終わり、空は快晴。
試験が終わったアヤカは、晴れやかな笑顔で、この【 ハーモニア大学附属学院 】を振り返った。
「隣の男の子も、受かるかなぁ」
そう言って、体を軽く左右に揺らしながらレンガ造りの細道を歩いていく。
アヤカの父親に彼女のボディガードとして、雇われている僕は、周囲に注意を向けながらその後ろをついていく。とりあえず危険は、ない。
「どんな子だったの?」
「ええっとね、身長は私よりちょっと高いくらいかな? とっても優しい顔をしてて……」
試験中、アヤカは消しゴムを忘れた隣の少年に、自身の消しゴムを半分に割って渡した。話しかけたかったが、その少年は試験が終わるなり急いで帰ってしまったそうだ。
「きっと、受かってるよ」
そう、伝えると、アヤカは青空を見上げながら、そのライトブルーの瞳をキラキラと輝かせた。
「また、会いたいなあ」
ふわ
彼女の喜びの声が空に響くと、あたりに柔らかな風が吹いた。細道を囲う花壇に咲く花が、綺麗に整えられた芝が、喜びを共有するように風に揺られ、心地いい音色を奏でていく。
「そう、そんなかんじの色!」
風に舞う花びらは、快晴の空に鮮やかに映った。それに手を差し伸べながら、微笑むアヤカ。
彼女の安らぎの感情に反応して暖かな風を吹かせる「風の精霊」達。そして、その周囲では淡い小さな光を放つ「太陽の精霊」達。
「入学式で会えたら、その子に伝えたいの。とっても綺麗な色だねって」
――輝くようなライトブルーを背景に咲く、花畑のような色。タクミ君の心の色に惹かれたアヤカは、その日から入学式で彼に会えることを心待ちにしていた。
そして、タクミ君の絵画がアヤカの好きな彼の心の色をそのまま映し出したような「輝くようなライトブルー」を描いた時、彼女が満面の笑顔を浮かべたのを覚えてる。
――「妖精のアヤカ」は確かに、天才画家である彼に「恋」をしていたんだと思う。
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