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黒ばら王女と螺旋の廃城  作者: わら けんたろう
第三章 魔導都市の主

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第11話 ちびゴーレム大暴れ

 アスカとジャニスは、城壁の上からペンドラ軍の編成を確認していた。


 土埃が舞うなか、城塞都市ゴウマへ迫るペンドラ侯爵の軍勢約二千五百人。

 歩兵主体で組織された軍勢のようだ。騎兵は五百騎ほどだろうか。


 五つに分けられた各隊は、いずれも方錐陣形を取っていた。それが雁行形に並んで進軍している。城門へ向け突撃を繰り返し、波状攻撃をかけるつもりのようだ。


 中央塔を無力化し、城門を破壊した。おそらく、彼らはそう思っている。


 ならば、後は城門から一気に城内へ雪崩れ込むだけ。

 そして、城内に火を放ち、略奪の限りを尽くして占領する。

 そんな作戦だろう。


 そのためか、比較的士気は高そうだ。


 城門からペンドラ軍までの距離は、四百メートルから五百メートルほど。


「拡声の魔導具はある?」


 アスカがジャニスに尋ねた。


 拡声の魔導具は、伝達者の声を広範囲に届ける魔導具だ。


 いわゆる拡声器だが、大きな設備になるため、持ち運びはできない。城や民衆が集まる広場などに備え付けられていることが多い。マイクのような集音機は不要で、魔法陣が描かれた所定の位置に立って話すだけでよい。


 ゴウマでは、中央塔、城門の上に設置されている。


 ただ、そこそこ魔力が必要なので、あらかじめ魔力を充填した魔石を拡声器に嵌め込んで使用する。


「ああ、いま魔石を準備させる。待っていろ」


「お願い」


 ジャニスは拡声の魔導具を起動する魔石を用意するよう城兵に指示した。

 「はっ、ただちに」と言って、城兵が下へ駆け降りて行く。


 ペンドラ軍の動きを見詰めていたアスカは、振り返って近くにいた城兵に声をかけた。


「そこの貴方。下へ行って骸骨騎士とゴーレムたちに出撃するよう伝えて」


「はっ」


 城兵のひとりに指示を出すと、アスカはふたたび視線を城壁の下へ移した。

 

 しばらくして、棍棒を手にしたファブレガスと三体のゴーレムたちが城から出てきた。

 そのまま、一直線にペンドラ軍へ向かって駆けていく。


「ファブレガス、頼んだわよ」


 アスカが見守るなか、ほどなくしてファブレガスと三体のゴーレムはペンドラ軍前衛に接敵した。


 レンジャー・レッドは他の二体よりも高く飛び上がり月面宙返りをすると、両腕を広げて前線の兵士にフライング・ボディプレスをかけた。


「ぐあっ!」


「おわわわっ」


 レンジャー・レッドの体当たりを受けた兵士が吹き飛ばされる。後ろにいた兵士たちも、つぎつぎと巻き込まれて将棋倒しとなった。


 続いてレンジャー・ルージュが、両腕を前に突き出してロケットのように兵士に突っ込む。

 重量級のパンチを受けた兵士は吹き飛ばされ、後ろにいた兵士たちもなぎ倒された。


「な、なんだ!?」


 さらにレンジャー・カーマインは、ドロップキックのような態勢で兵士めがけて突っ込んだ。

 カーマインのキックを受けた兵士が、周囲の兵たちを巻き込みながら吹き飛ばされる。


 ペンドラ軍のなかに飛び込んだゴーレムたちが、群がる周囲の兵たちを手当たり次第に投げ飛ばす。


 自由すぎるほど自由に大暴れする三体の赤いゴーレム。


 ペンドラ軍の兵たちも、奇妙な姿のゴーレムを相手に応戦する。


 が、


「くそっ」


「このっ、このっ」


「小さいうえに、すばしっこくて戦いづれぇ!」


「か、硬ぇ!」


 ペンドラ軍の兵士たちは、見た目によらず機敏に動き回るゴーレムたちの戦いぶりに翻弄され、いきなり大苦戦を強いられた。


 やがて、大暴れしていた三体のゴーレムたちが屈む。


「こ、今度はなんだ? うおおっ!?」


 三体のゴーレムが、同時にジャンプする。

 ファブレガスの背丈よりも高く飛び上がった彼らは、おしりから着地。


 轟音とともに、前方へ半円状に広がる衝撃波がペンドラ軍の兵士たちを襲う。


「ぐわあっ!」


 吹き飛ばされるペンドラ軍の兵士達。

 そして舞い上がる土埃のなかから、黄金の髑髏をもつ骸骨騎士が姿を現した。


「魔物!? ス、スケルトンキングだぁぁ!」


 骸骨騎士ファブレガスが、かろうじて立っている兵士たちを棍棒で薙ぎ払う。


 ペンドラ軍前線は完全に隊列を乱され、大混乱に陥った。


 アスカは、城壁の上からファブレガスたちの奮闘を見守っていた。

 大地を揺さぶるような轟音と、ファブレガスたちに吹き飛ばされた兵士たちの叫び声が聞こえてくる。


 ゴーレムたちが地面にヒッププレスをするたび、凄まじい衝撃波が発生する。それが最前列の兵士たちを襲い、さらにファブレガスが振るう棍棒に薙ぎ払われる。


 もちろん、死なない程度に手加減はしているようだ。


 けれどもゴーレムたちには、活動限界がある。ゴウマによれば、あまり長い時間は持たないらしい。


 彼らが停止すれば、ファブレガス単独でペンドラ軍を押しとどめることは難しい。

 ペンドラ軍はチャンスと見れば、一気に城へ押し寄せてくるだろう。


「もう少しよ、お願い、もう少しだけ頑張って」


 城壁の上でファブレガスとゴーレムたちの戦いを見詰めながら、アスカは汗ばむ拳を握りしめた。


 *


 一方、ペンドラ軍では、


「城門の前で、骸骨騎士とゴーレム三体が我が軍の行く手を阻んでおります!」


 と伝令役の兵士が、地竜に跨ってチョビ髭を弄る将軍に告げる。


 今回、ペンドラ侯爵から城塞都市ゴウマ攻略の任務を与えられた将軍の名は、マーカス・フラーという伯爵位をもつ貴族である。


 ペンドラ派のなかでは強硬派として知られ、日頃から過激な主張と行動を繰り返す男だった。

 でっぷりとした体形で、細長の切れ目、赤茶けた頭髪。艶やかなチョビ髭が彼のトレードマーク。


 マーカス将軍を背に乗せている地竜は、どこかうんざりした様子だ。もう少し、ダイエットして欲しいと考えているかもしれない。


 伝令役の兵士から、前線の戦況報告を受けたマーカス将軍は耳を疑った。


「なんだと?」


 状況を確認するため、マーカス将軍は動揺する兵たちの間を縫って本隊の最前列に移動した。


 彼の目に映ったのは、ぐだぐだになった前線の隊列。黄金の髑髏を持つ骸骨騎士と三体の赤いゴーレムが縦横無尽に暴れまわっている。


 小さな赤いゴーレムが、兵士の両足を脇に抱えてグルグル回っている。

 周囲の兵士がそれに巻き込まれ、弾き飛ばされる。


 最後に両足を抱えられていた兵士は、放り投げられた。

 投げられた兵士が、叫び声を上げて回転しながらマーカス将軍の方へ飛んで来る。

 兵士の踵がマーカス将軍の側頭部を掠め、側にいた副官に激突。副官は落馬した。


 マーカス将軍のこめかみを冷汗が伝う。


 別の場所へ視線を移せば、棍棒を振るう骸骨騎士。薙ぎ払われた兵士たちの身体が宙を舞う。

 その様は大鎌を振るう死神のようだった。


「あ、あれは、アスカ様の護衛騎士か? そして、ゴーレム!?」


 骸骨騎士とゴーレムに、なすすべもなく吹き飛ばされていく歩兵たち。

 マーカス将軍は、その姿を呆然と眺めていた。


 ファブレガスと三体のゴーレムは、群がる敵を千切っては投げ、千切っては投げの大奮闘。

 見事、ペンドラ軍の進軍を食い止めていた。


「お、おのれ……」


 どこかで、ペンドラ侯爵の斥候かあるいは本人がこの戦場を観ているかもしれない。

 それなのに二千五百の兵が、たった三体のちびゴーレムと骸骨騎士に翻弄されている。ありえない醜態だ。


 マーカス将軍は両の拳を握りしめ肩を震わせながら、その光景を憎らし気に睨んでいた。


「たかが、ホネと石くれ人形に後れを取ってどうする! さっさと叩き潰さんかーっ!」


 彼はファブレガスたちを指さして、周囲の者達に怒鳴った。

 その指示に従い、兵士たちが次々とファブレガスたちに襲いかかる。

 しかしファブレガスが振るう棍棒に、まとめて弾き飛ばれる。


「ぅぁああああっ!」


 飛んできた兵士のひとりが、マーカス将軍を直撃した。


「いけぶらばっ!」


「将軍ーっ!」


 マーカス将軍は地竜の背から落ちて、兵士の下敷きになった。


「ぐ、お、おのれ。ホネの分際で……」


 怒りに満ちた形相で兵士を払いのけ、呻き声を上げて立ち上がる。


 そして、そのときは唐突に訪れた。

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