第三話 実践と遭遇
俺は宿のベッドで頭を押さえて横たわっていた
英雄の記憶を使用した俺は意識を失いあの部屋で倒れてしまった、人の人生の何年間分の記憶が一気に入ってきた為、頭がパンクしたのだろう、だがそれ以上の価値がいま俺の頭の中はある
記憶と言ってもただ見ただけでは無い、体験したに近い為黄金騎士の戦い方、スキルの使用方法や感覚もある程度習得出来たのだ!
部屋で倒れた筈だったが、気がついたら外にいた
ダンジョンの入り口も無くなっており、俺も頭痛が酷い為、すぐに宿に戻ったのだ
「明日には動けるようになりたいな」
何か忘れている様な気がするが、俺は眠りに着いた
翌日、ギルドのミライさんにこってり怒られた
ソロで初めてなクエストで報告もせず、帰ってきたのだ
心配もされる
しかもゴブリン自体は倒せていない為、まだクエスト中となっていた
「昨日は何があったんですか!?」
「心配したんですよ!」
「すいません、色々あって忘れていました」
「色々ってなんですか?」
「信じられないと思いますが、ダンジョンがあってその中で金色のリビングアーマーと戦ったんです」
「え!…え!」
「ダンジョン!? しかも金色のリビングアーマー!?」
「もし本当なら、大変でしたね」
「ただ、新しいダンジョンにソロは危険すぎます、行く時に気おつけてくださいって言いましたよね?」
初めは驚き、その後は心配され、最後には冷静に指摘された
「は、はい…すいません」
「はぁー、色々あったのは分かりました、ただそのダンジョンの場所は分かりますか?」
「ギルドとして把握しておきたいので」
「そのダンジョンなんですが、出たら入り口が消えてしまったみたいで、あった場所自体は北の森の中腹だったんですが」
「謎だらけですね、ダンテさん1人の証言だけではわたしはともかくギルドマスターには信用はされないかもしれませんね、しかも、もう入り口がないという事なら尚更調査する事は無いかもしれません…」
「ところで、今日はどうなされますか?」
「昨日のクエストができていなかったので、ダンジョンの入り口の調査も兼ねて、こなそうと思っていました」
「分かりました」
「今日は本当に気おつけて下さいね!」
「はい…」
昨日の事があった為か、かなり念を押された
そして、俺は昨日と同じく北の森に来たが、ただゴブリンを討伐しに来ただけではない!
昨日見た記憶で得た知識を使い戦闘してみるのだ
頭痛が取れた今日の俺は興奮しっぱなしだ、ミライさんには怒られたが、やってみたい事がいっぱいだ!
まずは昨日みた黄金騎士は全部持ちだったが、メインは気力による身体強化でその使い方も一級品だった!
まず気力を練り拳に纏わせ岩を殴った
岩は拳の跡が残る程度に壊れた
これは俺がいつも使う強化攻撃だ、リビングアーマーに使った時は、剣に気力を纏わせていた
次に気力を練り攻撃の瞬間一気に気力を拳しに流した
この結果、岩が粉々に吹っ飛んだ
「おおー! これが本当の強化攻撃か」
しかも、燃費が良い
今まで常に気力を消費していた為、威力は上がるが燃費が悪いものだった、一級冒険者はそれも出来ているみたいだが、俺はまだそこまで出来ない、これはかなり優秀なスキルだ、しかも防御にも使える、来る場所が分かれば同じように攻撃が当たる瞬間流すと攻撃を弾いてくれるみたいだ
まだやった事がない為、確証はない
次に気力を練り喉に溜めて、一気に声をだす!
「か!」
すると木の葉っぱや枝が吹き飛び、丸裸の木になってしまった
「これもすごいな」
さっきよりも気力は使うが、気力による遠距離攻撃だ
気力は体から離れると一気に霧散してしまうものだ、だか声に乗せる事で気力を音速で放つ事が出来るみたいだ
そして俺はメインのスキルを使う準備をした、なぜ黄金騎士が黄金騎士と呼ばれたのか、俺は鎧が黄金に輝くオリハルコンだったからだと思っていたが、英雄譚でも、戦闘時に光輝くと書いてあったが、このスキルを使う事でその謎が解けた
「金剛体」
すると全身が金色に光輝きだした、
このスキルは気力、魔力、神力を使った複合スキルだ
記憶で知ったこのスキルの性能は、強化攻撃以上の攻撃力と肉体自体の強化、防御も装備品的に言えばミスリル以上、そして継続回復だ
ただ、それらのスキルを使用した訳ではない、気力と魔力と神力を混ぜ合わせる事でとんでもない力が産まれる、普通ならこれを会得するのに数年かかるが、俺は記憶のおかげで使用できる様になった
ただこのスキル流石に燃費は悪い
全快の今でも連続使用は10分程度だ
黄金騎士は丸一日このスキルを使用していたみたいだから、さすが英雄だ
この3つを俺は記憶で会得した、本当に英雄の記憶というギフトは規格外の性能だ
更に今日は世界の声の実験もする
「1番近いゴブリンはどこにいる?」
「ここから北東100m先にいます」
よし!索敵も出来る
ただ思っていたより近くにいて驚いた
俺は世界の声でどこまで出来るかを考えていた
その中で、クエストのモンスターの居場所が分かればかなり楽になる、強力なモンスターには調査クエストというのもあり、いるか確認するだけのクエストもある
討伐でも、数が少ないとか、元々見つかりにくいモンスターもいるそんな時、すぐ見つけられるなんてこれほど快適な事はない
早速ゴブリンを倒しに行きますか!
「うお!」
「バキバキバキバキ! グチャ!」
そう言って俺はいつもの感じで走りだしたら、速すぎて木に激突したが木々の方が次々と薙ぎ倒されていった
そしてゴブリンを轢き殺してしまった
「なんてこったい」
初めてゴブリンに申し訳ないく思いながら、
俺はスキルを使えるのと使いこなすとは違うという事を理解した
俺が使うスキル時の感覚と違いすぎる、確かに記憶を頼りに合わせる事は出来そうだが、練習は必要みたいだ
「流石に全て都合がよく行くわけがないか」
そして、ゴブリン達は俺の練習相手として犠牲となったのだった
「メルトの街はどの方向で何キロある?」
「メルトの街まで南西に約10キロメートルです」
よし!これも成功だ
日に3回だけ聞く事が出来るが、一度に複数のことを聞いても
答えてくれる
「1番近いゴブリンと街の方向は?」
「質問が却下されました」
あー、関連した情報じゃないといけないのか
まあちょうどいい、質問に失敗した時に回数が減るか確認できるからな
「きゃーーー!」
その時、どこからか悲鳴が聞こえてきた!
「いま悲鳴を上げた人はどこにいる?」
お願いだ、答えてくれよ
「ここから西に一キロメートル先にいます」
よかった、質問に失敗しても回数は減らないみたいだ
だが、急がないといけないのは変わらない
襲われているのが同じ冒険者で、自己責任だとしてもこの状況で何もしないなんで俺には出来ない
しかも今の俺はソロだ、自由にさせて貰う!
でも、ミライさんにはまた怒られかかな
俺はさっき練習した強化攻撃の応用で足に気力を使い、高速で移動した
「瞬歩」
10秒とかからず目的地に着いたが、そこに居たのはメタルリザードと1人の獣人の少女だ、少女は気を失っているみたいで、動かない
メタルリザードは防御が異常に高い上に素早く、ブレスまで吐く厄介なモンスターだ
単体撃破にはAランク以上じゃないと無理と言われているモンスターだが、メルトの街にAランクの冒険者はいない
「生きて帰れても説教確定だな」
メタルリザードは少女に気を取られこちらを向いてない
今のうちに一撃入れる!
強化攻撃を全力で使い尻尾を切りつけた
「斬撃」
「スパン!」
「え?」
俺の想像と違いすぎる手応えが伝わってきた
確かに尻尾は胴体よりは硬くない、だが、まさか両断出来るとは思ってもいなかった
「ギャーーーー」
メタルリザードが突然の攻撃にのたうち回りながら、こちらに向き直し突っ込んできて爪で切り裂こうとしてきた
俺も手応えにびっくりして、反応が遅れたが
今度は小さめの盾、バックラーに気力を込めた
「剛体」
すると
「キン!」
メタルリザードの爪をいとも容易く弾いたのだ
弾かれると思っていなかったのかバランスを崩しよろめいているところを再度切り付けた
「は!」
「ギシャーーーー!」
腕を切られたメタルリザードはたまらずバックステップで距離を取った
中々攻めているのになんでメタルリザードは引かないんだ?
メタルリザードの不自然な行動に少し違和感があったが、そんな考え事をしていると奴の視線が俺から離れた
そう、獣人の少女を見たのだ
急ぎおれも少女の元へ向かったが
奴は少女へ切り札のブレスを吐いてきたのだ!
「金剛体!」
とっさにスキルを使い、少女の盾となったがここでも俺の予想外の出来事が起きた
「あつ!いや、熱くないな」
「ハハ! ここまで強化されるのか」
「これならいける!」
俺は勝利を確信し、メタルリザードまで距離がある所で、俺は金剛体の応用を試す事にした
金剛体のスキルは気力、魔力、神力を混ぜる事により、3種類の特性を持たせる事が出来る、その中で魔力での効果は魔法防御が上がる事と、体から離れても力が霧散せず操れる様になる
すなわち、飛ぶ斬撃だ!
「飛剣!」
そう言って放った斬撃はブレスを切り裂きその先のメタルリザードを真っ二つにしたうえ、後にあった木々達も切り裂いた
「少しは英雄達に近づけたかな」
緊張が解けたのか、どっと疲れがきて膝をついてしまった
自分がここまで出来るなんて思っていなかったが、襲われている少女を助けるという、英雄譚でよくあるシュチュエーションを乗り越える事ができて、嬉しくそして自信が戻ってきたような気がする
「これならソロでも行ける!」
この後、ミライさんにまた怒られました!
英雄までの道のりはまだ長いみたいだ