国王会議
コンコンッ
「クラウド帝国皇帝陛下がお見えになりました。」
ガチャ
到着している全ての王族の代表が集まっている。
「緊急の呼び出しにも関わらず、お越しいただき感謝致します。さっそくではありますが本題に入ります。先程のパレードにて数人の刺客を捕らえました。」
ザワザワ
「まだ目的は分かっていませんが、注意して頂くためにこの場を設けさせて頂きました。」
刺客が現れるのは王族にとって珍しいことでもない。
ただ今回は即位式のために各国を招いたパレード中の出来事なだけあって考える必要がある。
どこかの国を狙ったのか、それとも…。
刺客を尋問した所で答えが出るのは遅いだろう。
だからあえて場を設けて迅速に各国に伝えたのだ。
牽制の意味も込めて。
24歳という若さで、もうここまで頭がきれるとは。
「刺客だなんて…狙われていたらと思うと安心できませんね。(意味:警備はどうなっているんだ)」
「即位式が目前にせまっているのに刺客が現れるとは…(意味:不吉。即位すべきでないのでは?)」
やれやれ。どこにでも嫌味なことを言う輩はいるものだな。
「王族ならば、刺客に狙われるなど珍しくもないであろう。不安ならば帝国の騎士達を貸すぞ。」
「えっ…あ、いや」
「お、お心遣い感謝致します!皇帝陛下!」
「とにかく、刺客から情報を得ないことには進展は無いだろう。その分自国の騎士達にも情報を共有して細心の注意を払う、ということで良いだろうか?」
「はい。ありがとうございます皇帝陛下。我が国の騎士団も総出で警備にあたらせて頂きますので、皆様ご理解ください。」
こうして緊急会議は幕を閉じた。
ゾロゾロと退室していく王族達。
「…それで、私に話があるのだろう?」
「…お気づきでしたか。」
少し驚きながらも、やっぱりなという顔の次期アステア国王。
「実は、今回の件は水の精霊達が教えてくれたことによって早期発見に至ったのです。この国の住民であっても精霊達と仲良くできるのはごく僅か。ですが皇帝陛下と皇后陛下は精霊達と仲睦まじくされていたとのことで、なにか知っているのではと思いまして。」
なるほど。精霊達は気まぐれに人助けなどはしない。
それなのに知らせてくれたということは明らかに精霊と仲の良い者の指示だろう。
「残念ながら、私達は何も知らないな。水の精霊達が私達に友好的なのは聖女が出発前にかけてくれた加護のおかげなのだ。あの子はどんな精霊からも愛される子だから。」
「そうでしたか…聖女様の…実は前に一度、帝都のほうでお見かけした事があります。その時も精霊達に囲まれていました。」
「…驚いた。あの子はパーティーにも出たがらないから他国にはほとんど顔を知っている者はいないんだ。君は運がいいね。」
「民達からとても慕われているように見えました。」
「あの子は本当に民達を好いているからね。その気持ちが伝わっているのだろう。」
コンコンッ
「おっと、話が長くなってしまった。あの子の話をするとつい。それでは私は失礼する。」
「はい。ありがとうございました、皇帝陛下。またゆっくりお話し聞かせてください。」
ガチャ
「っ!クラウド帝国皇帝陛下にご挨拶いたします。」
「ユニス、自己紹介を」
「はい、アステア王国第一騎士団長ユニス・クリフォードと申します!」
「…」
「皇帝陛下?どうされました?」
「なんだか…初対面な気がしなくてね。」
「「えっ」」
「いや、顔は全く見たことないのだけど何故だろう。私も不思議なんだ…。」
「ユニスは騎士団長に任命されてからまだ半年ほどなので、王国外での活動はした事がないのですが。」
「なら気のせいかもしれないな。引き止めて悪かった。私はもう行くよ。」
確かに何かを感じたはずだったんだが…。
懐かしい訳ではなく…ただ知っている気が…。
「陛下、おかえりなさい。何の会議だったの?」
「あぁ、それが…」
この時の"違和感"に何故気付けなかったのだろう。