皇帝 グレオール・クラウディア
「クラウド帝国、グレオール・クラウディア皇帝陛下。アリシュタン・クラウディア皇后陛下のご入場です」
パチパチパチパチッ
アステア王国の新国王、ルミエ・ド・アステア。
24歳という若さでの国王即位。
誰かも見習って欲しいものだな。
「ようこそお越し下さいました。皇帝陛下、皇后陛下。お変わり無さそうで何より。」
「こちらこそ招待いただき感謝する。」
「改めて、国王即位おめでとうございます。」
「ありがとうございます。お部屋へ案内させますので旅の疲れを癒して下さい。」
「心遣いに感謝する。」
やはり国によって城の作りは様々だな。
水の都なだけあって至る所に水路が引かれている。
水の精霊達が至る所にいて、空気も澄んでいる。
「気持ちいいところですね。」
「あぁ。穏やかな気分になれる。それに聖女の加護のお陰か、精霊達もとても友好的だ。」
精霊は自由で正直だ。好かれる人間はごく一部。
けれど聖女の周りにはいつも様々な精霊達がいる。
『心地いい気配がするー』
『聖女と呼ばれる者の力ね!そうでしょ!』
「ええ。そうですよ。私達の大好きな子が加護をつけてくれたの。」
『この気配すきー』
『聖女いないのー?』
「ここは綺麗な国だから、聖女も気に入りそうだ。いつか連れてくると約束しよう。」
「…そうね。必ず」
あの子と初めて会った時、まだたった12歳の子供だった。
年齢の割に小さい身体。
子供に重荷を背負わせる罪悪感は今でも鮮明に覚えてる。
それなのにあの子は一生懸命頑張ってくれるから、いつの間にか本当の娘みたいに思うようになった。
あの子の願うことは、可能な限り叶えてあげたい。
ブワッ
「すごい風!海が近いからかしら?」
一瞬、風に乗ってあの子の気配を感じた気がする。
暖かくて眩しくて優しいあの子の気配を。
「お土産はアステア産の真珠のアクセサリーにしようか」
「アステア産のフルーツもいいわね!」
「あの子にも…見せてやりたいな。きっと喜ぶ。」
「そうね。喜んでる姿が目に浮かぶわ。…あの子に会いたくなってきちゃった。」
皇后はとくにあの子と仲がいい。
服を選んだり、お茶をしたり、たまに驚くような行動をする2人だが、その姿は本当に親子のようで…。
タッタッタッ
「陛下。どうやら何かあった模様で、緊急会議が開かれるそうです。」
「そうか。皇后は騎士と共に部屋へ。」
「えぇ。いってらっしゃいませ。」