暗殺者
必要なものが揃い帰ろうと思ったけど、なんだか通りに人が集まってるわね。
パーッパララパー
突然のラッパからセレモニーが始まる。
警備隊が道のはじに列をなし、数台の馬車が現れる。
そして先頭には見慣れた馬車が。
「あれはっ…」
まさか、私の方が先に着いていたなんて。
「皇帝陛下…皇后陛下…」
アステアの民達による歓迎に笑顔で答える両陛下。
もう私がお二人に笑いかけられることはないだろう。
ピカッ
ん?何か光って…っ!?建物の影でよくわからないけどあれはまさかっ…
ー聖眼ー
建物内、屋上、建物の間など、5人はいるわね。
あとはこの観衆の中に紛れているのか。
他の国の王族達もいて狙いは定かではないけど。
私の大切な両陛下が危険に晒されるのは許せない。
ー認識阻害ー身体強化ー
音も気配も殺して近づき、森の精霊からもらった眠り粉で眠らせ静かに拘束していき、隠れていた5人を一つの建物内へと集める。
パチンッ
「うわっ!?な、なんだっ!?動けねぇっ」
「はっ!?お前らなんでここに!?」
「さっきまで配置についてたのにっ!」
いまいち状況把握ができてない模様。
「貴方たちは暗殺者よね。一体誰を狙っていたの?」
「「…」」
まぁ、答えるわけないか。
「悪いけど、あの方達が無事に城に着くまで大人しくしていてもらうわ。」
「ふっ…俺らが黙って捕まってるとでも?」
「言っておくけど、自殺しようとしても無駄よ。貴方たちに仕込んであった毒は全て浄化したし、その拘束は解けない。仮にどうにかして命を落とそうとしても私が死なせないから。」
「お前、何者だ!」
「さぁね。あ、時間を稼いでも無駄よ。水の精霊達に怪しい人物はみんな監視されてるから、観衆に紛れてる人達が何かしようとした瞬間」
バシャッ
「ゔぇっ…ごぼっ…ごほっ」
「水に全身包まれてここへ連れて来られる事になってるの。あとは騎士達に伝えるよう言ってあるから貴方達が捕まるのは時間の問題ね。」
「お前一体、どこの国の護衛だ!」
「ごほっ…はぁっ…護衛じゃねぇ。こいつは…帝国の聖女だ。」
元聖女だけどね。
驚いた。私のこと知ってるのか。
「貴方たちがどこの誰を狙っていたのか知らないけど皇帝陛下と皇后陛下を危険に晒した罪きっちり償ってもらうわ!」
恐らくもうすぐ騎士達が来るだろう
「…あんた、なんでこの国にいる。聖女は国から出られないはずだ。ましてや護衛もつけず一人で行動させるなんて有り得ない。」
この人帝国民なのね。痛いとこつくなぁ。
「有り得ないことが起きてるなら、そういうことでしょ。」
「皇太子か…」
あのアホは…暗殺者にさえすぐ推測されるのね。
数々の愚行を民たちが知っている証拠。
「…どうやらお喋りはここまでのようね。私の記憶は消させてもらうわ。」
パチンッードサドサッ
さて、屋根の上から聖眼で様子見でもしようか。
バタンッ
「動くな!…ってあれ?」
「…こいつら気を失ってるぞ」
「濡れてる…精霊たちか!」
「おかしいな…精霊たちが自主的に動くことはないのに…。」
「まだ仲間が隠れてるかもしれない!あたりを探すんだ!」
「各国王族たちが来てるんだ。一人残らず捕まえろ。」
「「はい!」」
すごい気迫。やっぱり騎士は違うなぁ。
これなら精霊たちの手を借りなくても平気そうね。
代わりに私が少し手助けしてあげる。
怪しい人物や負のオーラを持った者に目が留まるようにほんの僅かな加護を。
フワッ
長年一緒にいたからなのか、皇帝皇后両陛下やその護衛である帝国騎士達は私の力を感じとることが出来るらしい。
だからバレない程度に。
「どうか、私の大好きな陛下達をよろしくね。」
屋根をつたってパレードを追い無事城に着くまで見届けた。途中騎士達が怪しい人物をちゃんと拘束していたので一安心
さて、我が家に帰りましょうか。