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追放

皇帝皇后両陛下が出発されてから3日

私はとある人物に呼び出された。


「来たか。」


ザワザワ


わざわざこんな、人の多い所へ呼び出して何の用だろう


「皇太子殿下にご挨拶いたします。」


この帝国の皇太子、ノーラン・クラウディア(25)

私はこの人を本物のアホだと思っている。

学力人並み、剣術人並み、武術人並み、の顔だけ男

皇帝皇后両陛下はこのアホ以降中々子宝に恵まれなかった為仕方なく皇太子にしたのだ。

幸いにも、12年かけやっと第二皇子を授かった。

まだ13歳だが魔力の才能もあり、私の事を慕ってくれる数少ない人のひとり。


「おい!俺の話を聞いているのか!」


あの両陛下から何故、こんなのが産まれるのだろうか。

人を見下し、蔑み、慈悲の欠片もありゃしない。

何より、平民たちをゴミとでも思っているような態度に一番腹が立つ。


「貴様、俺の愛するミリアンに何をした!」


な・に・も・し・て・ま・せ・ん・が?


「殿下〜!聖女様ったら私を見るたびに嘲笑うんです〜!貴女は選ばれなかった人間だって」


あ、この人が例の侯爵令嬢だったのか。

面識ほぼない筈だけどなぁ。

皇太子妃だったのね。興味なくて知らなかった。


「貴様のことは普段から気に入らなかったが、皇太子妃に対する侮辱、許すわけにはいかないぞ。」


「私は、神に誓って、彼女に何かをした事は御座いません。面識もありませんし。」


「酷いわ!私の事を空気とでも言いたいのかしら?」


「いや、私「黙れ!これ以上は我慢ならん!」


周りの人たちは…誰も助けてくれなさそうね。


「皇族侮辱による不敬罪、また全く反省の様子が見られないため、今より"聖女"の称号剥奪、国外追放とする」


は?


「待ってください。濡れ衣です!納得いきません。」


「ひぃっ…怖い」


「今だって、ミリアンを睨みつけているではないか。次期聖女はミリアンだ。お前にもう用はない。」


「こんなことっ!両陛下はお許しになりませんよ!」


「父上達が不在の今、私の決定が絶対だ。衛兵達よ、何をしている!早くその罪人を城から追い出せ!」


「っ…誰かっ…」


全員、見て見ぬ振りをしている。

あぁ…ここには…私の味方は一人もいない。

いつも陰で私を蔑んでる貴族だけだ。

最初から、皇太子の手のものしか呼んでないのね。


「聖女様。申し訳ございません。」


いつも一緒にいてくれた騎士達に連れられ、いつの間にか私は皇城の外にいた。


「皇族の命令ですもの。貴方達のせいじゃないわ。」


あぁ、悔しいなぁ。

6年間ずっと、この場所で耐えてきたのに、

こんなにあっさり追い出されるなんて。


「今までありがとう!さようなら!」


「「っ…聖女さまっ」」


私の為に涙を流してくれる人がいるなんて。


「かの者たちに、聖女の加護を」


これで彼らは大丈夫。


はぁ。私は一体どうしたらいいの。

もう生きていても…意味ないのかなぁ。


「聖女様ー!」


「あら、護衛もつけずに!危ないですよ!」


「いやいや、俺たちの聖女様は最強だぞ?」


「何言ってるのよ!強くてもまだ18歳の女の子なんだから!心配するのは当然よ!」


あぁ、貴方達は私をちゃんと一人の人間として扱ってくれるのね。


「…聖女様?泣いてるの?」


「ふふっ…泣いてないわ!心配してくれてありがとう!」


次の聖女はあの…何とか家の…皇太子妃って言ってたわね。

最終審査まで残ってたみたいだから神聖力は強いはず。

ただ、国民達のことはあのアホ同様考えてくれないだろう。


「聖女様ー!これ新作のパンで!」


「俺んとこのワインも持っていってください!」


「日差しが強い日も多いのでこの帽子をどうぞ!」


バスケットいっぱいに食べ物を。

帽子やスカーフなども次々にくれる。

こんな素敵な人達を好きにならない方がおかしいわ。

この笑顔が、もう見れないのね。


「こんなにたくさん、ありがとうございます。それでは、もう行かなくてはいけないので。さようなら」


今までありがとう。優しいみなさんが…大好きでした。


「フェル…」


パァァァア


聖獣グリフォン。私の友達だ。


『ユリアーナ、国境を越えるまで我の背で休んでいろ。』


「その前に街の人達に加護を授けたいの。だからなるべく高く飛んでくれる?」


『はぁ…民達に罪はない…承知した』


どうかこれからも、優しい彼らをお守りください。

私の大切な、大好きな民達を。


キラッ


『主人よ…あとは我に任せて、もうお休み。』


「うん。よろしくね。」


流石に力を使いすぎたせいなのか、はたまた心労によるものなのか、私はすぐに意識を手放した。





聖女によって作り出されたキラキラとした加護は帝国の民達に降り注ぎ、病を患っていたものは癒え、路地裏の住人には生きる希望を与え、人々はいつのまにか涙を流していた。

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