聖女
"聖女"
神に愛され、とても強い神聖力を持つ女性。
貴族や平民の垣根なく国中から神聖力のある女性達を集め、様々な審査により選ばれる。平和の象徴。
「ユリアーナ・ベルチェン其方を聖女に任命する。」
「謹んでお受け致します。」
ザワザワッ
私が選ばれたのは12歳の時、異例の若さだった。
その理由は先代聖女がある日突然"消えた"から。
聖女は皇城の敷地内にある大神殿で生活していた。
常に厳重な警備をされていたのに、忽然と姿を消したのだ。
異例の事態に対し大捜索が行われたが、探し出すことは出来なかったため、すぐに次の聖女をあてがったのだ。
「聖女様、視察のお時間です」
「はい」
聖女になってから6年。
変わり映えはないが、とても満足した生活。
祈りを捧げたり、結界を張ったり、騎士団の治癒を手伝ったり、時には視察として街に降り民たちの平和を見守る。
「聖女様だー!」
「こんにちはー!」
「いつもありがとうございます!」
こんな幸せがくるとは思わなかった。
元々私は孤児で聖女の失踪により、ある貴族が私に目をつけて養子にした。
虐待もどきの躾や実子からの虐め。使用人からの嫌がらせ。
聖女になれなかったら、捨てられていただろう。
「聖女様、そろそろ」
「わかりました。では皆さん、また来ます!」
「「さようなら〜」」
「「またね、聖女様!」」
最初は畏まっていた街の人々も、今ではこんなに親しく接してくれるようになった。
「聖女様は、民たちが本当にお好きなのですね。」
護衛騎士が少し驚いた顔でそう言った。
「もちろん。彼らは私の守るべき存在ですもの。」
街の人達は、心から私を慕ってくれている。
けれど、貴族の中には私を嘲笑う者も少なくない。
聖女と言っても所詮は孤児、平民と馴れ合うなんて、など何年も言われ続けているのだ。
とくに聖女となる最後の審査に残ったのが孤児の私と由緒正しき侯爵家のご令嬢だった為、貴族からの反感が大きいのだ。
「ユリアーナ!夕食までの間、お茶でもしましょう!」
「はい!皇后様!」
唯一の救いなのが皇帝皇后両陛下がとても良くして下さることだ。こうしてお茶にも誘ってくれる。
聖女がどれだけ重要な役割を担っているのか分かっているからなのだろう。
「ユリアーナ、私と陛下がいない間大丈夫そう?」
「はい、気にかけてくださりありがとうございます。」
明日から皇帝皇后両陛下は隣国のアステア王国に向かわれる。アステア国王の即位式があるためだ。
つまり、私を普段守ってくれている最強の後ろ盾がいなくなるわけだ。
「皇后様、出発前にお二人に加護をかけさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんよ!」
〜次の日〜
「どうか、お二人が無事に帰還されますように。」
パァァァアッ
「ありがとう。ユリアーナ。」
「お土産買ってくるわね!」
「はい!行ってらっしゃいませ!」
馬車が見えなくなるまで、私はずっと見送っていた。
「聖女様、祈祷室へ」
「はい」
今日も聖女としての一日が始まる。