勇者と魔王は両片想い
短いです
私は勇者。史上初の女性勇者。
勇者ってことは魔王を倒さないといけないんだけど、あいつ、ホントにウザいんだよね。私が転んだらすぐにからかってくるし、すっごい舐めプしてくるし!
でも、でもね。私、そんな魔王のこと好きになっちゃったの。まず、顔がかっこいいでしょ。それに、声も良い。でも一番は……笑顔、かな。私をいじめてる時みたいなニヤニヤじゃなくて、心からの笑顔を見たときが一回だけあったの。
それを見たとき、胸がドクンってなって、締め付けられるみたいになった。すぐにわかったよ。これは恋だって!
でも、私は勇者であいつは魔王。敵対してなきゃいけない関係なの。今までは魔王を倒さないようにするために聖魔法とかは一切使わなかった。だけどそろそろ魔王を倒してくださいって王様に懇願されちゃったんだよね。
もし、私が魔王を倒したら、そのときは私も一緒に死ぬつもり。仲間には怒られるかもしれないけど、私がそうしたいからそうするの。来世では想いを伝えたいしね。
よし、今日も魔王城へ出発だ。魔王と堂々と会えるなんて、勇者は役得だね!
***
俺は魔王。たぶん今までで一番強い。
魔王だから勇者と戦わなくてはならないのだが、あいつは本当に馬鹿だ。脳みそつまってるか?と言いたくなってしまうくらいに。
でもな、そういうところがクソみたいに可愛いんだ。だからついついからかってしまう。
この前あいつが転んだときは、可愛すぎて手を差し伸べそうになってしまった。だから咄嗟に指を指して「だっせー!」と笑ってしまったのだが、そのときに見せたあの泣きそうな顔。可愛かった。
それにな、あいつは戦う前に毎回「頑張れ、私!」って言うんだ。それが可愛くて仕方がない。可愛くて悶えそうになるから魔王城に入る前にやってほしい。でも見れるのは嬉しいからこれからも続けてほしい。
きっとこれは恋だ。俺はあいつに恋をしている。あいつが俺を殺すときに想いを伝えられたらいいなと思っている。恐らく、俺が倒されるのも時間の問題だからな。
けど、願わくばまだまだあいつの可愛い顔を見ていたい。今世では無理だが、来世ではあいつと恋をしたいものだ。
さぁ、今日も勇者がやってくるようだ。できるだけ戦いを引き延ばし、あいつの姿を拝んでやろう。
***
「なぁ、魔王軍幹部」
「何ですか、勇者の仲間」
「俺さ、勇者と魔王は付き合うべきだと思うんだよね」
「それは私も同感です」
「こっちは戦いの間、二人を見てるとむずむずしてしかたねーんだよな」
「あの二人がくっついてしまえば和平も結べるでしょうしね」
「それにしても何で気づかねーんだろうな」
「魔王様は勇者を馬鹿だと評しておりましたが、魔王様も大概馬鹿ですから」
「あんたんとこの魔王、思春期の男子みたいだよな」
「あなたのところの勇者もただの乙女ではないですか」
「ははは、間違いねぇ」
「ところで、今日は城に来るのですか?」
「あぁ、勇者が昨日からうずうずしていた」
「それじゃあ今日も頑張ってお膳立てしてあげましょうか」
「そうだな。よし、じゃあまた後でな!」