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保安隊海へ行く 4

 アニメショップの向かい、有名チェーンの喫茶店の扉を押し開けたアイシャ。彼女は大量の漫画を、シャムは食玩の箱を三ケース抱えてその後に続いた。

「ずいぶん買い込むねえ。それよりあんな地味な水着で良かったのか?」 

 要はアイスコーヒーを啜りながら腰掛ける二人を見ていた。誠は荷物を置いて椅子に腰掛けようとするアイシャを黙って見つめる。いつもならここで要を茶化しにかかるはずだった。

 しかしそのような動きは無い。要がアイシャとカウラへのあてつけの為に明らかに際どい水着ばかり誠に見せてきたのは事実だったがそれで終わりだった。そう言うことに免疫の無い誠は要があまり気乗りじゃないように持ってきたそれほど露出の多くない赤いビキニを選んだ。

 それより明らかに際どいアイシャが選んだ黒いビキニを見ながら、要がなぜかニコニコと笑っているのを見て、少し誠は不思議に思っていた。

「私もアイスコーヒー飲もうかしら。シャムちゃんはどうするの?」 

「アタシはチョコパフェ!」 

 そう言うとシャムの携帯端末からシュールな着信メロディーが店内に響いた。店に居た客達が一斉に誠達を見つめた。その中に軍の制服と同じものを着ているカウラがいるのがわかると奥に居た女子高生のグループが顔を寄せてなにやらひそひそ話を始めるのが見える。

「ちょっと待ってね!」 

 慌てて立ち上がり通信を受けたシャムが店外に消える。ウェイターは真面目そうに水とお絞りを置いていく。

「私はアイスコーヒー、それにチョコパフェと……」 

 アイシャが促すように誠の顔を覗いた。誠はアニメショップには行かずに要の相手をしていたが、つい喉が渇いてアイスティーを飲み干していた。

「僕もアイスコーヒーで」 

 誠のその言葉に安心したようにウェイターが店の奥に消えた。

「ごめんね、ちょっと小夏ちゃんから電話で」 

 シャムはそう言いながら戻ってくる。

「小夏か。そう言えばあまさき屋、最近行ってないよな?」 

 要が呟いたその言葉。ニヤリと笑いその動静を見守るアイシャの顔が誠の目に入った。

「給料日前だもんね。私もちょっと今月は……」 

 いかにも弱ったように答えるアイシャ。でもそれが演技であることは誠にも見破ることが出来た。

「趣味に金を使いすぎだ。少しは節約と言う事をしろ」 

 隣のテーブルからカウラが突っ込みを入れる。サラとパーラが大きく頷く。それでもアイシャは何かを待っているようにじっと要を見つめていた。

「なんなら奢ろうか?」 

 ぼそっと呟かれた要の意外な一言が、一同を凍りつかせる。ただアイシャはガッツポーズをしかねないほどのいい笑顔を浮かべていた。

「俺のもですか?」 

 島田がそう言ったのを聞いて、要は我に返った。誠を見る、シャムを見る。明らかに自分の言葉が思い出されてきて、急に要は顔を赤らめた。もう後戻りは出来ないとその表情は覚悟を決めたものへと変わった。

「判ったよ!奢ればいいんだろ!奢れば!アイシャ!なんだその顔は!今月は免停でガス代浮いたからそれをだなあ……」

 空回りする要に爆笑をこらえるように手を押さえるアイシャ。 

「私は何も言ってないわよ」 

 そう言うと落ち着いてウェイターが持ってきたコーヒーを受け取る。明らかに勝ち誇った表情がアイシャの顔には浮かんでいた。

「……まあいいか」 

 一人自分に言い聞かす要が居た。そして誠達はなぜ先ほどまで彼女があれほど元気そうだったのかと言う理由を聞き出すきっかけを失ったことに気づいて少しがっかりした。

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