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第九話・ブレアボイドの話

 ブレアボイドという単語は医療従事者以外は聞いたことがないと思います。そりゃそうだ。日本病院薬剤師会が発案した造語ですもの。厚生労働省も診療報酬についてこの造語が使われているので永遠に記録に残る。担当者は嬉しいと思う。個人的にはそうやって作成した造語が公的に残るのがうらやましいです。




 ブレアボイドとは、Prevent and avoid the adverse drug reaction(薬による有害事象を防止・回避する)という言葉を基にしたものです。カタカナ読みしたら、前半が「プレベント アンド アボイド」 となり、省略してブレアボイドです。Prevent は防止しろ、avoidは避けろ、それをくっつけてブレアボイド、どうだ、いいだろ? という発案者の得意顔を空想したりします。三、四十代の男性のような気がするなあ。日本語では単純に「副作用回避業務」 となると思いますが、それだと汎用されても紋切り型で面白くないのでしょう。

 薬剤師会関連の偉い人は、新しい言葉啓蒙キャンペーンを張るときは、なぜか日本語を使いたがらない。前のシリーズでも書きましたが、スイッチOTC、インバフォなどもそうです。名前がなじみがなく、ややこしいってだけです。でもブレアボイドは使います。それでないと通じなくなっていますので。


 以下は厚生労働省の文面の抜粋です。

「プレアボイド事例の報告(把握・収集)」は、報告様式として三つのカテゴリーがあり、いずれも調剤報酬で点数化されている事項であるため、算定点数から薬歴を追って書面に体系的に見える化すればプレアボイド事例の報告に活用できるであろう」

 三つのカテゴリーを簡単に書きだしてみます。

① 副作用回避・副作用が出るかもしれぬ場合が予見され、迅速に処方変更を申し出て回避

② 副作用未然回避・上とはちょっと違います。薬剤師がカルテや、患者の症状、会話から疑問をもってやる疑義照会。その結果処方変更になり、起こり得る可能性が高かった副作用が回避。  

③ 薬物治療の効果向上・薬剤師の提案によるもの。


 そう、薬剤師の職務は調剤だけではない。その存在意義も診療報酬として患者に有益なこと、つまり副作用回避ができたらちゃんといただけるようになっています。つまり、患者のためになることをしたら、ちゃんとお金がもらえますよと。

 これは薬剤師としての風当たりの強さに危機感をもって動かれた熱意の表れで、日々調剤をして口に糊している私も含めた薬剤師の仕事のモチベーションにもなっています。事実これは薬剤師にしかできない業務です。

 昔のように調剤だけやって患者に渡すだけでは医療現場で薬剤師は生き残れません。これだけのことができますよというアピール的業務です。ただし誤解をしないでください。ブレアボイドという造語がない昔から、薬剤師はやるべきことはやっています。厚生労働省に診療報酬の一つとしてこれらを決定させたのは薬剤師たちが存在意義をかけて運動したことの表れだと思っています。

 患者側もまた、ただ黙って薬を飲めばいいのだという時代はとっくに終了しています。自らの意思で治療に臨んでいただくために、手術や治験時には医師も説明の上承諾書に何枚もサインをしていただきます。何かの事故につながって訴訟沙汰を恐れているのもありますが。

 医学は常に進歩しており、調剤も交付もそして服薬指導も同じく進歩しようとしています。






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