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第四十六話・医療機関への評価の内と外


 私の二十代、三十代は院内薬局で調剤したり、病棟にあがって服薬指導をしたりで一日があっというまに過ぎました。目の前の業務をこなすだけで精一杯でした。

 調剤薬局の非常勤としての立ち位置になって、はじめて薬局や病院のありようを余裕をもって眺めることができるようになりました。文章を書けるようになったのが一番大きな変化かな。良いのか悪いのかわかりません。

 今回は世間的な評価と医療従事者間との評価が逆転しているケースを何度か垣間見たことを書いてみます。


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 その地域で評判の良い開業医が、その地域の総合病院の医師の間では不評ということがあります。レストランでの食事をした客は、例えば食べログのようなサイトで評価ができますが、病院や医院ですら、それができるような時代です。

 しかし、病気そのものが非常にプライベートなこと、患者個人に施術される治療や処方薬も一種のオーダーメイド的なもので、評価をすること自体に意味がない。医療の知識がないなら、なおさら。某食事ブログのように、誰が食べてもおいしいから、☆(ホシ)五つ……は、ない。

 ただ医療従事者だけに通じる評価があり、これは一般患者にはわからない。今回はその話。


 ある老開業医から紹介状を持たされ、総合病院にやってくる患者について、受け入れ側の病院の勤務医は「あそこは患者離れが悪く、手におえなくなると紹介状をよこしてくる」 と不評でした。

 いや、患者には罪はないです。

 何も知らないで転院したから。

 老開業医師は患者に「そろそろ通院はやめて、思い切って手術にしようか。ちゃんと紹介状を書くからね」 と言い含めている。一方、患者を迎える側の医師は、「どうしてこんなになるまで、放っておくのか」 です。そういった紹介状を何件も受け入れる総合病院では若い医師や研修医は次々に異動になります。よって、その老開業医に関して、医局内で代々言い伝えられるという恐ろしいことになります。知らぬは患者だけ。

 患者が死亡したとして、その遺族が真実を知り「そこまで放っておいたのは、数十年通院していた開業医の診たてが悪かったからだ」 クレームをつけ、訴訟沙汰になったのもあります。そこまでいかなくても、患者の遺族は世間体と地元の評判やつながりを気にして黙るというのも多い。くすぶっている分だけうわさが出回り、それがまた真実味が出てくる。加えて、夜間遅くまで診療してくれるところはどこでも(特に地方は)貴重なので、患者がとぎれない。医師当人に対しては患者は医療知識がないので、おかしいと思っても言いにくいし実際何も言えない。それを見ると医師の立場って最強だなと感じます。


 医師の出身大学が違うと細かい術式が違う。術式統合の話で前麻酔薬の使用法で意見が食い違ったのも見てます。でも知能指数が高い精鋭&忙しい医師ばかりだと、時間は取らない。術式も統一しない。個々の担当医が麻酔薬を決めましょうと平和にぱっぱっと決まっていく。研修医はそれを聞いて素直に従う。大勢の医師や研修医がひしめくようなところならヒエラルキーもしっかりしているが、小さいところでは人間関係がこなれすぎて、なあなあになっているか、お山の大将我一人状態になっている。

 それでもそれなりに、人間関係があっさりしていて、いい感じです。頭がいい人は、そのあたりの計算も素早いので表立っての争いにはならない。私は忙しすぎる職場が好きな理由の一つにそれがあります。とかく、あの先生のやり方はどうのこうのってうわさ話をする余裕もないぐらい忙しいから。医療業界はそれでうまくまわっているのではないか。

 ……私が書きたいのは、常に誠実であれ、そういうことです。医は仁術でない医師はいずれわかる。よほどひどくない限り責められないが、当の患者にも最終地点の医師の態度や説明で今までの経過の真実がわかることも案外あると思う。私は他人に対してどうこういう立場にないけれども、少なくとも自分だけはどなたに対しても医療従事者として恥ずかしくない生き方をしたいです。

 




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