第三話・薬の出来上がりの順番
病院に受診するということは一種の修業です。何せ治療できる場所と治療できる人材が少ないです。緊急を要しない手術なら、手術日が半年先になったりします。命にかかわる人優先であるのは、これはもう仕方ないです。
単純に定期薬をもらいに行くだけでも予約をしても時間がずれて結局半日がかりも当たり前。体力のない人はそれだけで疲れます。診察も検査も会計も待ってようやくすませた……あとは院外の調剤薬局で薬をもらうだけ……現在は大きな病院はどこでもFAX処方せん受付所があるので、先に処方箋の内容を送信してもらってからゆっくりと取りにいきます。FAXというものが一般的でなく、病院診察後は病院内の薬局で薬を出していた時代は、なお待った。
痛み止めの頓服など今すぐ飲みたい患者にとって、苦行だったと思います。
やっと本題に入ります。
どこの外来診療の場でも調剤薬局でも「順番が前後することがありますがご了承ください」 と書いています。後から来た人に薬を渡すと、怒る人がいるからです。近年、院外処方せんをもらったら院外の調剤薬局で薬をもらうという手順は理解してもらえるようになったものの、FAX処方せんの存在を知らぬ人がまだいる。
後から来た人が先に薬をあっさりともらっていくのを見て怒る。特に慢性的な疾患で長期投薬可能な薬を飲む人は、手際よく院内で先にFAXで処方せんを送信して、あとで本物の処方せんを薬局に持参して薬と引き換えにする。順番を飛ばされたと怒る人はそれを知らない。もちろん、私たちはちゃんと説明します。わかってくれる人が大半ですが、わからない人もいます。その中で「私っていつも貧乏くじや」 と叫んだ人がいらして、さぞや生きづらい人生なのだろうと同情したり。
怒られるのも給料のうちと思っているので私はストレスにならないです。本当にごめんなさいねと謝り、次回からFAXを使ってねと説得します。でもこういう人はFAXしてもらうのを忘れて次の時も普通に処方せんを持参されますので、先にFAX送信していた人の分が渡されるのを見てまた怒る。一応ポスターやちらしもあるので渡しているのですが、ここまでくると単純に学習できない人なのだろう……本当に生きづらそうです。
私はその人の了承を得て、薬手帳の表面に赤マジックで大きくファックスで処方せんを送ってくださいと書いたりしました。その後、その病院の受付に電話して念押しをする。その人に関しては、向こうの方で患者本人が何もおっしゃらずとも処方せんをファックス送信を提案してくれるようになりました。
こういった人はある種の有名人なので患者名を言っただけで話はすぐ通じ、その後はトラブルがなくなりました。定期健診で病院が決まっている場合の裏技です。薬剤師は時にこういうこともします。
その他の場合でも、病院も薬局も人材が余っているわけではないので、なんでも時間が、かかります。一応改善は少しずつでもしていますので、怒って感情を爆発させるよりは、今後どうしたら待たなくてすむかなど落ち着いて相談してもらえたらいいかと思います。内容によっては日数に余裕を持たせて処方を発行してもらえたりはありますので。医療従事者は全員、患者のために悪いことはしないです。そこをわかってほしいです。
また話が脱線してすみません……というわけで、待ち時間を少なく感じさせたいので、FAX処方せん推奨、もしくは処方せんだけ持参して夕方受け取りも推奨。取り寄せは郵送推奨。それでも待たねばならぬ時はもちろん普通に待っていただきます。
理由は……、
⇒ ⇒ ⇒ 急いで調剤すると「調剤ミスが起こり」 やすい。これは本当。あせると間違えやすい。逆に患者が少なくて、ヒマすぎても間違えやすい。先発希望の人にジェネリックを渡したり、逆があったり、カプセル希望なのに錠剤渡したり……効能は一緒であっても、立派な調剤ミスです。
そしてミスしない薬剤師はいない。ミスして落ち込まぬ薬剤師はいない。
だから遅いとどんなに怒られても平気です。今回はそれが言いたくてUPしました。
追記ですが、普段から周囲の雰囲気や状況で気分にムラが出る人は医療従事者に向いてない。患者に怒られて仕事をやめた事務さんいました……何度も書きますが、怒られるのも給料のうちと気分を切り替えることです。
「ふてぶてしいぞお前ら」「謝り方がなってない」 と怒られて落ち込んでも、別の患者様に対しては笑顔で接する。それができれば一人前です。
患者様にはご病気なのに、待たせて本当に申し訳ないと思っています。薬を渡す際にはねぎらうようにしています。薬が効きますように、安心して飲んでいただけますようにという思いで接させていただいています。