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第二十七話・話がやたらと長い患者さん


 私は、薬の交付時に不満を持った患者から帰宅後にクレームの電話をもらったことがあります。説明不足だと……なぜその場で聞いてくれないのかと思いますが、言えなかったのだ、と反省しました。以来、どの患者に対しても何かご質問はございませんかと聞いています。混雑している場合は、説明する時間をコンパクトにまとめることも必要ですが、ゆっくり話を楽しみたい患者もいるのです。今回は話が長い患者さんを話題にしてみます。

 私の先輩は被害妄想のある人にガチでからまれ、「薬を投げ出すように渡された」「患者をばかにしていじめて暮らしている」 と吹聴されました。先に書いた私の体験もあわせて、この種のトラブルは「話を聞いてもらいたいのに、聞いてもらえなかった」 と感じられたことにつきる。

 そういう患者は一定数いらっしゃいます。ゆっくりとお話を伺えれば、その人の人生を垣間見れる貴重な時間でもあるのですが、私たちは他の患者の調剤と薬の説明、訪問看護に同行したり……その人だけにかかわるわけにはいかないのです。

 ある話好きの患者がくると、混雑具合によっては十五分たっても話していたら、「病院から電話です」 と事務さんが途中で薬剤師に声掛けする手はずになっていました。放っておくといつまでも話すのをやめない。周囲の様子や空気が読めず、とにかく話を聞いて~という人です。大部分は六十代から七十代の女性です。男性に少ないのは単純な性差によるものだろうか。


 冒頭の説明不足のクレームをつけられた患者の話に戻ります。私は次の薬の交付時に再度謝罪しました。それから改めて薬の説明をすると、途中をさえぎり過去の経歴を語り始める。他人からバカにされていじめられる人生だったという……この話、前にも聞いたし、別の薬剤師が対応した履歴にもあったなと思っていたら案の定、その人は、己ほどつらい目にあった人間はいないと泣き出す。いやあ、思い通りの人生を歩んでいる人はいないですよ……でも黙って聞いています。

 こういう人たちが求めるのはあいづちだけです。欲しいのは話し相手。そろそろ切り上げていただこうかなと思っても話の切れ目が全然なかったり……多分、話が切り上げられやすいので自然と話しの切れ目がないようにする癖がついたのだろう。いつでも不満ばかりの人生もさぞ生きづらかろうと思ったりです。 以上、全体的にみて数パーセントの確率ですが、どこの薬局でもそういう話聞いて~の患者はいらっしゃいます。病的な話の場合は、絶対に楽しい話はしない。詳細は書けないですが過去にメガトン級の人がいました。その人が来局されたら深呼吸してから薬の窓口でお名前を呼ぶというのはあった。まったく話をせず終始無言を貫く人が続くと、話が長い人でも懐かしくなったりはあります。そうやって薬剤師もまた、接客業の人の苦労を思い知ったりします。



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