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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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一泊二日の戦い 18

「作戦が成功したら連絡して~って言ったのに、全然来ないからおかしいな~って思って探してみたら、こんな遠くにいるなんて......。病人に無理させないでよ~。」

「本当に、お前が指示を出したんだな。」

永嶺は近くにあった切り株のようなところに腰掛けると大きく溜息をする。そうして俺ではなく、村上を見るとにっこりと笑う。

「ごめんね~、村上君。作戦、失敗に終わっちゃったから、ご褒美はなしってことで。」

「は?......いや、なんでなんで?俺はちゃんと言われた通りに動いたじゃん?確かに結果失敗したかもしれないけど、ちゃんとその分は体で払ってもらわないと。体全部とまではいかなくてもせめて胸だけでもさ、な?」

一体何を交換条件に出したかと思えば......。これでもし本当に俺があの時目を覚まさないで村上が成功してしまっていたらどうする気だったんだよ。そこまでして俺を陥れたかったのかよ。

「いや~、誠に申し訳ない。」

「いやいやだからさ、謝罪とかいらないから。このままだと俺ただの下着ドロなんだわ。......あ、じゃあ下着頂戴よ。な?」

「うん、いいよ~。」

永嶺の許可を得るとノアから下着を奪いスキップしながら帰っていった。どうやらあれは永嶺のものだったらしい。

いや、あいつバカ過ぎじゃない?盗撮動画ここにあって現品も回収していったんですけど。

「てなわけで私今ノーパンなんだ~。ワンピースみたいなのだから想像以上にスースーするね。えへへ~。」

「なんかおかしいか?」

「......ごめんね。」


俺は何も言わず永嶺を担ぐと、永嶺のいた予備の小屋に連れていった。ここは永嶺以外誰もおらず入っても来ない、外よりかなり暖かいので話すには絶好の場所だった。

「まさか狐神君の嫌われ度がそんなに高くて、2人で行動しなくちゃいけないなんてルール作ってたなんて知らないよ~。それさえなかったらバレなかったかもしれないのに~。」

これがそこいらの女子なら気にせず話せるが、永嶺とは何だかんだ付き合いがあった。少しずつだけど仲良くなれてたと思った。もう裏切られることにはなれたと思っていた。

「......動機はね、狐神君の立場だよ。」

「立場?」

「そう、3年の春風さんとも2年の大鵠さんとも関わりがあるその立場。私も何とか大鵠さんにはありつけたけど、なかなか春風さんとは関わりが持てなかった。それなりに頑張ったんだけど、全然振り向いてもらえなくてね~。だから前に生徒会に立候補したんだけどダメだった。そしてもうすぐ3年生は卒業。」

永嶺の目は悲しんでいるようにも怒っているようにも見えた。そしてその目には強い決意が見えた。

「.......もうね、時間がないの。だから今回はかなり強引な手を使って狐神君を生徒会メンバーから引きずり下ろそうとしたの。そして私がもう一度生徒会に立候補しようとした。......きっとダメだめだっただろうけどね~。」

話がイマイチ読めない。永嶺が何かしらの理由から春風さんと大鵠と関わりを持とうとしたのは分かった。でもそれはきっと好意とかでは無い。むしろ逆の感情だ。

「私ね、お姉ちゃんがいるの。2つ年上の同じ学校なんだけどね。も~、これが馬鹿みたいに面食いでさ、特にあの2人にはゾッコンで大変だったんだよ~。話聞かされるこっちの身にもなってほしいよ。それでね、一度だけ一緒に遊んだんだってさ。」

そして永嶺の顔が曇った。

「......たった一度遊んだだけで人間て壊れるものなんだね。」

それを聞いた途端、何となく何があったのか分かった。きっとその大半の理由は大鵠だろう。恐らく春風さんが知らない間に酷いことをしたのだろう。けれど春風さんが何もしてないとも言えない。きっと永嶺からしたら2人は同じように見えているのだろう。

何も言えなかった。それは当然だと思う。俺は全くの部外者なのだから。なのに一番の被害者になりそうだった。でも解決した今、それはもういい。

「......とりあえず、もう今日は寝ましょ?それで自分の中で一回気持ちの整理してからまた話し合いした方がいいんじゃないかしら?」

ノアの言葉を受け俺も永嶺も頷いた。心身共に疲弊している中、話し合いをしてもあまり意味などない。永嶺に布団を被せるとノアと共に小屋を出た。その後はノアとも特に言葉は交わさず自分の小屋に着き、すぐに横になった。村上はどうやら戻ってきてるらしいが、完全に布団の中に篭ってしまい様子を見ることは出来ない。そしていつの間にか寝てしまった。


翌朝。朝の6時には起床し、学年顧問がなんかベラベラ言ってるのを適当に聞き流し朝食の準備に取り掛かる。やはり夜中に起きていたのがあってかなり眠い。それでも長年培われてきたご飯作りは頭が起きてなくても体が覚えていた。

「あんた......よく寝起きでそんなできるわね。」

「......ん。」

食事が終わる頃には目も覚め始め、食器の片付け、小屋の片付けを行った。布団、シーツ、枕、枕カバーと分け部屋の隅に固める。この時も小淵に「やっといて」と言われ奴はどこかへ行ってしまった。やりたくはなかったがそれで施設の人が迷惑するのはかわいそうなので仕方なく片付けた。

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