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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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一泊二日の戦い 16

道すがらノアも話し合いに加わった。

「へぇ、そんなことがあったの。本当にあなたも敵が多くて大変ね。」

「ほんと、落ち着いて寝ることもできない。なぁ、村上。」

村上は先程のバカ明るい顔とは対照に酷く不機嫌な顔をしていた。

悪いが人間不審になると他人の優しさを真っすぐには受け入れられないんだよ。寝る前、お前が俺を遊びに誘ってくれたことは少し嬉しかったけど、これじゃあな。結局優しさのほとんどは嘘や見返りから来てんだよな。

「それで?あなたの共犯者は?」

「......」

「え?」

共犯者?でもあの時は村上1人だったし。......あ、そうか。寝る時には小屋の鍵を閉めるから普通に女子小屋に行っても鍵が閉まってるのか。さすがに誰か出てくるまで辛抱なんてないだろうし。

「......ちょうどいいタイミングで小屋から出る奴が一人いたんだ......。だから協力者なんてなんの事だかさっぱり。」

「嘘つくならもっとマシな嘘つきなさい。女子はみんな狐神に怯えて夜中は1歩も出歩かないと固く決めてたわよ。それにどうしてもって時は必ず2人以上で行くって誓約まで書かされたわ。それにあなたそもそも嘘つくの下手すぎ。」

「ちょっとまってノア。それは俺にもだいぶダメージが入る。フレンドリーファイアだ。というか、ノアは今まで一人だったんじゃ......。」

けれど俺の言葉は「今は関係ないでしょ。」と一蹴されてしまう。けれどその目はそれ以上訊くなといっているようだった。すっごい怖い。......何かを隠してるのだろうか。

「ちょっと、なんでそんな怯えた目してるのよ。別に手を上げたりなんかしないわよ。」

「ひぃ、ごめんなさい。お願いだから殴らないで。」


閑話休題。完全に村上を蚊帳の外にしてしまった。

「でもそんなすぐバレるような嘘をついてまでしらを切るってことは、少なくてもあなたたち2人のうちだと向こうの方が立場が上ってわけね。」

「なるほどね。じゃあ早く上の人間呼んでもらっていいすか?」

「なんの事だか全然わからないな。」

まぁそんな簡単には言わないか。でも正直村上と手を組むような女子ってイマイチ検討つかないんだよな。元からあまり好かれてないやつだし。確かに切り捨てる分には何も思わないけれど、自分のことを黙らせておくにはやはり何かしらの交渉材料が必要となる。一体こいつは何と引き換えに黙っているよう命じられたのか。それとも俺と白花のように一方的に命令されてるのか。

「因みにその下着って誰のなのかとかわかる?」

いやそんなこと言われましても。確かに自分のものには名前をつけましょうとは小さいころ教えられたが、さすがにこの歳で下着にまで名前を書くのは恥ずかしいだろ。それともなんだ、麻薬探知犬みたくクンクン嗅げってか。ついには人としての最低限のものさえ捨てろというのか?

まぁさすがに俺が調べるのはその時点で完全にアウトなのでノアが調べる。調べてわかるものだとは思わないが、とりあえず待ってみる。この様子を遠くからそいつが見ているとも思ったが、気配はなかった。

その後やはり大した進展はなかった。そうなれば気は進まないが仕方あるまい。少しだけ、ほんっとうに少しだけ村上に対する訊き方を変えてみよう。

「とっとと吐けよ!!誰に命令されたんだ!?あ゛ぁ゛!?はよ言わんとぶち殺すぞクソ「ちょっと」うぐぇ。」

確かにいつもと逆の立場でちょっと調子には乗ったけど。一瞬人を虐める時の快楽を知りかけたけど。ノーモーションで首締めないで。落ちちゃうから。

「自分がやられて嫌なことはしない。子どもで習ったでしょ?」

「みんなが正しく育ったのなら世界はこんなに汚くない。」

「微妙に返しづらい質問しないで欲しいわね。......でもそうね、自白しないのなら少し強引に話を進めましょう。」

ノアの声が変わり、その言葉に村上が怪訝な顔をする。確かにここから一体どう話を進めるというのか。

「不思議なのはあなたが狐神に証拠動画を撮られているのにあまり動揺していないことよ。動画の内容も言い逃れできるとは思えないわ。先生方に見せれば停学や謹慎にもなるでしょう。となれば考えられる理由は2つ。一つはバレても何かしらの方法で解決出来る、もう一つは件の事がバレるより自白したほうがよくない結果になる。......はぁ。あなたもう少しポーカーフェイスってものをした方がいいわよ。」

さすがに今のは俺でも分かった。後者のセリフを言った途端目が勢いよく動いた。なるほど、ブラフを使えるほどこいつは頭は良くないだろう。

「で、でも結局俺に指示した人まではわかんないだろ?!じゃああんまり意味ないじゃないか!!ハッハッハ!!」

いや何笑ってんの?こいつ。でも確かに意味ないことはないだろうが、大きな一歩にはならないだろうな。むず痒いな。

「さっき言ったばかりよね。『女子のみんな狐神を恐れて夜中1歩も外に出てない、出るとしても2人一緒』って。それがどういう意味かわかる?ねぇ、狐神?」

「?犯人は2人いるってこと?」

「その可能性も高いけれどもっとそれらしい人がもっとあなたの身近にいるわ。考えればそんな難しくないわよ。」


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