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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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一泊二日の戦い 8

禦王殘のありがたい助言をいただいたはいいが、この先どう動けばいいかさっぱりわからない。そりゃあ積極的に物事に参加したり、みんなの輪の中心になれれば自ずと評価も上がるだろうが俺にそんなこと求められてもなぁ。……でも普段あまりそういうことしない分、ここで一気に評価を上げられるかも?ピンチはチャンス。合宿なんて丁度いい機会だ!自分を変えられる絶好の機会じゃないか!ちょっと頑張ってみますか!!

「......そんな簡単に変えられたら苦労しないわ。」

具体的な考えは全く浮かばず、結局昼休みの勉強会もろくに集中できなかった。頭いい2人が頭悪い2人に教え、俺と永嶺は自習って感じだったからそこまで支障はなかったけれど。まぁ永嶺は眠いと言ってずっと寝ていたが。

昼休みが終わると一日目の午後の部が始まる。そしてそれは前に遠井先生が言っていたグループワーク、野外行動らしい。各クラス全員を一回集め、一枚の紙を渡された。それはどうやら指示書のようでそこに書いてあるお題をクリアするという感じ。

てなわけで早速その紙を見てみる。

『分野:一般常識 合宿の域地内に自生している食べられることができる植物を7つ持ってくること。』

一般常識かこれ?どちらか言えば高校では習わない家庭科か理科だろ。もしくはサバイバル術。しかし想像の斜め上を来たな。他の班はどうなんだろうか、と周りを見渡すもどこも情報の交換はせずにそそくさその指示書の内容に動いた。少なくても今は情報交換せずに動いたほうが得策と考えたのだろう。

「よし、とりあえず行くか。」

「「「......」」」

誰か反応しろや。

「あはは......じゃあみんな、頑張っていこう!!」

「「「おー!」」」

こういう役はやっぱり梶山なんだよなー。知ってたけど。


一応このグループワークの難易度はどこも同じくらいらしく、例えば一つのチームが5分で終わって別のチームが5時間かかるようにはなっていないらしい。そして一つのお題が終わったらまた別のお題をやり、それを18時までやる。こなした課題の数が好成績になることは自明なのでみんな必死になっている。俺らもとりあえず植物がたくさん生えている場所へ向かう。

「みんなの中に植物に詳しい人とかいるかな?」

梶山の言葉に声を上げたのは意外にも鏡石だった。

「はーい!!確かなーちゃんて元園芸部だよね?だから一番詳しいのはなーちゃんだと思いまーす!!」

「そうなの?なーちゃん?」

「狐神君にそう言われるとなんだかな〜。ほんとに一瞬いただけだよ。だから過度な期待はしないでね。」

そうは言っても他の人もあまり知らなさそうだからどうしても頼りにはしたい。

「というか焼けば何でも食えるんじゃね?」

「じゃあ吉永は夾竹桃の直火焼きな。」

なんて言いつつもそれからは俺が取ったつくしとヨモギ、梶山のたんぽぽ、鏡石のシソ、永嶺のユキノシタとドクダミ、吉永のナズナを持ち帰った。まだ全然育っていないものなどもあったが食べられはするので問題なく次の課題へ挑戦する。


『分野:美術 風景画のデッサン』

近くに大きな川があるみたいだからその景色でも描こうと思ったが、そこまでの移動時間を考えると近場で済ましたほうがいいか。別にここだって山に囲まれてるわけだし見渡せばそれなりの景色がある。

「この時期は紅葉が綺麗だな。」

赤に黄色に黄緑に、どれとして同じ色合いがないのは自然の成せることだよな。心が洗われるようだ。

「でも問題は黒白でこれを表現しろってことだよな。」

とりあえずHBとかHとか3Bとか色んな濃さの鉛筆で描いてみるもイマイチだった。まぁ成績つけるなら3くらいはもらえるだろうしこんなんでいいか。別に手を込んでるわけではないが手を抜いているわけでもないし。

「なるほど。差異はありますがみなさんが真摯に取り込んだのは分かります。......しかし吉永君、課題はあくまで風景画なので人物よりも風景の方を大きく描いて欲しかったんですが。しかも誰ですかこれ。いや、とても上手ですけど。」

「いや、俺の目には見えたんすよ。この美しい風景を見て『綺麗だねっ!(わたる)君。』て笑う彼女が。」

そらすげぇわ。俺には何も見えなかった。


『分野:英語 自分の将来の夢とその為に今できること、という題で1人3分ほどの時間で発表』

将来に夢も希望もないし、何なら受験とか就活とか絶望しかないし、その為努力のしようもないし、なんなら英語もあんまりできる気しないし、みんなの前で発表とか地獄でしかないんですが。

でもここで強いのは鏡石だった。前に英語の先生が言っていたが、留学の時や外国の人と話す時、最も大切なことはとりあえず話せなくても話そうとすること、伝えようとすること。そうすれば相手も必死に聞いてくれる。コミュ力の塊の鏡石にとってそれは大きな力になった

「とりまIは、フューチャー、服、クロースをメイクするパーソンにwant to be。あ、メイクじゃなくて、あー、......ノーメイクノーデコる!いやデコじゃないか。アパレルって英語?まぁ何となくフィーリングで理解よろ!OK!?」

OKなわけねぇだろ。なんでお前うちの高校に入れたんだよ。入学後記憶喪失でもしたのか?ていうか半分以上日本語だし。最後の方こっちにフィーリングで理解しろってこっちに丸投げだし。なんで俺がこいつに突っ込み入れてるんだよ。

その後は梶山、牟田、永嶺と続き僅かな間ながら平穏が続いた。正直あまりに流暢すぎて聞こえないことも多々あったがいつかそんな風に話してみたいと思えるくらいかっこよかった。

悪夢再来。

「I love girls. Girls love me. I always watch them. They are happy. I am happy. I haven't seen nightmare. Serious black person doesn't see me with white eyes.」

いやいやいや普通に怖い。英語力なんてどうでもいいくらいに怖い。それ以上頭に入ってこない。何?「私は彼女たちが好きで彼女らも私が好き。いつも彼女らを見ていて彼女たちは幸せ。私は幸せ。怖い夢はもう見ない。真っ黒の人は私を白い目で見ない?」絶対これ追及したらダメな闇の深いやつだな。

そして俺の番。いい感じの文章も思いつかないので考えた先から言っていくことにした。

「あー......I don't have dream. Because I don't understand myself, what I like. what I want to do. But I have regreted since one day.That makes what piece of I am. If I could go back to the day, I would never let go of her hand.」

言ってて本当にあの日に戻れたのならと思った。そうすればきっとこんな嫌な性格じゃなくて、もっと真っ向から人を信じられた気がする。高校生活ももっと楽しいものになっただろう。冤罪、此方の秘密、そしてあの思い出の日々。その3つが今の歪んだ俺を作り出してしまった。

その後は何を言ったのかあまり覚えていない。けれど先生からOKがでたのであまり気にしなかった。何となく思ってはいたが、普段の先生なら嫌がらせと言わんばかりに俺への評価を悪くするだろう。今回それをしてこないのはきっと大鵠から何か言われたからからだろう。例えば「生徒の評価はあくまで等しくしてください」とか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 力作ですね! またゆっくり読ませていただきます^_^
2020/09/08 01:49 退会済み
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