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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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一泊二日の戦い 6

それから目的地に着くまでの間、散々太陽の事を聞かれた。やれ好きな物は何だの、理想の女の子はどんなだの、大した接点がないのにここまで好きになるのは正直すごいと思う。

「確かに徐々に内面を知って好きになるって言うのもいいと思うけど、外見を好きになってから内面を好きなってもいいと思う。」

本人曰くそうらしい。それには俺も珍しく同意。人を好きになる理由なんてそれこそ人それぞれだ。有利不利こそあるだろうが、もし必ず人を好きにさせる何かがあるのならみんなそれをやっているはずだと思う。

「じゃあ牟田は太陽が『めちゃくちゃ明るい子が好き』って言ったら明るくするのか?」

「……多分それなりにはすると思う。でも自分の限界以上はやらない。それで仲良くなっても長続きしないと思うし。」

なんというか、熱いと思ったら急に冷えたりするんだな。客観的に捉えられてるというか。いいのか悪いのかはよく分からないが。


なんだかんだそれまでの間、ずっと牟田と話していた。これなら班行動の時も少しは穏やかにできる気がした。

合宿場所に着いたのは8時頃。バスにいる中でお弁当を食べる時間があったからお腹はへってないが、何分眠い。

「ここが広場よ。全体招集の時はここに集りなさい。」

「これが教室として使うコテージ。各班分の席があるので確認しておくように。」

「ここが寝床となる小屋よ。ここは男子のエリアで向こうが女子よ。鍵も渡しておくので夜は閉めて寝るように。一応そこに呼び鈴があります。」

「ここが調理場よ。一クラス分の人数がまとめて調理できるスペースがあります。食卓となる机は向こうに。」

「ここがお風呂よ。各クラス20分の制限は知ってますよね。」

「携帯は休み時間以外はこっちで預からせてもらいます。」

「他にも色々ありますがあまり細かいことは教師は口出ししません。あなたたちももう子供じゃないです。その自覚をもって行動するように。分かりましたね?」

各クラスに分かれてそれぞれ担任から施設についての説明を受ける。最後は遠井先生から熱烈な視線を感じたが、何せ子どもだから意味なんて分かんない。でも色んな事に制限をつけるよりも、最低限のルールだけ決めて後は自由ってのは気楽でいいな。んで、とりあえずこの後は全員一回広場に集まった後、テストをしてみんなの実力を知ろうって感じか。まぁそこまで気負うことはないし気楽にやりますか。どうせ1日で何かが変わるとも思えないし。

そうして一度みんなが集まり学年主任から言葉をもらう。正直眠くてろくに聞いちゃいないけど問題ないだろ。大きな欠伸を手のひらで隠しながらする。

「ちゃんと話は聞かないとだめだよ、狐神君。」

名指しで注意されるとちょっと焦る。

「え、あぁ......すみませ......え?」

......違う。うちの学年主任はそんな優しい口調じゃない。それにこの聞いただけでも何となく不安になる声は.....。

「なん……で、ここに?」

先生たちは驚愕の顔を浮かべ、ほとんどの生徒はポカンとしている。それはそうだ、ここにいるのは先生たちと一年生のみなのだから。

「ほとんどの皆様初めまして!二年の大鵠と言います!」


大鵠はいつもの制服とは違い、上下黒い格好をしていた。そしてそれは朝に取った心霊写真の人物と一致していることに気付いた。

「まぁなんで二年生の俺がここにいるのって話からしようか。実は今度の生徒会選挙に出馬しようと思ってね。あまり関わりのない一年生に認知してもらおうと思ったんだ。」

確かにここなら一年生はもれなく全員集まっているし、大鵠を嫌う3年もいない。けれどいくら最低人数しかいないとは言え先生は止めに入る。

「おい大鵠!お前ここで何してる!またお前問題を......」

「......どうしたんですか先生?最後の方の声が小さくて聞こえないんですけど。」

言えるはずがない。二年も三年も先生たちも俺らの代には『学年全面戦争』の事はずっと秘匿事項にしてきた。ここでそれを言っては全てが水の泡だ。

押し黙る先生に柔らかな笑顔を向ける大鵠。けれどその目はまるで『余計な茶々入れんじゃねぇよ』と言っているようだった。

「今日は授業という訳ではありませんし、休日俺がどこで何してようが勝手でしょう。でも可愛い一年生の邪魔をする気なんて全くないです。迷惑をかけるつもりなんて勿論ありませんし、寧ろ少しでもいい思い出になるように一つの魅力的な提案をさせていただきたく思ってここに立ちました。」

先生たちが何も言わないのを確認すると改めて一年生の方を向く。

「丁度去年、私たち二年もこのイベントをやりました。キャンプみたいでそれなりに楽しかったです。でも正直勉強合宿なんて名ばかりでほとんどの生徒が成績は上がりませんでした。先生の本懐は全く達成されませんでした。でもしょうがないですよね、伝統を変えるのってめんどくさいですから。給料が上がる訳でもありませんし。」

先生たちの様子から去年のそれはどうやら本当らしい。正直俺も気楽にやろうなんて考えて全く成績を上げようなんて考えてなかった。そしてそう思うのは俺以外にも少なくないはず。

「てなわけで、今回、各クラス最も評価の良かったグループにご褒美を設けました!ちなみに校長から許可も下りてるので安心してください。」

そういって領さんの直筆の書類を見せる。正直この意見は理に適っているから領さんも許可せざるを得なかったのだろう。


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