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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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一泊二日の戦い 3

「きっと警備員とかだろ。」

「いやさすがにこんな早くには来ないでしょ。」

いんだよそういうことにしておかなきゃマジモンが映っちゃたってことになるじゃないか。こういうのは早めに消すに限る。削除。

「……ていうかさ、なんであんたと涼原君が仲良いの?絶対合わなそう。お金でも渡してるの?」

「失礼な。俺と太陽は清く健全な付き合いだ。そのようなやましい関係ではない。……でもそうだな、暇つぶしがてら俺とあいつの出会いでも聞くか?」

「つまらなかったら?」

ホント失礼だなこいつ。

「太陽の連絡先教えるくらいならいいよ。」

「じゃあつまんない。」

この女……。

でも過去の太陽に興味はあるらしく、俺を見て「早く話せ」と言わんばかり。このまま見つめ合っていても恋も何も始まらないので在りし日々を思い返し口を開く。


付き合いは小学生の頃からあった。それなりに仲は良かったが、あいつはあの性格ゆえ友達は俺なんかよりずっと多くいた。別にその事を何とも思っていなかったし、たまに話すくらいの距離感も悪くなかった。

「バスケ部?」

太陽がバスケ部に入ってからは会うことはめっきり減ったが、それでもこの時代、メールでも何でも繋がることはいつだってできる。だから仲の良さは良くも悪くもあまり変わらなかった。


しかし良いか悪いか、俺らの関係は一つの事で大きく変わった。因みにこれから先の話は牟田には話していない。全て知っているのはごく一部の人間。そしてこの話は前にシュパリュを拾った件についてそこで繋がる。つまり中学三年生の終わり、高校入学前の僅かな期間に起きた話。


「ほー、すげぇな。あそこの高校てめちゃくちゃ頭いいとこだろ?はぁー、てーしたもんだ。」

「まぁ……母さん喜ばせたかったからな。」

「……そっか。そうだったな。俺なんか全然頭良かないからまぁまぁバスケが強いとこで妥協しちゃったぜ。」

「人生なんて妥協の連続だろ。」

「それな。」

試験も終わり、合格通知も受け取り、後は卒業式を待つのみになった俺と太陽は体育館でバスケをしていた。勿論遊ばれる一方だったが。

「そういやお前の他にももう1人、そこの高校に合格決まった奴がいたぞ。」

「そうなん?え、誰?今のうちに仲良くしときたい。」

同じ中学の人がいれば入学してすぐぼっちということはない。それにみんなが一人で不安がっている中、二人で話していればきっとそこにみんな集まってくる。そこから一気に関係を広げられる。よし、これなら勝てる。

「確か斑咬って言ったっけな?」


翌日、気分が高ぶった状態でその斑咬というやつに会いにいった。そいつは教室の隅で受験が終わったにも関わらず教科書を広げていた。

「よっ。お前が斑咬か?」

「ん?ああ、狐神か。まともに話すのは初めてだな。」

……そうだよな?多分初めて話すのによく俺の名前を知ってたな。なんか関わるようなことあったっけか。

「何せあの高校に受かったのは俺とお前だけだからな。」

「あー、そういう事か、納得。確かに俺ら以外にも何人か受けてたけど受かったのは俺らだけだもんな。」

「……お前も落ちとけよ。」

「……え?」

「場所を変えようぜ。」

俺の反応など全く気にも留めず教室から出ていった。正直全く理解が追いつかないがとりあえずついて行くことにした。外を見ると真っ黒の雲が徐々に近づいてきていた。

空き教室を適当に探すとズカズカと入り、俺もそれに続く。そして斑咬みは扉の鍵を閉めると机に座り脚を交差させる。表情から察するに何かお怒りのようだが……。

「えっと、なんか俺、お前の迷惑になるようなことしちゃったか?」

なんで初対面でこんなに下から出なくちゃいけないか。

「あの学校さ、普通に入学難しいじゃないか?だから先生からも大いに褒められたよ。『長年あそこに入学できる生徒はいなかったのに、今年は2人もうちから入れるなんてすごい。』って。」

……なーんとなく何が言いたいかは分かった。けれどそれだけでこんなあからさまに嫌な態度取られるのはさすがに酷いと思う。

すると今度はにやけた顔になる。表情豊かだこと。

「お前って俺と同じ小学校だよな?」

「......すまん、正直全く覚えてない。」

「まぁ関わったことなんかほとんどなかったからな。俺が一方的に知ってるだけだ。」

「すまん、話が見えてこないんだが。」

別に挑発とか全然そんなことした気はないが、相手はどうやら気を悪くしたらしく、近場にあった椅子を蹴り飛ばした。

「......お前さ、人殺しの妹居るんだってな。」

......は?何でこいつがそのことを知っているんだ。あの事知ってるのはあの時居合わせた委員会の連中だけだろ。そいつらにも口止めはしたはず......。いや、その前か。

「委員会の中にお前の母親がいたってことか。」

「察しがよくて助かるぜ。嫌いになった奴のこんなおいしい弱点、有効活用しないわけないよな。マジでウケるぜ。......そう怖い顔すんなよ。」

「何が目的だ?」

「正直あの高校への入学を辞退しろ、ってのはあったが今となってはもう遅いからいいや。今更入学を取り消したほうがかえって怪しまれそうだし。普通にその妹の事バラしてもつまらないしな。……あ、そうだ。お前の一番の親友って誰だ?」

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