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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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一泊二日の戦い 2

「とりあえず行動班の決め方として先に男女それぞれ3人ずつ組んで、くじ引きで合わせればいいよね。」

今度は絹綿がそう言ってみんながまたざわつき始める。とは言っても大体は就寝班の6人を半々に分ければいいだけだからあまり時間はかからなそう。

「えっと、じゃあ半々で……」

「うん……。」

「だな……。」

「……。」

「適当に決めといて。」

……。

「えっと、じゃあここで分けるでいい?」

「まぁ……うん。」

「だな……。」

「……。」

「報告行ってきて。」

なんですか通夜ですか?みんなパーティーやってる中なんでここだけ葬式でもしてんですか?

そんなわけで俺が独断と偏見で少しは話せそうな2人、梶山と吉永をメンバーにした。正直他の3人はマジで扱いきれる自信が無い。というかほんとにこのイベントに来るのかすら怪しいわ。


そうして行動班の男女メンバーがそれぞれ決まった。あとはくじ引きでどこのグループがどことくっつくかというのみ。まるで合コンみたいだな、なんて思いつつ周りを伺ってみる。

やはり梶山の人気は高く、至る所から視線を感じる。けれど梶山につくハッピーセットというかアンハッピーセットがいらなさすぎると視線も感じる。何となく分かってはいたけどね。というかくじ引きなんだからそんな熱烈な視線送られても何も変えられないだろ。

そんな熱い視線を受けながら梶山に訊いてみる。

「梶山、お前本当にこのグループでいいのか?お前なら絶対他のグループに入った方がリア充できると思うぞ。」

俺の声に吉永からも「まー、そうだな」と声がかかる。別に追い出したい訳では無い。ただ俺らのせいでなんの罪も無いこいつが楽しめないのは、さすがにどうかと思う。俺らにはちゃんとそれらしき理由があってこうなってる。けれどこいつはそんなものは一切ない。

「まぁそうかもね。……でも君たちといて、君たちだからこそ得られるものもあると思うんだ。」

「お前そういうところだぞ。」

「イケメンに限るってほんとクソだわ……」

「君たちのそういうところだと思うよ。」


そうこうしてる間に他の班決めはどんどんと決まっていき、やがて俺らの番となる。くじ引きには梶山が行った。

「狐神は誰とならマシとかあるのか?」

「特に害意をもたらさなければ誰でも。……ちなみに吉永は?」

「俺の最推しは画面の向こうだからなー。でもリアルはリアルで特有の良さがある。てなわけで可愛ければ誰でもOKだ。」

相変わらずよくそんなことが平然と言えるものだ。自称美少女オタクと豪語するのは伊達ではないな。好きなものにそんな一直線になれることはいい事だけれど。

そして向こうでは丁度梶山がボロ箱の中からクジを引いたところだった。書かれた数字を見て遠くから「マジ!?」と聞きたくもない声が聞こえてしまった。


「てなわけでよろー!鏡石椛だよー!!ってさすがに知ってるよね!!」

「あはは……存じております。」

うわこれ想像以上にキツイな。直接話すのは極力控えよ。ついていける気がしない。

鏡石に続いて「「よろしく」〜」と牟田と永嶺が言う。

3人中2人が関わりがあるのはまだ良かったと言うべきか。でも永嶺はともかく、牟田が鏡石と仲良いのは何となく意外だ。むしろ対極とまではいかなくても、地味子とギャル子ではあるだろうに。

「先に言っとくとさ、あたし頭悪いから多分だいぶ足引っ張ると思う。てか絶対引っ張るわ、だから先ごめんね!!」

見るからに頭悪そうなんて思ってはいないけど、足引っ張ったら今謝ろうとも許さん。甘えるな、まずそれなりの努力をしてからだろ。

「多分俺も引っ張るから気にすんな。」

心の中でならそう言える。

そんな発言を受けを吉永が机を叩く。

「お前らあんま舐めんなよ?いいか?前回のテストの最下位は俺だ。お前らとはレベルが違うんだよ。」

「もしかして吉永って想像よりよりアホな感じ?」


それから林間学校の間は特に大きなことはなく、当日を迎えた。


「ねっむ......」

何だよ朝5時集合て。まだ電車だって動き始めたぐらいだぞ。でもそう考えると車掌さんとか毎日このくらいの時間には働き始めてるんだよな。すごいな、ほんとご苦労様です。

此方には昨日の夜に林間学校に行くことを伝えてある。「そーなん?いってきー」と反応は冷たかったが、どこかそわそわしたように見えた。たまに家で夜一人っきりだとテンション上がるのは分かるけどな。

学校に着いてもようやく空が明るくなり始めたくらいで、なんだか夜の学校に来たみたいで俺も少しだけテンションが上がった。けれど時間ギリギリに来たのですぐにバスに入るよう言われる。

「やっぱり夜?の学校って結構雰囲気あるよな。」

何となく校舎の写真を一枚撮って太陽に送った。

「狐神君は何を撮ってるのかな~?」

「うわびくった.....誰?」

そこには見たことのない女子がいた。俺にそんな気さくに話しかけてくれる人極僅かだぞ。鶴とかノアとか水仙とか永嶺とか......。

「もしかして、永嶺?」

「そうだよ、髪型少し変えただけで分からなくなるなんてひどいな~。今日はイメチェンでポニーテールにしてみました。シュシュはピンクの水玉だよ~。」

「え...ああうん。......あ、かわいいかわいい。」

「な~にそのリアクション。どんだけ興味ないのさ。」

いや、そうじゃなくて。なんだろ……なんかそれ以外にもなんか違和感があるような?


バスの席は窓側で、隣には牟田が座った。

「いやなんでや。」

「私だって不本意よ。でも椛が絶対こっちの方が楽しいからって。そりゃあ梶山君の隣になれたからね。」

てことは永嶺と吉永か。何だかコメントに困るペアだな。

しかしこれは困った。何せ話題がない。いやそりゃあないことはないだろうが。

ピロリン!

通知が来たということは、朝練はこんな時間から始まるのだろうか。太陽も忙しいな。

『なんか左下辺りに人影が映ってないか?』

「え……?」

「何よ。そんな声出し……てそれ、涼原君から?へー……いいなぁ。」

うるせぇ俺の太陽は渡さないぞ。てか太陽もそんな俺を怖がらせようたって……。

まっさかー、と思いつつ言われた箇所をゆっくり見てみる。

「ねぇ、なんかそれ……映ってない?」

映ってますね、はい。人影、ありますね。

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