一泊二日の戦い
「……軽蔑、しないんですか?」
質問しておいて答えを聞くのが少し怖かった。けれど瀬田会長はなんの躊躇いもなかった。
「ノアと同じ考えだ。それ以上は何も思わん。だから変に罪悪感感じないで……っつーのは難しいかもしれないが、あんま気にすんな。」
きっと俺の性格上、というか大体の人はそんなキッパリと感情を分けられないと思う。それでも次の生徒会が決まるまではできる限り頑張ろう。背中を押してくれたみんなの為にも。
「というかお前、生徒会来なかったろ。一応裏切るとはいえメンバーなんだからちゃんと来て働け。」
「え、でも、そしたらみんなの動きが俺を通して筒抜けになっちゃうんじゃあ……」
「上等だ。少なくても大鵠の全てを受けきってから倒さないと、きっとあいつは諦めはしないさ。」
それを受けきって、大鵠を倒すのは誰だって話だけどな。……そういや前にノアと禦王殘は生徒会長になりたいみたいなこと言ってたな。それで一回会長ともドンパチやったとか鶴が言ってたな。ていうと次期会長はそのどっちかってことだよな、どっちだろう。
「ま、たかがお前に行動を見られたところでってのもあるが。」
「傷つきました。」
その日の放課後からまた生徒会に顔を出し始めた。けれど大鵠の方にも足をきちんと運び、生徒会の動きの報告をした。やはり罪悪感は大きくあったが、手を抜くことは無かった。
それから少し経った頃、一年生だけの特別なイベントが差し迫った。テストは除くが、年内のイベントは通常これが最後。しかし今回は特別に生徒会選挙がある。まぁ何があるかというと……。
「林間学校、ね……。」
1泊2日の勉強集中合宿。一応名前のある通り勉強のための合宿だが、どうやらキャンプみたいな感じらしい。どうでもいい情報を伝えると、ここで結構数のカップルが生まれるらしい。そして1ヶ月の月日を経てクリスマスにゴールするとか何とか。ゴールってつまり終わりってことだから破局ってことですよねわかります。
そんなわけでしおりが配られ、その中に書いてある事を簡単に遠井先生から伝えられる。その内容に特に際立ったことはなく、想像した通りと言った感じ。正直俺は退屈だったが、クラスの連中はうずうずしてるように見えた。まぁ何となくその理由は分かるが。
「……とまぁそんな感じかしら。あと決めなくちゃいけないのは行動班、就寝班各6人、行動班は男女3人ずつ、就寝班は同性で6人ずつだけれど……。決め方はみんなに任せるわ。」
その言葉を待ってましたと言わんばかりにみんなが一気に活気づく。確か去年は頭のかったい先生のせいでそこらへんは全て勝手に決められてたそう。それで十分には楽しめなかったそうな。みんなそれを危惧していたらしい。
とはいえこのままみんなが好き勝手にしては話し合いが進まない。その為学級委員である坂上楼と絹綿が前に出て進行を務めた。初めて絹綿が学級委員だったことが意外だったが確か女子の方は立候補ではなく話し合いによって決まったことを思い出す。
「ではまず就寝班から決める。男女それぞれ教室の左右に集まって話し合って。」
坂上の指示により男女別に話し合いが始まった。坂上と絹綿は変わらず前に立ち、決まったグループの名前を紙に書いていた。話し合いに参加しなくてもすでにグループに入ることが決まっている人は羨ましい限り。
そうして10分ぐらいが経った頃、俺としてはもっと時間がかかると思っていたが無事話し合いは終わった。なんというか、嫌われ者や疎まれ者が集まったようなメンバーになった。まぁ、当然と言えば当然の結果か。一人を除いて。
「......で、最後の班が狐神、吉永、小淵、村上、羽鳥、梶山。了解。」
梶山がこのグループに入るとなった時、それはもうほぼ全員が止めに入った。確かに梶山はクラスではすごい人気者だが、性根から判断して俺らのとこで妥当だと思う。それに「じゃあ代わりに誰が入る?」となれば法案改正レベルで話は長くなるだろう。仲間は助けたい、でも自分が代わりになるのは嫌。至極当然の考えだ。
まぁそんなわけで通称、美少女オタク吉永、我田引水小淵、鳥頭馬顔の村上、ガチ陰キャ羽鳥、みんな大好き(一部例外)梶山、とりあえず死ねよ狐神の6人衆ができた。濃いなぁ。
けれどこれはまだ前半戦。むしろここからがみんなのドキドキワクワクだった。そりゃあ確かにこの年齢で異性と一日の大半を過ごすんだ。期待するなという方が無理だろう。しかもうちのクラスは顔面偏差値の高い連中が多くいるからな。
「行動班は基本一日一緒にいる。朝食から夕食まで。勉強で一緒なのは勿論、ご飯を作るのもだ。」
そういえばしおりにあまり目を通してないからか、違和感があった。行動班て言っているが勉強合宿にそんなものが必要なのか?ご飯を作って食べるだけならご飯班とかでも良くないか?略してご班。
そんな疑問は俺だけではないらしく、他の生徒が遠井先生に質問をした。
「この合宿では普段できないような勉強を多くします。むしろいつもやっているようなものではなく、詳細は話せませんが、グループワークや野外での活動もあります。」
なるほど、それで行動班てわけか。