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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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令狐策の見た夢

「そっちはどうだ、鶴?」

「......こっちに特に異常はないよ。でも隠し持ってるとは思う。」

「やっぱりか、口でああ言いつつも、あんな嘘バレないと思ってるのか。あ、こっちのターゲット動いたからまた後で。」


バレンタイン2日前、俺はとある相談を受けていた。

「貓俣と喧嘩した、と。」

別に傍から見たらそれは日常的だと思うが。たまに2人が一緒にいるところ見ても大体口喧嘩してるし。

「いや、まぁ確かに軽い口喧嘩自体はもう何遍したか分かんないんだが、なんて言うか、いつもと様子が違ったっていうか。」


どうやらその日も戌亥と貓俣は2人で仲良く帰っていたらしい。話を聞いている限り、誰か周りにいないと2人も口喧嘩はそんなにしないように聞こえた。

「にしても狐神がまた前みたいになってよかったな。」

「......学校ではよくないと思ってる生徒が多く占めると思うけどね。でも私も前の彼に戻ってくれてよかった。今度一緒に遊びたいわね、なんかこう.....おめでとう会?みたいな?」

「何がおめでとうなのかはわからないが、まぁいいかもな。」

貓俣がなんとなくいつもと様子が違うようにも見えたが、そこはあえて突っ込むことはしなかった。

「それでなんだけど......もうすぐバレンタインじゃない?」

その言葉でなんとなく様子が違う理由が分かった。仮にも貓俣も女子高生。そういった催し事、特に女性にとって特に重要なその日について、思うところがあったのだろう。

「あぁ、そうだな。相手でもいるのか?」

「え!?えっとね......まぁあんたには例年あげてるから、今年もまた欲しいって言うなら、作ってあげないこともないけど。」

その言い回しに若干イラっとしつつも、なんだかんだ小さい頃から毎年欠かさず送ってくれる。例え当日風邪で休んでしまったとしても、わざわざ家に見舞いまで来て置いて行ってくれたほどだ。必死に隠していた気持ちを押さえつける。

だが反対の感情として、ずっとこのままでもいいのかとも考えた。俺たちの関係はずっと変わっていない。それこそ現在の関係性が良くも悪くも変わることなど十分に有り得る。狐神だって、この一年で目覚ましい活躍をしている。鶴のことを助けたことを伽藍堂から聞いた。もし貓俣にあんなことがあったら、多分、いや、間違いなく俺なんかより狐神を選ぶだろう。いつまでも変わらないでいられるなんて俺の願望だ。いい加減この腐れ縁という関係も終わらせないと。まずはこの毎年惰性的にもらってしまっているバレンタインを『幼馴染だから』ではなく、『大切な相手として』に切り替えていかないと

「いや、もうそういうのはいい。」


「態度変わって当たり前だろ。」

「いや、一応まだ話終わってないんだが......」

一応その後も話を聞いたが、思った通りそこから貓俣の態度が変わって、そこから今までずっと話もしてくれないという。......まぁあれだろうか、あまりに今までが近すぎていたせいで、というのはあるのだろう。多分俺が月下氷人のように振舞えば、割とすぐに解決する問題だろう。

「けどなー......」

「何だ?」

これは多分2人で乗り越えたほうがいいような気もするんだよな。何というか、俺の勝手な解釈だけど、誰かの手助けがあって平和的に手に入れたものと、2人がぶつかってでも得たものだと価値が変わってくると思う。俺は2人にそれを乗り越えてほしいと思ってる。

「とりあえず戌亥が悪い。」

「......悔しいが多分そうなんだとは思う。でも原因が何かよく分からないんだよな。女子ってあれだろ?特に理由が分からないで謝られると更に怒るだろ?」

別に女子に限った話じゃないと思うけどな。俺も多分形だけ謝られてもあんまりいい気しないし。

しかしバレンタインまではあと2日しかない。あんまり部外者が手を出すのは違うとは思うが、アドバイスなしだと、折角年に一度のこのチャンスを逃すことになる。彦星と織姫というわけでもないが、これを使わない手はない。

「......戌亥が貓俣のことが大好きで、「ゲホゲホ!?」幼馴染から恋人に「ゲホゲホ!?」延いてはそれ以上の関係になりたい「そこまでは思ってねぇよ!?」とりあえずそんな感じの気持ちなのは分かった。」

「本当に分かってんのか?」

溢したお茶を丁寧に拭いていく。

「勿論その気持ちが間違っているなんて思わないし、俺もそれはぜひ応援していきたい。でも貓俣が同じ気持ちかどうかは別問題だもんな。」

これが所謂両片思いというものなのだろうか。傍から見れば『とっとと告れよ』という話だが、本人たちからしてみれば、きっとすごい怖いことなのだろう。成功しても失敗しても、少なくても今のような関係には戻れない。破局した後の『関係崩壊後の関係』と定義づけられた研究では、外国では6割程、内向的なこの国では4割以上の人間が何らかの形でも関係を持ち続けているという。ここから考えると、例え告白を失敗したとしても、そこで終わりになる可能性は一際高いというわけではない。とはいえデータはデータ、あくまで参考にしかならない。

「あれですかね、男を見せる時なんですかね。」

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