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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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英雄と槃特の境界線 12

「......作戦第二弾、甘いお菓子でとりあえず「ねぇ鶴、鶴の作戦見たけどさ、それ彼女との仲直りの仕方じゃない?しかもそれネットで叩かれまくってたけど。そもそも京は彼女じゃないし。」」

「......」

黙るんじゃないよ。ネットリテラシーを家でもちょっと教えておくか。

「まぁ俺も女性の気持ちを汲むことは苦手だから何とも言えないけどさ、多分そういった特別な何かをしてあげるよりも、普通に謝って元の関係に戻すとかでいいんじゃないの?」

「......でもそれじゃあ盛り上がりにかけちゃうよ?」

「......俺は別に恋愛リアリティーショーしてるわけじゃないからな?ああいった番組で一体何人の人が自殺したか、そしてその何倍の人が『本当に死にたい』って考えたのか、この機によく勉強しておくように。」

白花が芸能界で働くにあたってそこらへんも調べたけど、特にああいった番組だけには白花は出しちゃいけないと思った。男性を全員かっさらうんじゃないかという不安もあるし、それで女性から恨まれるのも当然だし、そこから血生臭いことが本気で起きてしまわないかということも十分に考えられた。......けれど一番怖いネットでの誹謗中傷。顔の見えない誰かが、いったい誰目線で一切容赦のない言葉を突き刺してくる。そしてそれを正義だなんて思ってる人間すらいる。現代の闇といってなんら差支えのないものだ。このテレビという文化が若干退廃的になっている中、そこまでのリスクを負ってまですることなのだろうか。

「......じゃあ、一緒にお昼とか誘うとか?」

そういうのでいいんだよ、そういうので。


「嫌。」

「そこをなんとか。」

「やだ。」

「といいつつも?」

「しつこいよ?」

そもそもお昼を一緒に食べる好感度がないって言ってるだろうが。にしても、言葉こそ小さかったけどしっかりとした否定だったな。より心が痛む。周りにいる女子も「とっとと失せろ」と言わんばかりの目だし。けれどここで下がっては結局より気まずくなるだけ。もう少しだけ頑張ってみよう。確か相手のことをさりげなく褒めてみるってのも有効打と見たことがある。

「じゃあ最後に一つだけ。」

「?」

「.....お前、よく見ると可愛いんだな。」


「......鶴、俺はもうダメかもしれない。」

「......もし本当にダメになっちゃったら、私が責任を取るよ?」

「ありがとう。もしかしたらお世話になるかも。」

というか俺って京とどうやって距離詰めたっけ。1年前のことだから正直あんまり覚えていないんだよな。やっぱ普通に接するのが正解なのかな。でもそれだと反省の色がまるで見えないって話だし。

とりあえず今日は作戦会議も兼ねながら、空き教室で鶴と一緒にご飯を食べた。どうせならと兜狩も誘ったのだが、生徒会で少し仕事が残っているということでそっちに行った。もしかしたら俺がまだ生徒会にいればその負担も少しは肩代わりできたのではにないかとも考えたりした。

「いっそご飯を持ってってみよっかな。料理は俺の数少ない武器の一つだし。」

「......でも聞いた話、仲のいい子に料理が上手な人がいるんだよね?確か生徒会の時に視察に行ったときに狐神君と仲良くしてた人。」

そうじゃん。水仙からよく「味見お願いしてもいい?」ってめちゃくちゃ美味しそうなもの食べさせてもらってるじゃん。流石に水仙相手に料理で勝てないことはあのパンケーキでよく分かったし。

そんなことを話しているとあっという間に昼休みを終える予鈴がが響いた。やはり友達と一緒に食べるご飯は美味しく感じる気がする。

「......まぁ一回振られたくらいで諦めるほど、俺の京の想いは淡くないよ。ちょっと家に帰ったらぐったりしてるかもしれないけど、その時はちょっと迷惑かけちゃうかも。」

お弁当を片して席を立つ。やっぱこういうのは変にかっこつけるよりもありのままをぶつけるのがいいのかな。

「今日帰るの少し遅くなるかも。」

「......うん、がんばってね。」


「何卒、どうか、お願いします。」

「気持ち悪いんだよ!」「死ね!」「変態!」「ブサイクが!」「調子乗んな!」「殺すぞ!」「帰れ!」「ウジ虫が!」「ゴミ!」「近寄んな!」

一聞かれたら十返せというのは、春風さんから大学の論文発表で聞いたことはあるが、こんな中身のうっすい返事が返ってくるとは。しかも返事してるの全部周りの取り巻きだし。色々言われたが、俺が聞きたいのはあくまで京の返事一つであって周りの言葉はどうでもいい。かくいう京も周りの人も殺気立っているからか、なかなか言葉が出てこない様子。また一度引くべきか、もう一度突っ込んでみるか、難しいところだな。

「第一に『理由は説明できないけど、とりあえずごめんなさい』って舐めてんのか!?」

「ほんとそれ。......いや、舐めてはないが。「ふざけんな!!」」

気付くと事態はそれなりに大きくなってしまっていたらしく、後ろから生徒会役員としてきた兜狩に肩を叩かれるまで気付かなかった。

「怯える女子に無理やり迫る人間がいると聞いたんだが......」

「そうか、物騒な世の中になったものだな。「とにかくこっち来い。」」

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