表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
574/594

英雄と槃特の境界線 7

しかし裏でまだこいつがそんなことを企てていたなんて思ってなかった。姫がこいつの何に気付いて禦王殘と一緒に止めてくれたのかはわからないけど、感謝することがまた増えたな。風紀委員の直轄に属するほど危険視されているのであれば、俺にトドメを刺すというのも文字通りの可能性もあったのだろうか。であれば、一緒にこれから行動する時には注意しておかなければ。仮にも禦王殘の家に連ねる者。注意しすぎるくらいでちょうどいいか。


翌日、早速仕事ということで7時半に校門前に集合していた。死ぬほど眠い。仕事としてはよくある朝の声かけ運動的な感じだが、俺も見ていたからわかるが、これはどちらかといえば見せしめに近いものだ。俺や一藤のように何か悪いことをした人間をこうして朝登校する生徒に見せつける。そうすることで『自分はこうならないように注意しなくちゃ』と思わせる。まぁ実際その効果があることは事実だし、教師の手を煩わせることもないし、普通の説教よりも精神的にダメージはくるし、一石三鳥くらいの効果はあるのだろうな。

「おはよーございまーす」

「おはようございます」

一応俺も一藤も熱心にというわけでは全くないが、特に問題なく声掛けを行っていった。早い時間には人は(まば)らで、1人1人に声を掛けていったが、わかってはいたが俺らを知る人間からしてみれば、なかなか朝から刺激の強いものを見せてしまったらしい。皆さんのお目目が一気にかっぴらくのが分かった。明らかに目を逸らす者や遠回りする者、風紀委員に知り合いがいる者は「なんでこいつがいるの」と聞いている人もいた。本来俺冤罪の時に今回のような対応を取られるべきだったらしいのだが、流石に事態が犯罪の可能性もある以上、例外として扱われていたらしい。俺としては既に終わったことだから構わないけれど。

「あ」

「ん?どうされました狐神君?おや、あれはあなたのクラスの京さんですね。確かおっかなびっくりの態度でいろんな男子から庇護欲を嗅ぐわせているとお聞きしましたが、あなたには随分と態度が違うように見えますね。さては今回の件で彼女にも何かしたのですか?悪い男の子ですね~、あんないかにも強く出れなさそうな女の子にも手を出すなんて。」

俺の挨拶に一応「おはようございます」と小さな声は聞こえたが、勿論その声は怒っていた。無視をされなかっただけマシではあるが、どうやって今後付き合っていったらいいものか。

しかしここで一藤が余計なこととして京に声を掛けた。普通の男子生徒ですら苦手意識があるだろうに、ほとんど面識がない頬には大きな怪我のある男、しかもなぜかそれでニコニコ笑っており、風紀委員の監視下に置かれているため問題児であることは確実。案の定京は声を掛けられるとすごいビビっていた。

「初めまして、私一藤と言います。狐神君とは合縁奇縁と言いますか、たまたま問題を起こしてしまってこうして一緒におります。まぁそんな話はおいておいて、ちょっと気になっていることがあるんです。」

ここでさらに京に詰め寄る。勿論京は嫌な顔をするがそんなものはお構いなしに。またタイミングを見計らったのもあって、風紀委員は一藤が誰かと話しているのは確認しているが、誰と話しているのかまでは、背中越しまでは見えていなかった。

「狐神さんはこれまでたくさんの善行を行ってきたと思います。冤罪にも負けず、何人もの生徒を助けたと言えるでしょう。それをなぜたった一度の失敗でそこまで嫌うのですか?いえ失敬、失敗ではないですね、私からしてみれば正当な反撃だと思いますよ。しかもあなたの性格上、直接何かする人間ではなく、周りで楽しむタイプですよね?」

「......楽しんでなんて「あぁ失礼、正直それは割とどうでもいいんですよ。あなたが当時どう感じていた

なんて知りようがないですし、興味ないので。私が気になっているのは一つだけです。どうしてあなたが彼に怒っていて、彼が少しでも自責の念に駆られているのかなと。彼があなたに何かしました?きっとしてないですよね。彼の優しさならきっとあなたの方がよく知っているでしょう。今もこうしてまるで悪漢に迫られて被害者ぶって、私はただあなたに質問しているだけですのに、泣きそうになって、彼に助けてもらえないかと思っている。......よかったですね、たまたまいい顔に生まれて。」


「てっきりあなたがまた助けるかと思ったのですが。」

俺はそんな救世主的な存在じゃない。嫌な態度一つ取られたら俺だって頭にくることもある。けどそれとは関係なしに一藤が京に近づいたところで止めるつもりはなかった。

「お前は京に全く興味ないだろ。だからぱっと見で分かるような浅いことしか言わないのは分かる。それよりも、俺がまた変な正義感掲げて割り込むことをお前は望んでいただろ。」

「それでも、彼女は傷つきましたよ?」

「......俺はあんまり分からない世界だがな、あいつもそれなりに苦しんできたらしい。それは本人から聞いたこともあるし、実際に見たこともあった。......俺が京を助けなかった理由の一番は、多少の悪口くらいなら、あいつは耐えられると確証があったからだ。」

そんな会話を見ていた金木は、無為に生徒を怖がらせた一藤、それを見ていたにも関わらず止めなかった俺に反省文の提出をするよう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ