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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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英雄と槃特の境界線 6

とりあえず一週間、学校が始まってから色々と様子を見て回ったが、クラス内外共に俺の悪評は広く散在していた。それどころか、1年生たちにも部活や委員会の2年、3年生を通してよくない噂が流れていた。つまり『狐神とかいうヤバいやつがいる』とまた静まった水面に波が出てきてしまった。冤罪が出てきたあの時と同じようなことがまた起き始めたということ。

「でも別にいいか。」

そう思える理由として、今回俺は鶴を助けるがために事を起こした。少なくてもそれは私利私欲のためじゃないし、それで鶴が救われたのであれば、それを後悔なんてするはずもない。そしてもう一つがリーダーたち一部、梶山などのクラスの一部は今回の件があっても俺のことを信じて接してくれている。そういう人は多分もうちょっといるような気もするし、今の人数だけでも十分。てなわけで俺は今思ったよりも落ち込んでいるわけじゃなかった。

そんな俺に声を掛ける人がいた。名前は何と言ったか、正直覚えてはいなかった。

「狐神、少し時間いいか?」

「確か風紀員の会長さん、だったか。」

現状問題まみれの俺が呼ばれる理由はあるとは思う。でもこうして直接話すのは初めてな気もする。冤罪の時を思い出してみても、風紀委員が出てくるなんてなかったがどうして今になって。生徒会の時は、生徒会の一員として、関わりはあったが、それを抜けた俺にとってはもう関係ないはず。ということは、やはり粛清対象として声を掛けられたと受け取っていいだろう。

「一応、私は金木(かねき)(さとし)という。用件というのは、校長などからはもう前のように暴れるようなことはないと話していたがな。勿論それを鵜呑みにはできないということで、2週間風紀委員の一員として働いてもらう。ちなみにこれに関しては校長の許可も得ている。」

まぁあれだけ人様に迷惑かけておいて何もなしというわけにはいかないか。にしても、俺は生徒会にももう所属していないし、学校ではみんなに比べて暇人ということにはなるが、それでもいきなりな話だな。

「勿論狐神にも事情はあるだろう。それを考慮したうえで、可能な限り働いてもらえると助かる。給料などいったものは学校として出ないが、簡単な茶菓子などは出させてもらう。またそれでも足りない場合、経費で落ちるものであれば上申を上げることもできる。」

「結構ホワイトだな。」

「先生たち曰く、我々の仕事は給与が与えられるべき仕事だと判断している。それでも等価としてお金を渡すことができないせめてもの見返りだそうだ。」

生徒会の仕事も勿論大変だが、風紀委員の仕事も大変と聞く。朝早くから学校に向かい、登校する生徒の声掛け、衣服が乱れている生徒や装飾が派手な生徒がいれば声掛け、その際に文句も言われるだろう。それにも耐えなければならない。そして昼休みなどにも、問題が起きたら向かわなければならず、放課後もまた然り。

「......俺も今回の件に関しては何の言い逃れなんてしない。2週間風紀委員に身を置いて仕事をすることでいいのならそれに従うよ。」

「そう言ってもらえて助かる。従わなかった場合のマニュアルを実行せずに済む。」

逆にそのマニュアルではどんな対応をするのかも気にはなったが、それ以上に金木の後ろに立つ人物が気になった。俺かこの金木という人に用事でもあるにだろうか。いずれにしても嫌な予感がするな。

「......あぁ、紹介が遅れたな。とはいってももう面識はあったんだよな。狐神と同じ、要監視対象である一藤だ。」

随分と懐かしい顔が出てきたものだな。


その後の流れとして、風紀委員会の部屋に行き、今後の日程を立てた。俺は基本バイト以外の日は参加できるため、それだけ考慮してもらった。少しは反感を買うかなとも思ったが、「了解した、じゃあこれらの日以外は大丈夫ってことだな」とあっさりしたものだった。

そして気になる一藤の方だが、こっちもいくつか入れない日があったが、それでもきちんと日程は空けていた。あと本人で気になる点として、頬に思いっきりぶん殴られたであろう痕が見えた。それだけで大体何をしたのかは予想がつくな。

「お久しぶりですね狐神君。あれから色々とあなたのお話は聞き及んでいましたよ。随分と楽しそうな青春を送っているようで、いや今はもう送っていたの方が正しいですかね、こうして私と同じように監視対象として置かれてしまっているのですから。どうして私がここにいるのかという経緯をあなたは知りたいんですよね、分かりますとも。この痛々しい頬を見てもらえれば分かるかと思いますけど、久しぶりに禦王殘君に手痛い罰を受けてしまいましてね。」

「だろうな。」

「私はただ心身が憔悴(しょうすい)しきったあなたにトドメを刺して、僅かに生まれた心の隙に入り込んで、禦王殘君に宿儺の名前を返上させようとしただけですのに。まぁ今回はあの姫崎とかいう人間が思ってた以上に気付くのが早くて阻止された結果になったんですけどね。足手まといでないことは2年生最初の段階で分かってはいましたが、あそこまで視野が広く注意深い人間がいると動きづらくてかないません。」

「......それ俺の前で言ってもいいの?」

「先ほども言ったように憔悴しているあなたならどうとでもなったかもしれないですが、冷静になったあなたでは、きっと彼の心の隙を生ませるほどのことはできませんから。」

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