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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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取り戻したもの、失ったもの 20

「簡単だよ。例えばAさんとBさんがいたとして、この2人が仲良くなくても、何かしら物事X、食べ物でも趣味でも人でもなんでもいいんだけど、そのXに対して似た感情を抱くことができれば、関係はよくなるってこと。」

これには黒瀬もゆっくりながら理解して納得していた。俺もなんとなく梶山の言ったことが分かった。共感できるものがあれば仲良くなれるって話か。流石はクラスの調律師をしているだけはある。そして今回その物事Xについてはもう決めるまでもなく決定している。

「ノア先輩、ですね。」

そう、クルトももしこれがLOVE的な感情を黒瀬や......まぁ一応星川がノアに向けていたのなら問題だろうが、尊敬とかであればクルトも悪い気はしないだろう。


後は後輩たちの動きに任せるとして、一応星川にも解決策の一案としてメールでメッセージを送った。俺の送った内容に理解は示しつつも、どこか納得しきれていない様子もあったが、あくまで一案なのでそれは許していただこう。

午後には生徒会の集まりがあり、どうやら梶山から伝授してもらったやり方については結構効果があったらしい。ノア以外に興味が一切なかったが、逆に言えばノアに関しては誰よりも興味を持っていると言っても過言ではないらしく、初めて向こうから率先して話を掛けられたそうだ。


そしてその日の夜。俺が鶴とお風呂の入浴剤がどれがいいか話していた時、珍しい人間から連絡が来た。というか俺は連絡先なんて交換した記憶は一切ないんだが。一応リビングから離れて俺の部屋に入ってから通話ボタンを押した。

「お前の入れ知恵らしいな。別に仕事であいつらと話すことなんか何もないが、ノアさんについて話せたのは悪い気分じゃなかった。」

「俺のっていうかは、そういうのが得意なクラスメイトの知識だな。」

とはいえまさかその程度で俺に連絡をする奴でもないだろう。少し用件が気になるところだな。

「2つ言いたいことがある。1つ、生徒会に星川って女がいるらしくてな、そいつは俺が現在住んでいる家の人間と同じ人間らしくてな。」

どんだけノア以外の人間に興味ないんだよ......。

「そいつの生い立ちを家でノアさんと星川から聞いた。......お前が彼女を救ったそうだな。」

「救ったというか、ただ俺の方からノアと禦王殘に話を通したというか。先輩として他力本願の仕方を見せただけだ。」

「そんなものはどうでもいい。結論救われた命が二つあったということだ。その事実を誇れ。」

あくまで端的に事実だけを述べるように話した。別にそんな誇るべきものでもないと思うんだがな。

「それで?もう一つってのはなんだ?」

俺の言葉が届いてないということはないだろう。今だって向こうの車の通りすぎる音やにぎやかな街の喧騒が携帯越しに左耳の鼓膜に振動を伝えている。クルトは今まで会ってから俺やそれ以外の人間に対して全く敬意を表したことはない。それに加えて配慮のかけらもないし遠慮の二文字も多分知らない。けれど携帯越しからは声にならない戸惑いが聞こえた気がした。

「......いや、やっぱりなんでもない。ただ、もしノアさんがお前の前から姿を消したのなら、迷わず俺を殺してくれ。」

「なんて?」

俺の返答には何も返さず、そのあとに電話がかかってくることなんてなかった。


1月6日。

「学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない学校行きたくない学校いきたくない」


1月7日。

朝起きたら世界が滅んでいた。俺が寝ている間に何があったかはわからない。隕石でも落ちてきたのか、地震が起きたのか、何かのウイルスでパンデミックが広がったのかもしれない。いずれにしてもそこには俺の知っている世界はそこになく、ただ一夜で荒廃した地上と、まるでそれを祝うかのような澄んだ青空がどこまでも「......早く起きないと遅刻しちゃうよ?」

「目覚めたくない。」

「......体調、よくない?」

「残念だがどこも悪くない。」

「......でも、やっぱり行きづらいよね。このまま今日は一緒に休んじゃう?」

正直それはとても魅力的な提案だが、多分そしたら明日はもっと行きたくなくなる。明後日になればもっと、日ごとにどんどんそれは強くなることは明白。だったら早めに地獄を見ておいた方がマシだろう。布団の引力に負けそうになったが、何とかそこから這い出て準備を始める。

パンと目玉焼きを適当に焼きつつ、昨日作ったきんぴらの残りとブロッコリー、白滝の炒め物、冷凍食品のかぼちゃのコロッケなどなどを入れて準備をしていく。鶴にはその間洗濯などを干してもらった。そして二人の仕事が同じくらいに終わり一緒に朝食を食べる。食べ終わる。その他諸々の準備をして一緒に家を出た。


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