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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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取り戻したもの、失ったもの 16

禦王殘はその話が終わると布団で横たわり、やがて眼を瞑った。俺と戌亥も少し話はしていたが、やがて2人とも自然と夢に落ちていった。


そして夜は明け新年を迎えた。こうも大人数で新年を祝うことは予想していなかったが、別に年が明けただけで大はしゃぎするような年齢でもない。挨拶程度に「おはよ、あけおめ」程度に言うくらいだった。女性陣は既に起きて料理を作ってくれている。材料がなかったためおせち料理ではなかったが、雑炊と餅を焼いてくれていた。昨日は訊けなかったことがあったのでノアの片手間を見て耳打ちした。

「そういえば昨日は大丈夫だったか?」

「何がかしら?」

「ほら、ノアは脱ぎ癖があるから、みんな衝撃を受けたんじゃないかと。ちなみに男性陣は誰も下行ってないから大丈夫だが。」

「......私もある程度自制できるから大丈夫よ。目を覚ました時に確認したけど、何も問題なかったわ。」

誰にも聞かれていなかったと思っていたが、どうやら鶴には聞こえていたようで、俺たちの会話に入ってきた。

「......ぜ、全部脱いでたから着せたよ。」

鶴の言葉に俺もノアも頭がフリーズする。「嘘でしょ?」と何度も鶴に確認していたが、どうやらそれは事実らしい。どうやらノアは異性の家であっても素っ裸で寝るなかなか高尚な趣味をお持ち「お願い!!このことは誰にも言わないで!!」言えるわけないだろ。友達がそんな特殊性癖持ってたなんて。


午後からはみんな予定があるということで、ご飯を食べ終わると俺の家を後にした。

「......ちょっと出てくるね。」

どうやら元旦は鶴のお母さんの誕生日らしく、先日の件でその姿を墓石にいれることができたので、手を合わせに行きたいということだった。ちなみに鶴のお母さんはお父さんの隣で眠っているらしい。それは勿論行ってもらって大丈夫と伝えた。けれどそこに俺がいてはゆっくり話もできないだろうし、俺はぼちぼち冬休みの宿題も終わらせたいと思っていたので、鶴が帰ってくるまでの間に少しずつ進めていた宿題を終わらせた。この時期そろそろ本格的に進路を考えなくてはいけないなんて考えつつ。


今年は新学期は1月7日に始まる。つまりあと今日含めてあと5日残っているわけだが、あまり入れていないバイトに行かなければいけなかった。高校生のバイトだからと言ってあまりシフトに穴をあけてしまうのは良くない。ただでさえ定期テストの時には休ませてもらっているのだから。

「お疲れ様です。」

「あぁ、お疲れ様。あとあけましておめでとう。三が日なのに出勤してくれてありがとうね。私も最近家族の事情で忙しくてね。」

「いえ、最近学校の方でシフト入れなかったので、ここらへんで挽回しないと折角雇ってもらえたので。何かご家族があったんですか?」

「娘がちょっとね......まぁどうにか説得して事なきを得たよ。

「年頃の女の子は難しいですからね。」

同じくらいの年齢の娘を持つ父親の会話か。

脱臼していた肩も刺された箇所も今はほとんど完治していた。もっと何か月もかかる怪我だと思っていたが、これが若さというやつだろうか。

俺がいなかったクリスマスはとても大変だったそうで、売り上げは過去最高の10倍近い数値を叩き出したとのことだった。具体的にはその一晩で高級車1台買っても余るくらい。来年は鏡石と白花も参加させたらどのくらいいくのか、逆に見てみたくもなった。もう殺し合いでも始まるんじゃないか?

唐突に殺気が背後から感じた。

「......」

「......お、お疲れ様です。根本深月様。先日はシフトに出られず申し訳ございませんでした。また学校でも多大なるご迷惑をおかけしてしまい、そちらにつきましても万謝させていただきます。せめてもの償いといたしまして、この3が日は馬車馬のように従事させていただきます。」

「......そうね、あの死ぬほど忙しかったクリスマスに結局来なかったんだし、流石にこの時期は来るわよね。」

「......でも一応『あなたは来なくていいわ』って前水仙と京誘った時に言ってたような......すみません、そのバカでかいケーキナイフをどうか鞘に納めてはいただけないでしょうか。」

「それはあなたの態度次第で決まるんじゃないかしら。」

そのクリスマスの時に消費した小麦粉やベーキングパウダー、砂糖といった発注がまとめて本日店に届き、倉庫に入れることが本日の主な業務だった。当日相当消費したらしく、トラック一台丸々の荷物が届いた。

さっき痛めた部分は完治したといったが、また壊れそうな気がしてならなかった。午前から始めた格納だったが、終わることには夕方になっていた。

「次」

「はい。」

基本的にどうしても重いものは業者に発注を掛けるが、そうでないものは運送料を削るためにも近場のスーパーに向かい買ってくる。香りづけに使う香辛料や、卵、その他洗剤やスポンジなどもこれにあたる。それらを3往復することで全部買うことができた。そして時刻は早くも19時。お店はまだ正月明けということもあり、早い時間で閉めたので店内清掃、ネット注文の整理をすることになった。

「安西さんと峰澤君もお疲れ様。」

「お疲れ様なんですけど、狐神先輩まだ帰られないんですか?確か自分たちよりもずっと早く来てますよね?」

「帰りたいよ。寧ろ家を出る前から帰りたい。けど帰りたいから帰るができるなら、残業なんてものはこの世に蔓延(はびこ)らな「随分余裕ね。」」

そのあと結局閉店過ぎにようやく帰ることができた。

そして三が日最終日であるその翌日もほぼ丸一日出勤した。正月というのもあって給料はよかった。


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