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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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猫と彼女と先輩と 2

「それで話というのは何かな?申し訳ないんだが、春風君とはあまり接点を持った記憶がなくて。何か瀬田君には相談しにくい生徒会のことかな?」

「......いえ、とても個人的なお願いで来ました。」


それからは俺も九条校長も口を一切挟まず春風さんの話を聞いた。この人のいいところはこちらの意見をきちんと最後まで聞いてくれることだ。勿論最初から最後までずっと黙ってるわけではなく相槌を所々入れてくれる。そのおかげでこちらもとても滑らかに話すことができる。でも今回だいぶ以外だったのは九条校長が春風さんの言葉を終始微笑みながら聞いてくれたことだ。普通これは話が終わった瞬間ブチギレパターン不可避なのだがこの人に限ってそういうのはないと思う。

そして出た言葉はとても軽かった。

「いやー、青春だね。」

「「え」」

「若いうちなんてそんなの日常茶飯事だよ。でも君がそれで大いに悩んだことくらいはわかる。そもそも高校生や中学生の恋愛にまで私は関与しないよ。でも子どもの願いに力を貸すのが大人の役目だ。その場を設けるくらいなら関わらせてもらおう。」

あらー、何か大人のいい例って感じ。こんな人に育てられた子って絶対いい子じゃん。……てかちょっと待て。

「えっと、中学生?誰がですか?」

「?私の娘だが?今中3だよ。」

ってことは……。

「高校2年生のチャラ男先輩が中学2年生の少女に初恋って、学生の3歳差は割とどうかと思うんですけどそこんとこどう思います。」

「いや、僕も初耳ですごい驚いてるところ。いや身長は確かに小さいと思ったけど同い年くらいかと思ってた。」

気付けやそのくらい。


そしてその日の放課後。「君たちさえ良ければ私の家で夕飯を食べて行かないか?勿論送っていくよ。」とご相伴に預かった。折角のお誘いを無下に断ることもできないし、特に用事もなかったのでそれはいいのだが、俺はあくまで2人の繋ぎで入っただけなので断ろうとした。しかし「いや、君にも来て欲しいと娘は思ってると思う。」と言われれば何となく気になる。確かにシュパリュは偶然助けはしたが、それをその子は知らないと思う。治療をしたら逃げ出すようにどこかへ行ってしまったし。

そして車に揺られること3、40分。てっきり校長でもやってるのだからとんでも御屋敷だと思ったが、そこは普通の一軒家だった。

「少しガッカリさせてしまったかな。今は気にしてないが、娘が幼い頃にお金持ち、お嬢様、ボンボンと言われる事が嫌だと言ってね。それでこのような普通の家なんだ。」

そうして開かれた扉の向こうでは既に夕食の支度が進んでいるらしく、とてもいい匂いが広がる。ジャズ風な音楽も料理の音の中聞こえてくる。リビングの扉を開くととても楽しそうに料理をする1人の女性がいた。

「あら、あなたおかえりなさい。早かったのね。その子たちが話してた子たち?」

「ただいま、母さん。そう、3年の春風君と1年の狐神君だ。こころは部屋にいるかな。出来ればご飯前に話しをさせてあげたいんだけど。」

娘さんてこころって言うんだ、初めて知った。

「ふふっ、あの子ったら張りきっちゃって必死に洋服のチェックとかしてたわよ。とっても生き生きしてたわ。部屋にいると思うわよ。」

張り切るって一体何にだろうか?俺は会ったことすらやはり春風さんだろうけど、あんまり脈は感じなかったが。

ご飯はもう少しかかるということらしいのでそのこころさんとやらの部屋に訪れた。領さんが扉をノックすると中から緊張したような声で返事が聞こえる。扉を開け「どうぞ」と領さんに案内され春風さんに続き中にお邪魔する。

「なるほど、これは詐欺ですね。」

大鵠が別に大した女ではないと言うからいっそブスなら安心できたというのに。中学3年だから春風さんがロリコン拗らせてたのかと思ったのに。

「普通に美少女じゃないか……」

畜生なんてこったい、普通にレベルの高い美少女と話すなんて聞いてないぞ。ブスのロリを予想してたから余計にダメージがでかい。それに何かいい香りもするし、大人びた服もいい感じに合ってるし、紅茶飲んでるし。

そんな俺の茶番は置いておき、領さんが去るとすぐ、春風さんの謝罪から始まった。

「ずっと謝りたかった。シュパリュの件は俺がやってないとはいえこころちゃんを悲しませたし、俺自身数多くの女の子と遊んできたことは紛れもない事実。その事を「今の関係を壊したくない」と思って話さなかった事も今ここで謝らせて欲しい。……本当にすまなかった。」

春風さんの誠心誠意の謝罪をこころは優しい笑みで受け取る。

「顔を上げてください、春風さん。私は最初からあなたがやったとは思ってませんよ。シュパリュは今、元気ですし。それにあなたが過去にどれ程の女性と関係を持とうとも大切なのは今ですから。」

おぉ……。

「やっぱり君は優しいんだね。……どうかもう1回僕にチャンスをくれないか?」

あー、いいよねこういうの。すごい青春っぽい。女たらしの人がようやく運命の人を見つけて、その人の為に今までの事を清算しようと奔走する(奔走したかまでかは知らないが)姿にヒロインが遂にその人を認めるって展開。


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