鶴の仇返し 3
「いけー!!」
「いけじゃねぇんだよ......」
急に目の前に現れた、こちらも大柄な男性が目の前の男性2人は有無も言わさず吹き飛ばした。それはもう3メートルくらいは宙に舞っていた。でもより強い男性が現れたとなると、いよいよどうにもできなくなるわけで「大丈夫ですか?水仙さん?」
「......へ?」
「それに京さんも。怖かったですよね。あ、私です、姫です。先日一瞬だけそちらのクラスにお世話になったじゃないですか。」
そういえば姫さんという人が一瞬うちにいた気がする。クラスの人に虐められてるとか話してたけど、普通に元気な印象だったな。名前呼んだ時も「『姫崎さん』なんて他人行儀なのではなく、『姫』と呼んでください!!」って話してたっけ。でも直ぐに『気のせいでした!』ってまた急にいなくなってたけど。
「で、こっちが私のペットの宿儺君です。」
「殺すぞ。」
言葉と顔の割に優しい手つきで龍ちゃんを拾いあげていた。そして車いすに座る姫さんの膝の上にそっと置いた。「ぬいぐるみみたいでとても可愛いです!」と姫さんも喜んでいた。
「で、後ろから今来ているのが1組の戌亥君と10組の貓俣さんです。4人で仲良くダブルデートをしてましたところ、悪漢に襲われる我が校の生徒が見えたので助けに来た次第です。」
「誰がこいつとデートなんかするか!?そんなことしてるくらいなら家でゲームでもしてるわ。」
「とか言ってしきりに予定表とか確認してたじゃない?本当は今夜誰か誘うつもりだったんじゃないの?でも結局そんな度胸もなく、一日暇でしたって感じかしら?」
「んなわけないだろ!!俺はただ「はいはい、とりあえずどこかお店に入りましょ。」聞けやてめ」
禦王殘君のよく使ってる?お店があるらしいので、そこに行くことになった。見た目は普通の和風料理屋さんだったけど、お客さんが何というか、ちょっと強面な人が多い印象だったな。なんか禦王殘君と姫さんの顔を見たら全員頭下げてたけど。
「宿儺様、本日は如何様に。」
「姫と学校の連中と食事をしに来ただけだ。別に聞かれて困る話はしやしないが、こいつらが緊張するだろうから、周りに誰も近づかせないようにだけしてくれ。」
「心得ました。」
なんか、禦王殘君とお店の人との関係は伺えないけど、あんまり深く突っ込まないほうがいいのかな?
そんな感じで部屋に入ると話し合いが始まった。議題は勿論、狐神彼方君について。
「いやー私もびっくりしました。狐神君の家に着いて話をしていたらいきなり理性が飛んで襲って来たんですから。強引なのも嫌いじゃないですけどね。押し倒された時は死んじゃうかと思いました。」
「「ゴッホゲホゲホ!?!?」」
意識が戻った龍ちゃんに今の経緯を伝えた。もしあれなら帰る?とも話をしたけれど、狐神君の話はしっかりと聞いておきたいということで残った。
にしても確かに前に狐神君が姫さんのことを家に招いたのは聞いていたけど、まさか本当に一線を超えたの!?狐神君はなんだかんだそういうの大切にしてくれそうだけどなぁ……でも姫さんすごい可愛いもんね。スタイルも、ほんとすごいいいし。やっぱり狐神君も姫さんみたいな女の子が好きなのかな……。
「あらら、ごめんなさい。ちょっとからかいすぎちゃいましたね。狐神君とはお2人が思ってるようなことは何一つないですよ。でも突発的に私のことを忘れて、『復讐すべき誰か』と見て、殺す気で襲い掛かってきたことは事実です。」
また質の悪い冗談だと信じたかったけれど、隣に座る禦王殘君がそれを肯定した。流石にあの人が冗談を言うタイプには見えない。すっごい怖いけど。
その時の詳しい事情を姫さんから聞いた。正直、その......大人の本の流れはいらなかったと思うけど、狐神君がどれだけ追い込まれているのかも改めて知ることができた。姫さんや禦王殘君など、各クラスのリーダーさんについては、前に狐神君から話を聞いたことがあった。そんな人達が頭を抱えるほどのことに、私はきっと何もできない。
「ようは今の狐神は止まるつもりはない。けれど現在進行形で精神が壊れているからその支柱が必要ってことか?」
「支柱だと復讐の手助けになっちゃうから、抑止力の方が表現正しいんじゃない?『復讐はしたいけど、お小遣い減らされちゃうからやめよう』みたいな。」
「言ってることは合ってると思うが、いのりの考える狐神可愛すぎんだろ。今の小学生だって減俸程度で止まらないと思うぞ。それにきっとあいつは物じゃ抑止にならないと思う。あいつが物欲で動く単純な人間だったらとっくに止まってんだろ。」
それはみんなが思ったことだった。となれば抑止力は人となる。でも狐神君にとって抑止力になる人って誰なんだろう。
「ノアに確認したところ、鶴はもう狐神に洗脳みてぇなことはしてないと言っていた。弱っているとはいえ、あいつがそれを確認したのなら間違いはないだろう。だが現状狐神の復讐は続いてる。」
「そこでお2人の出番というわけですよ!!」
そこで急に私と龍ちゃんに声が掛かった。