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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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VS集いし強者 18

「誰に見せたかったか、それは正直僕にもよく分からなかった。関わりこそあれ、別に君とは友達、親友というわけでもあるまい。」

「じゃあ鴛海の考えすぎじゃな「だが一点合致するものがあるんだよ。」」

こちらが反撃に出ようとするタイミングに被せて仕掛けてくるな。やりずらいことこの上ない。俺が斎藤に使った方法だが、実際やられると結構イラつくな。

「1年のクルト君ほどではなかったが、膂力を残した素晴らしい走り、そして今こうして各リーダーを撃滅している現状。まるで自分の成長を誰かに誇示しているように見えてならない。実際あの男が勝手に決めたリーダーたちだが、それがこの学校の抜きん出た力の象徴でもある。それをへし折ることは君の力の証明にも繋がる。果たして誰に見せているんだろうな。」

「......」

「もう一点。君が夏休み襲われた時の話だ。君は樫野校長が無作為に渡した飲み物を飲み、偶々その翌日体調を崩し、偶々近くにいたホームレスが、偶々君の家の会話を聞き押し入った。......まぁこんな偶然そうあるものじゃないだろう。きっと始まりは君が校長から渡された飲み物を飲んだ時。しかしあそこで校長が何か仕掛けたとは考えにくい。理由もなければ方法だってわからない。」

「あの飲み物は普通のものだったが、鶴の洗脳により劇薬に変わったと?」

そんな漫画の世界でもあるまいし。でもここでそれを強く言っておかないと不味いかな。

「ありえない。」

「ありえなくない。実際発熱した患者が来院して、何の効果もない薬を渡して、熱が下がったという事象だってある。」

「それは因果関係と相関関係の混同だろ。」

「アイスの売り上げと溺れる人の話だな。よく知っているな。そういった話題で話し合うのも楽しそうだが今はその時じゃない。問題は実際にそれが起こったという事実だ。」

「だが実際何がどう問題なんだ?」

いまいち話についてこれていない山田がそう問いかける。ここまで話しておいて鴛海が気付いていないわけがない。徐々に俺の核心に近づきつつある鴛海に改めて恐怖を覚える。

「先ほどの体育祭の話で狐神君が気にしているのが蓬莱殿さんでないことは分かった。しかし洗脳をかけた人は蓬莱殿さん。父親は先の件でいないことは知ってる。そして姫さんが聞いた『爺』......わかっているだろ、君が仕えているその人物は君を殺そうとしたんだぞ。」

......知ってるよ。誰が好き好んであんな人物に(かしず)くものかよ。でもこっちにも事情ってものがある。そのためなら俺は地べた這いずってでも、泥水啜ってでも戦いを辞する気はない。

これ以上踏み込まれると俺の決心がブレる。流されてしまっていたが、鴛海にこれ以上話をされるわけにはいかない。

迷いを振り払うように、ポケットにある携帯から電話を掛ける。

「......高梨、やれ。」

電話越しに俺に怯える声が聞こえた。一瞬躊躇していたようだが、この命令を伝えた時に、同時にお灸を据えたこともあってかちゃんと動いてくれたらしい。

一番最初に気付いたのは山田だった。

「.....は?おい、まさかあいつ。」

「高梨、次だ。」

『......でもこれ、本当に人殺しになっちゃうんじゃ。』

「別に故意か事故かなんか黙ってりゃわかんない。」

「......おい、ちょっと待て。何の話をしている。」

次の瞬間、携帯の向こうから何かの警告音が爆音で聞こえた。そのあまりの音量に俺もつい耳を遠ざける。高梨はそこから勢いよく逃げだしたのか、なんどかノイズが入ると電話が切れた。そしてその音に聞き覚えがあるのか、目の前の小さな女の子が人でも殺すのかの思われるような顔をした。しかし俺を問い詰めることよりも先に電話で連絡をしようとしていた。きっと病院だろう。まだ俺がそんなことを本当にするのか、弟君は俺の復讐に関係ないのだから手を出さないのではないか、という気持ちがあるのだろう。しかし電話は繋がらなかったのか、何か話している様子はなかった。でもそれは事態がいい方向に動いたわけがない。

「......人には踏み込んでいけない領域があることくらい、君だって分かっているだろう。今貴様はそれを冒した。」

「じゃなきゃ意味ないからな。でもいいのか、俺なんかとここで駄弁ってて。弟さんの最期を見れなくなるぞ?」

「言われずとも」それだけ言うと全速力でそこを去った。さて、とりあえずはこれで鴛海がいなくなったということでようやく山田と話すことができる。しかしこっちは鴛海と違い血気盛んなことは想像できた。こう来ることは予測できていたのでその拳は余裕をもって躱すことができた。しかしどうやら身体能力はかなりいいらしい。

「うちのクラスの不和と高梨の件のあと、お前がクラッシュさせた高梨のデータがあった。それを上手く活用して更に上位互換のデータを作らせた。山田がどんな方法でそのデータを壊したかを参照して。」

「......失態だった。壊すのはデータじゃなく、それを扱っていた人間だった!!」

次なる足技が飛んできた。てっきりスカートだからそういうのはやってこないと思っていたが、確かに山田はそういったことを気にする人間からはかけ離れていた。

山田に行ったのは山田の全てのネット権限の奪取。だけどそんな大それたこと長時間も出来るはずもない。出来たのはほんの一瞬。でもその一瞬で権限を奪えたのであれば上等。

「この世界で情報は非常に強力な武器だが、奪われる可能性も常に考えなくちゃな。例え一瞬でも、人にトラウマを植え付けるくらいはできる。」

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