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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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VS集いし強者 17

「それで次はあたしってわけか。そりゃあパソコンカタカタするくらいしか脳がねぇこんな女、格好の的だもんな?」

今のご時世情報に強いって半端じゃなくアドバンテージだと思うけどな。汎用においても限定においても最強クラスに。少なくてもそっちの道で俺が勝てる道はないよ。俺はスマホいじったり、高校の情報の授業程度の知識しかない。

放課後、旧校舎で山田と相対していた。旧校舎は今思うとこういったことに適しているから助かる。しかしクリスマスというのに、俺なんかに時間を割くなんて暇してるのだろうか。

「だがあんたがあたしの領域で戦うなんて思ってねぇ。確かに相手の得意分野で勝てればより大きなダメージも与えられるんだろうが、そこまでの技量はねぇだろ。となるとお前が得意な領域、と言っても正直お前のことなんざろくに知らねぇから、簡単に力でねじ伏せてくるか?」

力でねじ伏せる自信はなくもないが、肩の状態と山田の未知数の身体能力を除いた場合だ。勿論山田の身体能力が秀でていると情報は聞いたことがないが、そこを敢えて隠している可能性だってある。逆に俺の肩のことを知っている可能性だってあるしな。

「俺もそこまで短絡的じゃない。」

「そうか?少なくても以前のお前よりかは、今の方がずっと短絡的に見えるぞ。そりゃあもう滑稽なくらいに。」

そういうとケタケタと笑い出す。多分俺の事情を全てとは言わずとも、多少は知っているだろう。そこまで見越して敢えて俺のことを煽っているように見える。リーダーには伽藍堂や明石のように心配してくれる人間もいるが、山田はそれとは対極にいるように思える。でもなぜだかそこまで嫌な感じがしない。勝手な解釈だが、山田なりに今の俺が間違っていると教えてくれているようにも感じた。

「さて、少し核心に触れていくことにしよう。」

「......鴛海もいたのか。」

流石というべきか、鴛海と山田が一緒に行動していることはあくまで可能性の一つとして考えていたが、やはり頭が切れるな。

次に狙う候補としては山田か鴛海か考えていた。山田は情報戦以外であれば俺に勝ちの目が散在していること。鴛海に関しては明確な弱点を水仙殺人未遂事件の時に教えてくれていたこと。条件だけで言えば鴛海の方が脆いと感じていたが、鴛海が明確な弱点を考慮していないわけがない。であれば先に山田を倒しておき、その後に鴛海の攻略を考えていこうとしていた。最悪、順番が入れ替わってもそれはしょうがないと。2人同時なんてめんどくさいことにならなければ。

「ノアさんから聞いた話、君は蓬莱殿さんに洗脳というか、(まじな)いのようなものを掛けられていると聞いた。確かに体育祭のムカデ競争の前あたりだったか、君と蓬莱殿さんが会話をしているのを見た。そしてその後の学年対抗リレー。君の足の速さは凄まじかった。違和感を感じざるを得ないほどに。」

「流石に火事場の馬鹿力はきつかったか。」

「それもそうだが僕が言っている違和感はそこじゃない。」

ここまで話について来た山田もここで顔をしかめる。俺も同じように顔をしかめた。

「確かにあの足の速さはきっと蓬莱殿さんの言葉によるブーストも大きかっただろう。だがそれは別に大した問題ではない。問題はなぜあのタイミングだったのかだ。」

タイミング?タイミングも何も、早く走ることに都合のいいタイミングなんて体育祭くらいしかないだろう。まぁ体育の授業などもあることはあるが。

「ここですっとぼけるなんて無意味だぞ。君のことはそれなりに買っているからな。君の復讐とやらはずっと計画してきたことなんだろう?そしてここ最近になって一気にそれが始まった。であれば、なぜあの対抗リレーで君は普通に走らなかった?実際君の異常な速さで違和感や疑いをかけた人物が他にもいたはずだ。そこで君を疑う者がいても、相当用心深いがあり得ないことじゃない。」

......困ったな、想像以上に鴛海の考えが鋭い。黙ってるだけなら、こちらの武装を剝がされる一方だ。あまりいい言葉は思い浮かばないが、とりあえず何か誤魔化しておくか。

「そこは鶴に聞いてくれ。そもそも俺がそんなものをコントロールできたのなら、こんな事態にはなっていない。なんで俺の復讐心を学年対抗リレーの時に増幅させたのか。」

「別に蓬莱殿さんに聞かずともなんとなくの察しはつく。山田さんはどう思う?」

名指しされた山田はめんどくさそうな顔はしていたが、話はしっかりと聞いていたようで、若干考え込むとぽつりぽつりと話し始めた。

「みんなの視線が集まるから、とかか?いや、それじゃあ鴛海がさっき言ったように狐神の変化に気付く人間が多くなるだけ。......でも普通に走らなかった。......特定の誰かに見せることが目的、とかか?」

「そうだ、そしてそれは先輩後輩の可能性もあるが、それよりも保護者とかその辺りの人間だろう。」

どこのだれかは知らないが、そんな俺の成長を見せたところで一体何になるというのか。それとも何か、俺の両親に俺の成長を見てもらいたかったとかか?実際両親は来ていたが、俺はそこまで可愛げのある人間じゃないぞ。


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