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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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VS集いし強者 13

ご飯が食べ終わり少し談笑した後、あまり帰りが遅くならないうちに、俺は十一さんに車で送ってもらった。鶴も来たそうにしていたが、この寒い時期にわざわざ出る必要もないだろうとそれはお断りした。

「そういえばもうすぐクリスマスか。狐神君は誰かと過ごす予定はあるのかね?」

「今のところは別にって感じですね。」

そういえばもうそんな季節か。確か前にクリスマスは鶴と話をした後、バイト先でケーキを食べるとかそんな話をしていたっけ。今バイトは行っているが、深月とは一切話してない。そしてそれを安西も峰澤も察して話しかけてこない。空気を悪くするのはよくないし、シフトもかなり減らしてもらった。そして当日もきっと俺はいないだろう。水仙と京が客引きをすれば厨房は忙殺されるだろうが、それは頑張ってもらって。しかし鶴とは今後について話すために会おうと言っていたがわざわざクリスマスにしなくても。


「......まだ復讐は続けるの?」

鶴の家を出る際、そう言われた。鶴は俺が離れ一人になることを恐れ、俺の復讐心を利用して孤立させた。しかし鶴がもうそれを望んでおらず、洗脳を解除したというのであれば、未だに俺の中にあるこの復讐心は元々俺の中にあったものだ。だからこれから先は鶴の力も借りずに復讐を果たすとしよう。

「続けるよ。確かに鶴に助長されたことはあったかもしれないけど、未だに俺の復讐の劫火は消えてないからね。」

......俺がここで足を止めるわけにはいかない。樫野校長だってああ言っていた。迷いは断ち切れ。禦王殘だって言っていた。『中途半端な奴ができることなんかたかが知れてる』と。

鶴が安堵したように一瞬見えた。

俺もそれを見て安堵した。


「貴重な高校生のクリスマスだからね。後悔はしないように。」

「そうですね、今からでも考えておきます。ちなみに十一さんは鶴と仲が良かったりしますか?」

俺の質問に対して意味がよく分からなかったのか、「まぁ親子ではないけれど、家族ではあるし、それなりじゃないのかな」と答えた。

「あ、さては鶴が何が好きか知りたいのかな?クリスマスプレゼント的な。狐神君も隅に置けないね。」

いや、まぁそう捉えられなくもないと思うけど。物をあげるだけがプレゼントってわけでもないし、鶴に普段の恩返しがしたいって気持ちもある。ただそれをクリスマスプレゼントなんて言われると、まるで俺もリア充の仲間入りしたみたいですごい嫌だな。

「鶴が喜びそうなものか。あの子は様々なものに無頓着だからね。何を渡しても感謝の言葉は述べてくれるだろうけど、勿論そういうのじゃないよね?」

「......まぁ、そうですね。」

湧き上がる感情を必死で抑えつつ十一さんの言葉を聞く。

「うーん、残念だけど力になれそうにないかな。やっぱり私は男だし、年齢もかなり離れているからね。それに今の女子高生の好みは狐神君の方が詳しいんじゃないかな。」

同じクラスにいても女子の好きなものはマジでわからないんですわ。化粧品とか洋服の話とかしてるのは前に聞いたことあるけど、メーカーとかブランドとかはもうさっぱり。


その後も俺の家に着くまで人生の先輩としての話を聞いた。領さんとは違った大人としての価値観などを教えてもらった。いまいち大人になり切れていない俺にはまだ理解できない話もあったが、それも大人になれたら分かるのかもなんて思いつつ。


クリスマスが明後日に迫り、クラスの雰囲気も次第にその色に変わっていった。

「ちっ」

「まじで最悪」

「来なきゃいいのに」

俺が来るまではの話だが。

病院でもらった腕の固定具や三角巾はつけていない。そんな自分の弱点さらけ出していては、血気盛んな連中に目をつけられてぼこぼこにされるに違いない。とりあえずこの傷がある程度癒えるまでは戦闘は避けるべきだな。とはいえ俺の次の目標は代永。喧嘩などになる可能性は低いだろう。


運命というものなんて全く信じていないが、俺が代永のとこに行こうとするより先に、向こうから俺に接触があった。俺と代永だけで話すことは珍しいので少しばかり緊張する。

「それで、どうしたの。」

「分かってますでしょう。八島さんが狐神さんに危害を受けてから、次に狙うリーダーなら私を選ぶかと。私は妥協の上で選ばれた人間ですから。」

確かに代永は全体的に高い能力を保持しているが、代永が言う通り、大鵠さんに直説法でなく消去法で選ばれた。あくまでリーダーに選ばれたことに驕ることなく、自分の弱点として捉えてることは強みだとは思うけど。実際俺が代永に目を付けた理由もそこだし。まぁそんなもの建前だとも思うが。

「残りのリーダーたちの中で一番代永が崩しやすそうってことは否定しないよ。でも多分ノアが弱ってる現在一番むかついてるのもの代永かなと思った。」

図星だったのか、一瞬眉がピクッと反応した。必死に理性と抑えているのは俺でなくてもよくわかるだろう。代永は他クラスとはいえ、生徒会長選挙の頃には仲が良かった。多分リーダーたちの中でなら一番親しくしていただろう。

「歯がゆいな。大切な友達がこんな男に傷つけられてるのに、自分は何もできないなんて。」

「......は?」


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