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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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忍び寄る影 6

違和感を覚えたのは投票を行ってだいぶ経ってからだった。予定していた時間より随分遅れている。その間も生徒は寒い中待たされている。これでは嫌気がさして帰る生徒がいてもおかしくない。何とかこの場を設けることができたんだ、あまり中止にはしたくない。ネットなどで投票すると不正なども起きる可能性もある。具体的に言えば、脅迫され大鵠に票を入れさせられるなど。

すると投票の手伝いをしてくれていた人が近づいてきた。

「ごめん瀬田君、投票用紙がもうないんだけど残りってどこにある?」

生徒数きっちり用意した紙がまだ半分も終わってないのに無くなりそうになるわけがない。何人かの監視が付いた上で投票用紙を書いてもらっている以上、そこで何かをすると言うのは無理だろう。恐らく大鵠が事前に何か仕掛けたのだろう。

大鵠を睨みながら「ステージ下に予備の紙がある。それを使ってくれ。」と言う。一応念のため用意しておいて良かった。

そして少しして予備の持った生徒が帰ってくる。その間にも生徒のストレスは徐々に溜まっていく。投票用紙を書く人には悪いが少し早めに書いてもらおう。

そう思い指示を出そうとした瞬間、辺り一帯が真っ暗になった。カーテンの向こうでは短い悲鳴の後、どよめきがし始める。落雷ではないし、恐らくヒューズや本体がやられたと考えるのが妥当だが、恐らくこれも大鵠の仕業だ。しかし生徒会で学校の整備の確認も行っている。その中に確かにここの電気システムに問題はなかったと書いてあったはず。その担当者は確か……。

「お前、まさかそんな前から企んでいたのか。」

「さぁ、なんの事だがさっぱり。それよりも生徒が動揺してますよ。ほっといて大丈夫ですか?会長?」

カーテンを締め切っているせいで体育館の中は真っ暗だった。そしてみんな携帯でライトを使うが互いに光を当ててしまい「まっぶしいなぁ!おい!」「ちょっと!こっち向けないでよ!」と軽い混乱状態。瀬田は手伝いにカーテンを開けるように指示し、生徒に冷静になるように言うが如何せんマイクも使えないのでその声も届かない。

そして瀬田が何もできないままカーテンが開かれる。カーテンを開ければ寒気も伝わるし、隙間風も入る。けれどそれはこの際しょうがない。みんながライトを消し、やがて瀬田の言葉を待つ。その顔は不安と不満が入り交じったようなものだった。

「恐らくブレーカーの方で少し問題があったんだと思う。後で詳しく調べてみるからとりあえず今は投票を進めさせてほしい。それときっとカーテンを開けたから寒くなるからヒーターを用意する。みんなには迷惑をかける。」

そう言って頭を下げ、カーテンの向こう側へと戻っていった。そして知り合いのバスケ部に頼んでヒーターを出してもらうことにした。原則は先生が居なければ危険という事で使ってはいけないが、最悪怒られるのが自分だけなら構わない。

「瀬田、ヒーターがどこにも見当たらないんだが...」

「用具入れにいつも入れてなかったっけ?」

その会話に大鵠が手を合わせて謝りながら入ってくる。まるでその言葉を待っていたように。

「ああー、そういえば前にヒーターの修理をお願いしたんですよ。もしかしたら偶然今日がその日なのかも。ごめんなさい。」

「お前……最初からこの投票を潰すことが目的だったのか?」

「まさか!!そんなわけないじゃないですか。これでも俺は同年代からそれなりに票数を集められる自信ありますよ?」

「それは脅迫して得られる票数か?」

「さぁ……」と簡易ライトの下で票を書く1年の小熊(おぐま)を睨む。それにビクリと体を震わすと下を向き、素早く紙を書き、提出していった。

「ひどいなぁ、まるで俺を怖がってるみたい。友人なのに。……瀬田さん、そんなに怖い顔しないで下さい。もう俺は何もしませんよ。というかいいんですか?みんなヒーターが出てくるのを待ってますよ。今日は雪が降りそうなほどですから。」

大鵠に謝罪をさせようとも思ったが、こいつを前に立たせると何を言うのかわかったものでは無いので仕方なく瀬田が出る。そしてヒーターの事も謝罪した。


その謝罪を聞いた1年が鼻で笑った。

「よくあんななんもできねぇカスみたいなのが生徒会長になれたな。」

橋本がそう言うと「俺の方がまだマシな気するわ。仮にミスってもとりあえず頭下げときゃいいんだろ?」と久世くぜが続く。その言葉に周りにいた瀬田の知り合いが黙っていなかった。普段ならもっと冷静になれたがこの事が恐らく大鵠の仕業というのも気づいている。その味方の2人が瀬田の悪口を言えば冷静さも欠ける。

「おい、1年、いまなんつった?」

睨みをきかせた2年のその顔に思わず2人はにやける。

『日々刺激を求めてるお前らにいい喧嘩の舞台そろえてやるよ。それでもし投票を壊せたら俺が生徒会長になった時お前らも優遇してやる。悪くない話だろ。』


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