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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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化け狐 20

そういえば俺は生徒会を辞めた人間。本来部活や委員会に所属しなければいけないことを今思い出した。そしてそれに呼応するように、また教頭から呼び出しをくらった。話は無所属の件、だけではないだろう。きっとまた口うるさい愚痴をがみがみと延々と聞かせられるのだろうか。普通に嫌だな。少し威圧でもしてみるか、案外それで黙るかもしれないし。

「失礼します。......あれ、すみません。間違えました。」

「いえ、合っています。教頭先生には代わってもらいました。」

そこにはうちのクラスの担任の遠井先生と樫野校長が座っていた。少なくてもあの罵声を浴びなくて済みそうなのは嬉しい限りだが、しかし遠井先生だけでなく樫野校長までいるとなると不安でしかないな。勘ぐっても仕方ないか、とりあえず座るとしよう。

「あのバカはきっとまた君にパワハラみたいなことを言いそうだからね。私が少し叱っておいたよ。そうじゃなきゃそろそろ狐神君に反撃されるだろうし。最も手っ取り早い手は録音だろうけど、そうすると学校の信頼がまた落ちる。そして関係のない1年生にまで被害が出る。これは多分君も望んではいないことだろうから、もっと直接的な方法かな。」

「俺のことなんだと思ってるんですか。」

「神の使いとか?君にとっての神が一体誰になるのかは知らないけれど。」

この人はみんなと違ってあまり態度を変えるってことはしないな。逆にここで焦ってくれた方がこの人の底とが見れて良かったという気持ちもなくはないが。どんな環境でも狼狽えず冷静で入れる人間は強いな。それでそれとは対照に、お隣のびくついている先生は一体何なんですか。

「私は一度取り返しのつかない失敗をしています。ですので、この話し合いに参加させてもらいたくここにいます。」

成程、失敗から学ぶことはよいことだな。大変結構。

「それで、今俺が部活に所属していないことに対しての言及とかですか?」

「いや、その件については特に言及するつもりはない。勿論いずれかの組織に所属はしてもらううが、直ぐにというのは難しいだろう。君の場合、受け入れてくれるところだって少ないだろうしな。まぁでもそこは安心してくれ。」

会社を辞めるときには既に別の会社に内定をもらっておけ、なんて言葉も聞いたことはあるが、ここの学校はそういうのは少し緩いらしい。とりあえず言い訳とかを色々考えなくてはいけないのがめんどくさかったので丁度良かった。

「となると本題はなんですか?」

「あなたの現在のクラス、及び学校での立ち位置についてです。わからないわけないですよね。あとこの話の場はあくまで相談とかそのような類で、説教をするつもりなんて毛頭ないです。」

相談、と言われてもな。『都合よく嫌いな人間に復讐するアイデア急募!』とか言ってもそんなものもらえるわけないだろうし。あくまで先生たちは片一方の生徒の味方なんてできないだろうし。まぁでも説教ではないとも言っているし、聞いてみるだけタダか。


「......なるほど、あなたの中にはずっと復讐心があったということですか。少なくても私は、それは人間なら普通だと思います。」

おっと、これは意外な反応だな。てっきり頭の固い遠井先生のことだから絶対にそんなこと許さないと思っていたのだが。ではその復讐の対象が自分となっていることについてはどのようにお考えか。......と言いたいところだが、遠井先生に限って言えば、あの榊原の父親の件があったこともあり、俺の苦しみは十分にぶつけてるんだよな。これ以上何かこの人にぶつけるのは流石に行き過ぎだろう。そして樫野校長に至っては一年生の後半に入ってきたこともあり、俺の冤罪に関しては何の罪もない。成程、式之宮先生もそうだが、そう考えるとこの二人は俺が強く出れない数少ない人間というわけか。多分樫野校長の思惑かな。

「それで、狐神君は皆さんに復讐をしたいと。」

「そうですね。したいというか少しずつしているというか。だから本日私をここに呼んだんですよね。......止める気はないですよ。」

「それは鶴さんの命令かなにか?」

急に樫野校長が距離を詰めてきた。仮にも一生徒を校長先生ともあろう人が黒幕扱いするんだ。勿論確信はもっての発言だろう。他の人ならまだ誤魔化せるだろうけど、この人相手に自分の不得意なことで勝負をするのはナンセンスか。

「命令じゃないです。助言してくれてるだけです。」

「私は君の復讐心を鶴さんが利用して、何かを企てているように思えるけどね。」

「そうかもですね。俺は頭良くないんでそこまではわかんないです。」

「鶴さんがそれ以上考えさせないようにしてる可能性もあるよね。」

「確たる証拠でもなければそれは樫野校長の妄言の域を出ませんよ。」

俺と樫野校長がバチバチやり合っている中で、遠井先生はとても居づらそうではあった。だが口先だけではなく、しっかり俺の話も聞いて考えている様子でもあった。その姿を見て俺も一度落ち着く。俺は別にこの人たちとやり合いたいわけじゃない。

「......とりあえず俺は当面クラスメイト、学年の人、3年生先輩方にお返しをするだけです。一応学校外には問題にならないくらいには抑えるつもりですよ。俺の復讐には関係のない一年生だっていますからね。ちなみに、多分これから何度も先生方には注意されると思いますが、引き続きことには当たらせてもらいます。適当に『すみませんでした』とか言ってまた繰り返します。」

俺の言葉に今まで黙っていた遠井先生が何か言おうとして、でもその言葉は口からは出てこなかった。

「......こうなる前に、しっかりと私が止めるべきでした。傷つけられた痛みは知っていたのに。」

遠井先生の贖いの言葉に、俺も樫野校長も黙った。

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