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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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化け狐 4

「まぁ、私と妻は歓迎するけれど......こころ?本当に狐神君は泊まりたいということでここまで来てもらったんだよね?」

「勿論。そうですよね?彼方先輩?」

「はい、私はそう思います。」

流石に同じ布団で寝るという一番不味い展開は避けられたが、にしてもこころって本当に年下だよな?まさかあんな......いや、思い出すのはやめておこう。

そんなわけで今晩は九条家に泊まることになった。


お母さまが既に夕飯の準備に入っていた。急な来訪にも関わらず、わざわざ俺の分のご飯までご用意してくださるとのこと。幸甚に存じます。とはいえ無償でご相伴に預かることは流石に気が引けたので俺も何か手伝えないか聞いた。そうしたら今晩の料理ではないが、栗を多くもらったとのことだったので、皮むきをさせてもらった。こころも普段は決して手伝わないということだったが、俺がいたのもあってか、率先して手伝ってくれた。こころが専用のはさみを使い、俺は包丁にて剥いていった。少しコツはいるが、包丁の顎の部分を使えばそんなに難しいことではない。

「なんか、いいですよね、こういうの。勿論いろんなところにお出かけすることも楽しいですけど、一緒にテレビ見ながらこうやって地味な作業をするのも。熟年夫婦みたいな?」

「じゃあ婆さんや、さっきから全然向けてないけど大丈夫か?本当は熱湯とかに浸すといいらしいんだけどまぁいいや。そしたらこころは鬼皮だけ剝いてくれないか。薄皮は俺がやるよ。」

「料理ができる男子がかっこいいっているのはすごいわかりましたけど、同時に自分の女子力のなさも実感しました。」

一応俺はバイトとか飲食系だから多少包丁の扱いとか慣れてるだけだと思うが。まぁ料理ができると言ってもらえるのは嬉しい限りだな。にしても栗の量えぐいな。どっかの山からかっさらってきたぐらいあるぞ。

夕方のテレビでは、やれ世界情勢が悪いだの、石油の高騰だの、流行り病が増えてきたのといったことが流れていた。最近は暗いニュースが多いんだよな。

「若者で何とか離れが進んでるそうですね。」

テレビでは話は変わり、酒、車、たばこ、旅行、料理、テレビ、映画、ウィンドウショッピング、友人付き合い、ブランド、運動、飲み会、新聞、結婚式などなど多くの『離れ』が特集されていた。それに関してお偉いさんが色々意見を出していた。個人的にはその原因の一端にお金がないってのがあると思うが、それを金持ちのお偉いさんが解説してもって感じだが。そもそも時代は進んでいくのだから『離れ』が生まれるのは当然だと思うし、それに伴ってVRとかサブスクとかが発展していってるんだし当然だとは思うが。それをなんで暗いトーンで話しているのか、正直俺にはよくわからなかった。後は単純に価値観が変わったんだと思うけどな。昔は高級な服着て高い車乗り回すのが理想の彼なんて言われてたかもしれないが、今は同じ趣味を共有できるとか、友達みたいなノリがいいとか好みも変転しているわけだし。

「片方を選べばもう片方は廃れていくってことですかね。」

「諸行無常なり。」


今晩はシチューということで、夕飯の時間が近づいてくると鍋からいい香りが漂ってきた。お母さまとこころがセッティングを進めている間に、俺は領さんに声を掛けるようお願いされた。相変わらずこころは心中を察することに長けている。

「領さん、お夕飯ができましたのでお声がけに来ました。」

ドアをノックしてからそう言うと、やがて向こうから「分かった、ありがとうね。」と声がした。

「......少しだけ時間をもらってもいいかい?」

特に断る理由もないし、俺も少し話をしたかったから丁度良かった。扉を開けると机の上にたくさんの書類があった。今領さんは別の学校で勤務されているとのこと。他の学校の内情までは知らないが、きっとすごい活躍をされているのだろう。

「あれから樫野校長はどうかな?君を守ってくれているかい?」

「そうですね、手厚く守ってくださっております。今日もこころと一緒に水族館に行ったんですけど、そこまでついてくるくらいです。」

これには領さんも頭を抱えていた。まぁ普通に考えて学外で先生と関わりを持つことってないもんな。

「それに関しては私の方からよく伝えておくよ。.....ご飯が冷めてしまう前に行こうか。狐神君から何か聞きたいこととかはあったかな?」

「......いえ、特にはないです。」


そして夕飯も食べ終わり。

「彼方先輩!ここは後輩としてお背中「結構です。」なんで!?」

なんでもなにもないだろ。どうして恋人でもない2人がおんなじお風呂に入ってあまつさえ背中まで流してもらうんだよ。それも両親が家にいる状況で。......去年の文化祭でも感じたが、もしシュパリュを助けたのが俺じゃなくて、もっとヤバい奴だったらどうするつもりだったのだろうか。俺以上にヤバい奴というのもちょっと少数派だとは思うが。

「水着着てますから大丈夫ですよ!?」

「領さん、正直お宅の娘さんちょっと怖いです。」

直ぐにお母さまが来られて無事こころを連れて行ってくれた。というかお母さまもこうなることを予期して監視していたらしいが、そこを抜け出してきたらしい。先輩として慕ってくれることは嬉しいが、もうちょっとアプローチを考えてくれると嬉しいんだけどな。

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