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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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可愛いの最後の日 8

やがて時間が迫り、少しずつ照明が暗くなることで立っていた生徒が座りその口を閉ざしていった。俺も席に戻ると間もなくアナウンスが入った。

「もうすぐ合唱祭が始まりますので、お席にお座りになりお待ちくださいませ。」

それから5分ぐらいが経った頃だろうか、最初の1組が入ってきた。


会場は広く、また席もほとんどが埋められている。こんな場所で緊張するなという方が難しいだろうな。ここからでも緊張した生徒の表情を伺うことができる。そこまでは減点対象にはならないだろう。というかテストとかなら分かるけど、こういったイベントでも順位付けするってどうなんだろうな。賞を取った人は嬉しいだろうけど、じゃあそうじゃない人はどう思うんだろう。頑張った人を褒めることはいいことだけれど......馬鹿な俺にはよく分かんない。

クラスリーダーの戌亥は指揮者として立ち、みんなの整列が終わると指揮棒を高く持つ。恐らく戌亥がみんなに笑いかけたのだろう。こちらを向く壇上の1組の表情が和らいだのが見えた。まさにリーダーといったところだろう。

曲はクラスの色が出るが、1組は元気そのものだった。緊張もいい感じに取れており、歌を楽しめている様子だった。きっと戌亥はこういったみなを楽しませることは得意なのだろう。最初のクラスではあったが、出来は大したものだった。


そして1組が退場する。それと同時に俺ら7組は移動を開始する。できれば全員の合唱を聞きたいところではあるが、そうは言ってられない。確か後日映像が配信されるからそっちで確認すればいいだけでだしな。ステージ横から一度外に出て少し歩く。外にいる他のクラスも1組の合唱を見ており、最初にしてあれだけの出来を見せられ不安がる様子が見えた。そしてそれを宥めている様子が見られた。

しかしそんな中、あまり穏やかじゃない声が響く。

「なんつったてめぇ!?」

声のする方向を見ると男子がもう片方の男子の胸倉を掴んでいる。そしてその間に入る梶山。喧嘩する元気があるなら、それを少しでも合唱に回してほしいところだな。

「ず、随分と耳遠いんだな。高校2年生にもなってお歌の練習に必死だなっ「そんなどうでもいい!!その後だ!!」」

昔はあんなに怒鳴られれば怖気づいて逃げ出していたのに、斑咬も成長したな。

「こ、こここんなに注目されている中言えってのか。ななかなか酷い彼氏だな。わかったよ、本坊も普段はあん「しゃべんなゴミ野郎!!」」

あまりの理不尽につい笑ってしまった。大方斑咬が本坊の悪口を言って、それをたまたま不和が聞いてしまったとかそんな感じだろう。にしても不和が斑咬をぶん殴らず突き飛ばしただけなのはすごいな。これはあれか、高梨の件があったからかな。どんな人間でも成長するもんだな。

しかしそんなことがあればクラスの士気が下がることは必至。ただでさえ合唱祭で緊張や不安などが積もる中、あまりに良くない。

「狐神先輩の指示ですかぁ?」

耳打ちで星川が話しかけてくる。

「なんで自分のクラスがこんなに不利になるようなことをする。......あー、これを言い訳に約束を反故にするなんてこともできるのか。安心しろ、こういったトラブルも含めて勝負ってことは理解してる。これで負けてもちゃんと認める。それよりも早くいけよ。」

怪訝な表情を浮かべたまま、星川は走っていった。

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