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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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不発弾 4

一度仕事を切り上げ、俺とノアは2年7組に向かった。確認したが、今回ノアと樫野校長は既に事件の調査進めていてくれたらしく、俺のやっていたことは全て事前にやっていたらしい。そして教室に着くと、真っ先に俺の机に着いた。

「もう大丈夫だと思うけれど、机の中をよく見てみなさい。」

言われるがまま見たが、机の中は光が遮断されているため、基本的に真っ暗。特に異常は見られなかった気がした。

「......なんか、焦げ臭い?」

「さすが嗅覚は大したものね。」

ということは。

机の中身を全てだし、机の中がよく見えるように机を倒す。机の裏のその奥の方を見るとやはり木の色ではない黒さがあった。

「もしかしてあのライターはこの中で既に使われたってこと?」

「そうね、でもライターはずっとつけておくことはできないから教科書と金属部分に若干刺さったナイフで固定されていたと考えられるわ。さらにもしここで火災が起きて、火災元が狐神の机の中で、さらに鋭利なナイフまであれば確定だからね。」

成程、既に事は起きていたということか。そうなると犯人は火災を狙っていたことになる。ご丁寧に火薬まで用意して。成程、これがもし火事に繋がっていたら俺はとんでもない冤罪を着せられるわけだ。

「確かにそんなことをするのであれば、確実に周りに人間がいないことを確認したいな。できれば2年生がいない、先生たちも施錠を確認した密室なんてあれば最適だな。」

でもノアはこれを失敗と呼んだ。確かに実際に火災は起きてないわけだから。しかし焦げた跡はある。学校の机は何気と防火性も高いからな。そうなると火災の二次的被害であるもう一つが気になるところだな。

「一酸化炭素は大丈夫だったのか?この教室は施錠されて状態、そこでものなんか燃やしたら。」

「あなたも第一発見者の先生の生存は確認してるでしょ?とりあえずは大丈夫よ。一酸化炭素は発生した際、天井に行くけれど、時間経過と共に下に降りてくる。少なくても一酸化炭素で被害が出た人はいないわ。けれど樫野校長が最初調べた時、火をつけたマッチが膝辺りで消えたと言っていたわ。」

それって最初に見つけた先生相当危なかったんじゃないのか?俺の机は多分樫野校長の膝よりももう少し上らへん。もししゃがみこんでいたら、助けなんて呼ぶ前に一酸化炭素中毒で冗談じゃなく逝くぞ。

「そしてそれも失敗。だから第3の案であなたに危険物所持なんて軽い罪を着せようとした。」

確か旅行に行っているときのこっちの天気は雨だったと思う。湿度が高いことがさらに火災に繋がらなかった要素かな。しかし俺の更なる犠牲というのであればあの4つの冤罪に全く引けを取らないものになっていた。こころの忠告を無視したわけではないが、結果運がよかった。

「あとわからないのは犯人と動機、後はこの教室への侵入方法だな。」

第3の策まで講じているほどだ。同じクラスメイトが他のクラスメイトに見つかるかもしれないなんて多大なリスクを冒してまで俺の机で準備をするとは考えにくい。やはり1、2年生の誰かが誰もいない教室に入って確実に準備したほうが可能性は高そうか。

「侵入方法......」

改めて教室を内部から見渡してみる。窓は閉まってるし扉は勿論鍵が掛かっていた。天蓋みたいな窓も固く閉ざされており鍵が掛かっているのだろう。秘密の抜け道なんてものは勿論ないし、窓が割れた形跡もドアが壊された感じでもない。どうやってこの教室に入って、また出て行ったのか。

なんとなく窓に広がる海を眺めた。

「一応見てみるか」

そう思うと急いで椅子を持ってきて扉の前に置く。そしてその上に乗り天蓋の窓を見てみる。そこには海風に乗ってきた塩の影響で酷く鍵部分が錆びついている。しかしその鍵自体は開いており、力いっぱい動かすとゆっくりとだが開いていった。つまりここの鍵自体は開いていたということになる。しかし俺が動かす前と後では、そこに落ちていた錆が明らかに開けた方に寄っていた。これはこの天蓋を使っていない証拠としては十分か。

「私もそう思ったのよ。でもそこに少し違和感もあるのよ。」

なんで俺の思考を読めるのかはおいておいて、ノアのいう違和感というものを探してみたが、正直よく分からなかった。錆はもともと均等に落ちてた。こんな風に......あれ?

「なんか、湿ってる?」

錆は僅かだが水分のようなものを纏っている気がした。結露かとも思ったが、教室や廊下の窓なら分かるが、天蓋に結露はできにくくないか?それにまだ結露が出るほど寒くも、湿度が高いわけでもない。じゃあなんで?

「水......よりかは、氷とかを設置していたのかな。」

「修学旅行前、最後にこの教室から出る際にそこに大きい氷をストッパーのようにして置いた。そして学校の先生はその天蓋が閉まっていることでなく、開かないことを確認した。元々錆びていて全然開く気配がないし、身長がそれなりにないと背伸びして何とか届く程度、それに空いているなんて思わないし、そこに氷のストッパーまであったらそれは閉まってると思うわよね。」

それで氷が解けた2日目とかに侵入。道具をセットして撤収というわけか。錆が片方に集まっていないのは氷が解けた際に出てきた水に浮いて、それが蒸発したからだろう。


「それで残すは犯人とその動機、だが......」

もしあの脅迫状の延長線上で今回のこの件が発生したのであれば、俺は修学旅行中にノアに犯人を知っている、もしくは俺が犯人なのではないかと嫌疑をかけられた。今では俺が犯人でないことは証明できたとは思うが、俺が犯人を知っているということは否定できていない。それも踏まえて少し気まずい雰囲気になってしまっている。

「これ以上は大丈夫だよ。ノアも仕事あるでしょ?もしまた何か困ったことがあったら相談させてもらってもいい?」

「え、えぇ.....じゃあ頑張ってね。」

先にノアを見送ると少し教室で時間をつぶす。あの気まずさの中一緒に帰りたくはない。鶴の時には結構直ぐに気まずさがなくなったんだが、やっぱり女子と上手な関係を続けることはなかなか難しいな。

「さて、それで犯人、ね。」

どうしよっかな。


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