天明大火 25
「......あ、間に合ったのね。......大丈夫?顔真っ青だけれど。」
「深月......そうか、俺はみんなのところに帰れたんだな。良かった......」
しばらくみんなと一緒にゆっくりと移動していると体調も次第に回復してきた。とはいえもう時間もだいぶ過ぎ、残す時間は駅近くにあるお土産コーナーを回るくらいだった。そういえばこころにお土産を買うとは言ったが、もしアレルギーなどあれば困る。それを聞こうとも思ったが、そういえば携帯が壊れていたことを思い出す。別に俺は携帯はそんなに大切でないから構わないのだが、連絡手段がないのは結構キツイな。もしこの間に学校で何かなければいいのだが。とはいえ考えていてもしょうがないのでそれは帰ってから対応するとするか。
「深月、もしよかったら後輩に買っていくお土産を一緒に考えてくれないか?」
「別にそれは構わないけれど、役に立たないと思うわ。」
「京都らしくて、尚且つ深月が美味しいと感じたものがあれば教えてほしい。参考程度で全然いいから。」
「まぁ、それならいいけれど。」
その後色々とお菓子を紹介してもらった。単純においしいもの、日持ちするもの、少し変わったもの、期間限定のもの、京都らしさがあるもの。こころなら正直何をあげても喜んでくれそうな気はするが、だからっててきとうに考えていいわけではない。
少しきざなことを考えた。正直「ないな」なんて思いつつも、でも普通にお菓子を買うだけでは納得がいまいちできなかった。最悪失敗したらそれを今後の戒めとすればいいか。ある意味これも高校生らしいといばらしいのか。
やがて時間になり、帰りの新幹線に乗る。行きと違い今日はみんなで。みんなわいわいがやがやと新幹線に乗り、俺らの班も指定された席に着く。女子グループは携帯で撮った写真見せあいながら広げたお菓子を頬張る。俺ら男子は特に誰が口を開くわけでもなく、静寂に包まれていた。
「結局2人のバトルはどうなったんだ?」
結局俺が口火を切った。
「バトルってほどでもないけどね。とりあえず答えは出なかったから学校で延長戦なのかな。最初から短期決戦で終わるなんて考えてなかったから全然いいんだけどね。」
なんだかんだこいつも少しずつ成長してるんだな。前みたいにずっと何かびくついてるような感じじゃなくて、今のほうがストレス溜まらないからいいな。
新幹線の放送が聞こえるとやがてゆっくりと、でも最高速に達するまで時間は要さずに学校に向かって走り出した。時間にして2時間半くらい。俺も女子と混ざって一緒に楽しくお話、なんて悍ましいことは想像すらしたくないので俺は眠るとしよう。2時間と時間は少し短いが仮眠には十分過ぎるだろう。
「ねぇ、今ちょっといい?」
「うん?......どうした、白花。」
「あの、ちょっと来てくれないかな。」
正直結構眠たい気持ちはあったが、向こうも女子会抜けてまでわざわざお呼び立てするくらいなんだ。ここで断ることは流石に憚られるか。
場所を変え新幹線の廊下に出る。たまにお手洗いなどの人の行き来はあるが、基本的にみんなと話したい人が多いため、用事が済めばすぐに帰る。だからさっきの場所よりかは人は全然いない。
「それで話とは?少なくても俺の怪我のことは気にしなくていい。あれは100%マネージャーのせいだから。それともそのマネージャーのことについてか?」
「ううん、マネージャーは、あの後一通だけ連絡あって『有給残数としてありました10日間を充てさせていただきます』ってとりあえず今日から10日は休み。」
有給申請ってそんな直近でも使えるものなのか?よく分かんないが、少なくても有給は労働者の権利だから取れなきゃおかしいが。......ん?
「というか一通ってメールとかで連絡あったのか?でも携帯落としたんじゃないのか?」
「あ、先生にお願いしてね、朝方探しに行ったんだ。勿論許可はなかなか出なかったけど、仕事とか漏洩したら不味いもの色々入っているって言ったら一緒に同行すること条件で探しに行かせてもらえたよ。」
白花のポケットから見覚えのある携帯が出てきた。だいぶ汚れてはいるが確かにそれは白花の携帯だった。
「成程な、じゃあ用件ていうのは?」
そういうと白花は携帯から恐らくそのメッセージを探す。にしてもすごい友達の登録数だな。なんか一瞬『544』くらい近い数字が見えた気がするが、流石にそれは見間違いだろ。そしてその人からもらったメッセージを見せてくれた。
『大変です!!狐神先輩に電話繋がらないので小石先輩に失礼します。今朝学校の先生方の様子が変だったので聞いたら、狐神先輩の机の中から鋭利なアウトドアナイフとライター、火薬が見つかったらしいんです!!』
送信してきた名前は榎本だった。
「キャンプかな?確かに時期としてはいいかもな。」
「言ってる場合じゃないよ......」




