表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
426/594

天明大火 13

とりあえず来たバスに乗る。見ると今は榊原のターンらしく五十嵐に色々話かけている。お互い邪魔しないという約束だったため、宇野は何も言ってはいないが、でもかといって俺らと混ざって話などをする気もないらしい。ともなればやはり五十嵐、榊原、宇野は放っておくのが一番かな。白花と話せるかはわからないから一応辞めておこう。しかしここは全国トップクラスの観光地、話題はそこらへんに転がっている。隣に座る京と和気藹々に話すなどおちゃのこさいさいよ。

「思ったよりも和服の人とかって少ないんだな。」

「うん......」

「......おう。」

だめだ、全然俺の話に興味持ってない。だがこれは俺の話がつまらないのが悪い。しかし昨日水仙と京から呼ばれたが、やはり2人の様子はどこか変だったような気がする。2人の共通点というといくつか思いつくものもあるけど、一番はやっぱりモテること、異性から告白でもされたのかな。それはこの旅行中なら全然あり得ることだしな。

「京は誰かに告白でもされたのか?」

「......知らないの?美桜ちゃん......今朝告白されて......。行動班で、デート、誘われて......」

あー、朝は確かに白花以外にも人は集まっていたような気はしたな。正直あんまり覚えていないが、あれは水仙が告白されていたのか。どこもかしこも朝から盛ってんな。でも別に水仙が告白されることは知ってたしな。

「まぁ、告白されても全然おかしくないんじゃないか?性格について目を逸らせば、基本スペックは「断ったんだよ。」......うん?そうなのか。なんか怒ってる?「好きな人が......いるからって」」

え、あいつ好きな人できたの?確かに前に夜の学校行ったときに、好きな人がいたりいなかったりとは言っていたが。その人なのだろうか。でもそれが何で京が怒っている理由になるんだ?別に友達に好きな人ができて怒る理由なんて......もしかして、京もその人のことが好きなのか?親友とも言える水仙と京のことだ。相談くらいは水仙から相談されているだろう。それで好きな人が自分の好きな人と同じだった。成程、そういうことか。完全に理解した。

「.......確かに難しい問題だよな。自分の好きな人が親友である水仙と被ってしまうなんて。」

「え......気づいたの!?」

朝のバスでは少し大きな声ということもあり、若干周りから視線を感じる。それは京も感じたようで、効果音がつきそうな勢いで縮んでいく。どうやら俺の考えは当たっていたらしい。

「でもそっか、水仙と京が好きになる人か。さぞすごい人なんだろうな。どんなイケメンで金持ちで頭良くて身長高くていい男なんだろうな。想像もできない。」

「あ......うん。やっぱり......何も、わかってない。」

あんまり甘く見るなよ、京。なんだかんだ2人とは長い付き合いだからな。そんなのじゃないことくらいわかってる。

「嘘だよ。2人がそんな見るからに女子を釣れそうな疑似餌ぶら下げてる人を好きになるとは思ってない。もっと普通というか、例えば、隣にいるのが嬉しいとか楽しいとかよりも、心地よいみたいな感じだろ。飾ることなく、素で何もかも話せるような。」

「ぁぁぁ......ぁぅ......」

前になんかの学術で見たことがある。『好きな人と付き合い始めはいつもドキドキだったが、付き合っていくとだんだんそれがなくなってきた。でも好きっちゃ好き。これは何?』みたいな。正直俺にはよく分からないものだったが、その答えにはこう書いてあった。『付き合い始めはドーパミンやノルエピネフリンというホルモン、所謂ドキドキするホルモンがたくさん出て中毒状態に近い状態になるが、それは3年ほどで安心感や愛着に近いバソプレシンやオキシトシンにに変わっていく。つまり好きというのは享楽、悦楽といった刺激的なものから安寧、太平のように穏やかなものへ変化する』と書いてあった。好きという定義や考え方は人それぞれだと思う。でも個人的には、落ち着いて『この人のこと、好きだな』なんて感じられると、それはよく世間で言っている、こっぱずかしい『本物の愛』というものではないかと考えている。

「でも、そうだな、もし水仙や京と付き合うことができたら、きっと幸せだろうな。一緒にいて楽しいってのはあるが……多分離れると寂しいと感じる方が大きい。……でも、今でも普通にぶつかり合うくらいだ。きっと何度も意見とか考えがすれ違ったり、それで何度も別れ話をすると思う。でも、その度謝るために色々考えて、不器用な言葉並べて、それでまた『好き』になっていくのかな。2人はモテるから、きっと些細なことで嫉妬すると思う。『そんなことで』って自分でも思うくらい。……本当に好きだから。……そうだな、京とこうして色んなところ行って、ふと気になった喫茶店とかでお茶するのもいいかもな。……なんて、妄言を……吐いてみたり……」

やばい、想像以上にくそ恥ずいことをこの口が垂れ流しやがった。好きでもない異性から『これから君と付き合ったらの話をするね?いくよ?』とかどんな拷問だよ。表現の自由でも迷惑防止条例は擁護できないぞ。

「やっぱり......なんにも……わかってない。でも……いいよ。許してあげる。」

「あの、無かったことに……」

「やだ…!」

京のにっこにこの笑顔に、困りつつも、でもまぁ笑ってくれて良かった。


あんな言葉で。

扱いやすくて本当に助かる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ