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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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天明大火 4

「もう少し頭を働かせろ。ようは君が『白花さんに告白する』と吹聴して周り、白花さんの部屋に行く。早々に告白して振られて、白花さんはその間に風呂に入る。そして風呂から出たら君も部屋を出る。邪魔者は入らない、白花さんはゆっくり風呂に入れる、お腹の傷も心配する必要もない。」

「さては馬鹿ですね。」

皮の少ない首裏を(つね)られる。

「痛、なんで好きでもない、痛、到底釣り合いもしない女子に、痛い、振られる前提で告白して、お風呂上がるのを悠長に待って、その後帰らなきゃいけないんですか。痛い!!」

俺が振り返るまでずっと抓っていた。多分首裏には爪の痕がしっかり残ってしまっていることだろう。

「白花さんがお風呂に入るためだ。」

「俺にも感情ってあるんですよ?」

「ゴタゴタとうるさいな。2000円くらいでいいか?」

「見下しやがって!」

しかもそれって2泊3日だからサラッと2回振られろってことだろ。どんなメンタルしてたらそんなこと出来んだよ。……けど、俺はあいつに迫られたらゴタゴタ言いつつも言いなりになっちゃうのかな。

「......でも、言質取りましたからね。」

「?」

あんまり昼食は満足に食べれなかったが、時間は決まっている。少し行儀は悪いが残りをお腹に詰め込むと俺もお礼を言ってその場を後にした。


「さっき何話してたのよ。」

あの大衆の相手をしつつも、俺とマネージャーの様子を見れるとは大したものだな。後頭部にも目ん玉にくっついてんのか?デメニギスかよ。

「お前の風呂についてだよ。」

「変態。」

どうせこっちが何言おうかなんて知っているくせに。でも実際どうするつもりなのだろうか。現実問題、男子の俺でも1日風呂入らないとだいぶ髪が固くなる。それが2日、それも女子、加えて常に完璧近いものを求められる白花であればそれは許されるはずがない。

「しらは「……私は白花さんじゃないけれど。」」

そこにいたはずの白花は既に嬬恋と京と話しており、俺の隣には深月がいた。今日行きの電車で一緒にいれなかったことも謝りたかったので丁度良かった。

「別に気にしてないわ。みんなたくさん話しかけてくれたもの。」

それは何より。だがそれにしては若干浮かない顔をしているような気もするが。しかもなんか怒ってるような気もするし。さっきまで笑顔でみんなと話していたのに。

「お菓子食うか?」

「......いらない。話しかけないで。」

それだけ言うとそっぽ向いて向こうの歓談に混ざっていった。普通に会話に混じることができて俺は嬉しい限りだよ。これが父性というやつなのだろうか。相手は一応年上に当たるのだが。


さて、もう一つの問題である宇野と五十嵐だが、今のところ二人が会話をしているところを見ていない。今は宇野が榊原と何かを話しているのは見えるが、そこに俺が入るとさすがに彼女がかわいそうか。今白花も手が離せないだろうし。

「あれから宇野とどんな感じなんだ。」

「.......わからないわ。さっき『色々とごめん』なんて謝られたけれど、何についての謝罪なのかもわからないし。そもそも私は彼を騙した立場なのだから何も謝られる必要はないと思うのだけれど。」

なるほどな。確かに謝る姿勢はいいことだと思うけれど『色々とごめん』なんて言い方は相手を逆に不機嫌にさせてしまっても自然なものだとも思う。この2人に詳しく何があったのかまでは俺は全然知らないが、前に言い合いをしていたところを見ると、多分五十嵐に結構きつい言葉を浴びせていたのだろう。五十嵐はあんまりそういうのがこたえる感じではないが、見た目だけで判断はだめだからな。

「ちなみに五十嵐は宇野に謝ってはいるのか?」

「それは勿論。あなたの冤罪が解決した直後くらいからね。あそこまで罵声を浴びせられたのは初めてかしら。まぁでもあの時は安川さんのことで頭がいっぱいだたからあんまり覚えていないのだけれど。」

うーん、この。別に俺が二人の親友とかなら何とかしてあげなきゃとは思うのだろうけど、別にそこまで深い関係でもないしな。助けを求められているというわけでもないし。結論として、一応解決はしているけれど、感情としてはまだ思うところがあるといったところだろうか。なんだか現文の心情問題を解いている気分だな。この先どうすればよいのか答えよ、みたいな。

「とりあえず前みたいに『好き好き大しゅき、うちの彼ピッピまじ(よすぎ)て最強すぐる!』みたいな状態には戻れないと。」

......。

......。

「未だに安川先輩には未練はあんのか?」

「......無くせば、楽なのにね。馬鹿にしてもらって結構よ。柄にもなく女々しいのは自覚あるから。」

男の俺からしてみれば一体あんな奴のどこがいいのか全く分からないけどな。まぁ聞いたところによると、世の女性の一部は優しい男よりも危険な男を好む習性があるとも聞いた。男性が女性には安らぎを、女性が男性には強さを本能的に求めるものか。

俺だって思い出の少女に会いたい気持ちは、消えないでずっとここにある。

「......そしたら俺も馬鹿だな。」

「......あなたも安川先輩が好きなの?」

「馬鹿じゃねぇの?」

馬鹿にしていいと言ったのにひっぱたかれた。


金閣って綺麗だとは思うのだけれど、個人的には銀閣みたいな厳かというか、荘厳みたいな感じの方が好きなんだよね。なんというか、金閣はキラキラしてて、何となく日本に合ってない気がする。まぁ権力を示すために建てたというのであれば、お金持ち感はとてもあるけれども。

お寺に行って何をするかと言われれば、基本的に写真を撮る人が多かった。他にもおみくじやお守りなどを買ってる人もいたが、俺はいまいちそこら辺のものには興味が惹かれない。お金ももったいないし。

そのため池の周りをとぼとぼと歩いていた。別にお寺やその周りの景色をただ眺めることも悪くないし、少し賑やかな空気からも離れることが出来た。もうしばらくは移動もないからゆっくり眺めているとしよう。


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