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青春敗者は戦うことを選ぶ  作者: わたぬき たぬき
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天明大火 3

竹林の道は本当に竹が景色いっぱいに広がっており、それこそファンタジーの世界に迷い込んだと錯覚するくらいに凄かった。日本の『和』というものを全身で感じることができるいい場所だった。

そのあとも天龍寺や嵯峨野トロッコ列車、竜安寺などを巡った。別に俺自身神社やお寺を参拝することが趣味とかはないが、こういった場所を巡るとそういった趣味をもつのもいいなと思う。まぁどうしても有名どころなどを回るとなるとお金がかかってしまうため、まずは身近なところだろうが。そういえば伽藍堂の家はそういう系統の家だったよな。今度お願いして案内してもらおうか。


昼食時間ということもあり、大きな食堂を借りてみんなご飯となった。とはいえ流石に600人も収容できないため、4組ごとのご飯となった。

「さすがは京の街並み、古の空気を感じましたわ。」

「本当だよね。建物の古い感じとか、自然とこう、一体感?みたいなの凄かったよね!」

「やっぱり愛菜ちゃんはあれかな?少女漫画の『あまなつ』連想した?」

「はい!!私あの作品の大ファンですの!!にしてもよくわかりましたわね?」

「ふふふ......実はまだ世間には公表されてないんだけどね、その実写化にヒロインとして私が出させてもらうことになったんだよ!」

「え!すごいね白花さん!!」

「本当ですの!?正直実写化はあんまり好きではありませんが、ヒロインの役に白花さんはぴったりですわ!!いつ!?いつ公開するんですの!?」

俺がいない行きの電車とかで仲良くなったのだろうか、榊原と嬬恋と白花が会話に花を咲かせている。というか話題が話題なだけに他の班、クラスの人たちが雪崩のようにこちらに向かってくる。

「いいんですか、まだ公表前の情報をリークして。」

「今週中には発表される情報、関係者には許可を取っているし構わない。」

その雪崩から逃れるように飲み物だけ持ってマネージャーの元まで避難する。俺の席はたちまち人波に消えた。白花に群がる様子は雪崩とかよりも蝗害こうがいの方が合ってるか。

「念のため確認しておきたいんですけど、白花の警備についているあの男の人、ちゃんと信頼できるんですよね?」

詳しい書類などはあるらしいが、それを一介の高校生が閲覧する権利は流石にない。しかし現役警察官ということは教えてくれた。しかし現役警察官が修学旅行の守り人として来るか?とも思ったが、どうやら樫野校長と知り合いらしい。ほんとあの人何者なんだよ。

「あと一応言っておきますが、白花と一緒に行動できるのは行動班として一緒に行動している時だけです。なのでそこはご留意頂きますようお願い申し上げます。部屋の中の事情までは知ったこと......関与できないので。」

「......まぁホテルまで入れば外部の人間はあまり接触できないから、そこは譲渡しよう。......だが忘れていないよな、彼女が皆さんとお風呂を共に入れないことを。」

お腹の傷だろ。確か林間学校の時は......あれ?あの時は?

「林間学校の時は完全にこの学校の生徒しかいなかったから、夜中にこっそり抜け出して入ってもらった。またあそこはこの学校の土地だったのである程度はどうにでもできた。」

「はぁ。じゃあ今回も同じ手段で......は難しいですね。少ないですが一般客もいますもんね。あ、でも一般の生徒は使えないですけど、各部屋にシャワーついてるじゃないですか。それを使えば。」

使えないよなー、各部屋一人ずつとかならなんら問題ないだろうが、部屋は2人で一部屋。それこそ事情を知っている榎本とかがいればベストではあったが、残念ながらこの学年で白羽の腹の傷を知っている人間はいない。となると何らかの理由をつけて例えば先生の部屋のシャワーを借りるとかか。一番自然な流れは体調を崩したとかで保健の真弓先生のところへ行くことだが、他の生徒も同様に体調を崩している可能性もあるし、できれば体調を崩すなんてことはマイナスのイメージが強まるからあまりしたくないな。「ちょっと仕事のことで電話来ちゃって......」とか言ってホテルから出て、別の入浴場......だめだ、結局他人がいるし、そもそも夜に外にホテルから出すのは危険だ。相方を外に出してその間に入るとか?いやでもそれもある程度の強制力がないとやはり不安なところだな。「疲れたからヤダ」とか言われかねない。

「例えばなんですけど、『私実は週に1回しかお風呂入ってないからあと4日はいけるよ!』とか......嘘です。ごめんなさい。」

「真面目に考えろ。」

もし白花の身に何かあったようにだろうか、重い金属の感触が首筋に伝わった。やはりというべきか、急に気配が強まったような気がする。

要は白花をホテルの部屋で一人にすればいいんだよな。でもあいつの人気から言って、一人になるどころか、部屋にはすごい数の人間が押し寄せることは容易に想像がつく。きっとガールズトークなどに花を咲かせるだろう。もしくは芸能界の人間とかいろいろ。どうやったら白花を一人の状況にできるのか。

そんな折、どこかの男子の会話が耳に入った。

「お前今日美桜さんに告白すんのか?」

「あ、ああ。修学旅行なんてまたとないチャンスだからな。あの淀川先輩って別れてだいぶ経つしな。」

「おっけ、人払いは任せておけ。」

水仙告白されんのか。まぁ俺なんか普段から接してるからあんまり考えていなかったけど、人気はほんとにあるもんな。水仙があんまりオッケーするとは思わないけど、なんとなく気にはなるな。

「例えば誰かが部屋で白花に告白するとします。」

「それで2人きりになれるな。」

「『返事を考えさせてほしい』なんて言い、男を外にやれば合理的に一人になれます。」

「だがそれでは不安要素が大きい。『待てない』など言われる可能性もあるし、白花さん1人であれば『返事どうするの?』なんて部屋に邪魔者が入りかねない。」

成程、ではこの作戦も無理ということか。

「だがそれを全て逆転できる手はある。」

「天才ですか?」

「この作戦のいい所は『告白する』と周知にさえしてしまえば2人になれることだ。つまり部屋に2人きりでいれば余計な邪魔は入れない。その間にお風呂に入ってしまえばいい。」

......?よくわかんない。

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